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到着

 翌日、かまくらで目が覚めるとそこは動物ハーレム状態だった。

 つまりアセナ達が俺の要望に応えてくれたと言う事なのだが、蛇はギリギリ大丈夫だとしても、鮫が一緒に寝ていると言うのはちょっとした寝起きドッキリだ。

 と言うか本当に今更だけど呼吸できてる?常に泳いでないといけない生物の代表格でしょ。

 これも魔物だからの一言で済ませていい物なのだろうか。


「お兄さんおはよ。そんな状態だけどちゃんと寝れた?」

「ジャック……おはよ。俺は図太い神経してるから普通に寝た。それとアセナ達が思っていた以上に温かかったら寒くもない。そっちはどうよ?」

「私は……何度か起きた。吹雪でうるさかったって言うのもあるけど、動物湯たんぽ私も欲しかったかも」

「ならしれっと連れていけばよかったのに。アセナ以外で」

「みんなお兄さんと一緒に寝て幸せそうだったから邪魔したくないよ。それよりご飯にしよ」

「それもそうだな。みんな、そろそろ起きろ~」


 優しく揺すって起こすと全員素直に起きた。

 寝ぼけているのか甘えてくるのが多かったように感じたが、きっと俺が意識し過ぎているだけだろう。

 一応一緒に寝ちゃったわけだし。


 外を見てみると今日も変わらず吹雪で視界が白い。こんな状況がずっととなると、早く先に進んだ方がいいのかも知れない。

 昨日仕留めた熊を捌いて焼いて食いながらみんなに聞く。


「スノー。今日中にお前の本体がある場所までたどり着く事は可能か?」

『出来るよ。