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ホワイトフォレストの歴史

 兵士のみなさんの案内を受けて進む道はおそらくこの国のメインストリートだろう。

 国を囲む石と同じ素材なのか、黒い石でできた街並みは統一感があり綺麗な街と言える。降り積もった雪がより町の黒い石を強調している様で素晴らしい景色と言える。

 子供が作ったのか、3段重ねの雪だるまなどがあるのも可愛らしいと言える。


 だが本国と言うわりには活気がない。

 流石に年中雪の国だからと言って毎日クリスマスのような賑やかさを出せとは言わないが、それでもこの国は暗く感じる。

 雲っているからとか町並みが黒いからとかそう言う問題ではない。人々の活気のなさが暗いと感じさせるのだ。

 すれ違う人達は俺達の事を珍しそうに見ているが、それだけでその瞳に生気を感じない。

 大人たちは淡々と暮らしている様に見え、元気があるのは子供ぐらいだろう。

 雪の中でも構わず追いかけっこをしていたり、協力して雪だるまを作っている。


 俺は兵士達に聞いてみる。


「やはり生活は厳しいか?」

「それは……はい。この間まで寒波が続いていたので町に食糧を行き渡らせるのも難しく、食糧難でもあるのです。それにこの辺の魔物は大きくて強い個体が多く、海岸からアザラシが届けられるのを待っている状態なのですが……あの吹雪の壁を突破するのは難しいのです」

「……なるほど。確かに」

「ですのでタツキ様のおかげでブリザードバイソンの肉が手に入るのはとても幸運なのです。肉の味も上質ですが、何と言っても量が多い。街の精肉店に卸す事も可能でしょう」


 思っていた以上に厳しい生活の様だ。

 この国の冬が自殺行為なのは知っていたが、それによって食糧難が起こるとは思ってもみなかった。

 天候による被害がここまで恐ろしい物とは信じられない。


 テレビなどで知る北陸の人達は狩猟をメインとして生きている事が多いと聞く。

 その理由は草木が生えない極寒の世界だから野菜などを育てる事が非常に厳しいからだ。だからさっき言ったアザラシなどを狩って食う事で生きる。

 しかしここは内陸だ。大陸中央に住んでいる分海の動物を捕まえる事はとても難しい。だからと言って俺達が仕留めた牛や熊を仕留めるだけの力があるとも思えない。

 本当にギリギリの生き方をしているっと言うのを俺は感じた。


「みんな。先に言っておくが王様に会うのは俺だけでいい。お前達は宿の確保を頼む」

「分かったよお兄さん。私が仕切っていいよね?」

「頼む。この中で最も交渉が良さそうなのは多分ジャックだろうし」


 っと言っても宿があるとは思えないけどな。

 弱っちい感じの国に宿なんて1つあるかないかと言う感じの印象しか受けない。

 それに上手く宿を見付けたとしても居心地が良いとは思えない。必要最低限っという感じではないだろうか。

 失礼だと思うがそんな風にしか感じられない。


 そのまま進むと城に着いた。

 台風の目と言うだけ風が穏やかだからか、意外と高さはある。

 ただ気になるのは何と言うか城の中心部分が四角く感じる。マップ機能ではあの城の中心部分にスノーの本体があるそうだが……まさか中庭に置いてあるわけじゃないよな?


「王にご連絡は届ております。どうぞみな様このまま中に」

「ここまでありがとうございました」


 兵士さん達から服装が豪華なくるみ割り人形のような服を着た兵士さん達に受け継がれた。

 恐らくこの城を守る近衛兵とでも言った所か。生真面目に一言も話さずにきびきび動く姿はどこか人形のような印象を受ける。


 そんな近衛兵に最初に連れていかれたのは客室。ここで俺とアセナ達は別れた。

 アセナ達はここで全員待機。俺だけが国王様に会う。

 そして連れていかれたのは何故か中庭。

 そこで俺はとても驚いた。


 あったのは氷でできた雄獅子の像。吠える姿は圧倒され、王者の威厳に屈しそうになる。

 強大な威厳に相応しくないのは四肢に巻き付いたアセナの本体が封印されていた鎖とよく似たものだ。

 そして下にはおそらくこの国の王が像を見上げながら待っていた。


「君がブリザードバイソンを売りたいと言う冒険者か」

「はい。私は冒険者のタツキ。この国を見てみたいと言う好奇心で参りました」

「そうか。早速で悪いがブリザードバイソンを見せてもらってもいいか」


 この国王の印象は冷たい、だな。

 自身の感情を表に出さずに胸の内にひた隠すタイプのように感じる。今俺との話も淡々としていて表情が読み取れない。

 俺は牛を3頭取り出した。

 それにも国王は一切驚かず、牛を真剣に見ていった。


「この3頭すべてを買い取らせていただく。だがここには残念ながら大金貨はない。宝石との物々交換でもよろしいか」

「申し訳ありませんが2頭まででもよろしいでしょうか。1頭は自分達が食べる様に取っておきたいので」

「ではこうしないだろうか。君達を賓客として正式に迎え入れよう。客室は自由に使って構わない。そして君達に出す肉を買い取らせてもらいたい。これでどうかな?」

「……本当にそれでよろしいので?俺達の口に入る物を買い取るなどと」

「構わない。その代わり1部は町の者に卸させてもらう。最も上質な部位は君達の口に入るよう手配はさせてもらう」

「分かりました。ではそれでお願いします」

「交渉成立だ。おい、彼にこのブリザードバイソンの値の分だけ宝石を持ってこい」


 となりに居た老執事が何も言わずに頭を下げたのちにどこかに歩いて行く。

 近くに控えていた解体する人達は即座に行動を開始し、素早く丁寧に肉と皮、内臓と切り分けていく。

 その様子を見届けた後国王は俺に向かって言う。


「この像はただの像ではない。正真正銘真祖が封印された姿だ」

「……なぜそのような事を言うのです?」

「君はこの国を見てみたくて来たと聞いている。では軽くこの国の成り立ちを語ろうと思ってね」


 なぜそのような事を語るのかよく分からないが、俺は真剣に聞く。


「この国は元々宝石が取れる事で有名だった。それに穏やかな土地、穏やかな気候と言う事で誰もがこの土地を狙って進軍し続けた。しかし我らの先祖はそんな侵略者たちに負けず、戦い勝利を収めてきた。しかしそんな先祖達にも唯一勝てない存在が居た。それがこの獅子の真祖だ」


 そう言って国王はスノーの本体の前足に触れる。


「獅子の真祖だけは人間にはどうする事も出来ない。魔物であろうとも傷1つ付ける事すら出来ないほどの絶対なる強者であった。当然我々の先祖も手も足も出なかったが、1つだけ良い事があった。それは獅子の真祖がここを縄張りとした事でこの地に来る人間を追い払い始めた事だ。ここは我が縄張り、人も魔物も犯すのであれば殺すと言わんばかりの咆哮を放ったと聞く。つまりこの真祖の手によってこの地を狙う人間同士の争いに終止符が打たれたと言う事だ。皮肉なものだ。戦いを始めたのは人間であるのに、止めたのは真祖とは」


 そんな事があったのか?スノー。

 そう言えば誰も真祖として活動していた時の話を聞いた事がない。

 マコトとかに人間の剪定を任されていたとか、そういう役割に関しては聞いていたが、実際にどのような生活をしていたのかまでは聞いていない。

 そして国王は話しを続けながら、ため息をついた。


「しかしとある時代に真祖を封じる力を持った当代の勇者とその仲間達が現れた。その話は真祖を封じると言う内容であり、我々の先祖はその話に食い付いた。おそらく真祖がすぐそばにいると言う現実に耐えきれなかったのだろう。手も足も出ない、いつ気紛れに滅ぼしに来るか分からない真祖の恐怖よりも、人間同士で争っている方が良いと感じたのだと思う。これほどの巨大な獅子が暴れるなど悪夢そのものと言ってもいいのかも知れない。だがそれは間違いだった」


 スノーの顔を見ながら国王は言う。


「確かに封印には成功した。しかしその代償はこの穏やかな地を失う事で支払われた。勇者達は真祖を封じた後逃げ去り、この凍り付いた土地だけが残った。結果自分達の首を絞め、草木1本たりとも生えない死の土地に変わってしまったのだ。だが我々はその豊かな地を知らない。生まれ付いた時よりこの氷の地こそが我らの揺り籠だった。大きな変化は求めん。ただ平穏に生きる事を望んでいる」


 ……平穏か。この状況の事を言っているのであればそれは違うのではないだろうか?

 こんな気力すらない国のどこが平穏だと言うのだろうか。

 このままではこの国は……


「つまらない話だったかな?」

「いえ、とても貴重なお話です。真祖に関する話はどれも物語りとしてしか聞いた事がありませんのでとても貴重だと感じました」

「所詮我々の先祖が道を間違えただけの話だ。宝石を受け取って客室に戻るが良い」


 執事が綺麗な箱を持ってきて、その中にはルビーやサファイヤ、ダイヤなどの無知な俺にもよく知っている宝石が入った箱を見せた。

 その蓋を閉じると恭しく俺に渡す。

 俺は両手で恐る恐る受け取ると執事は国王の隣に戻った。


「ある程度この国を観光した後去るがいい。土産などは港町の方が充実しているほどだ」


 自虐的に言う王様はそのままどこかに向かって言ってしまった。

 俺はスノーの本体を見上げながら、どうやって開放するか考えるのだった。

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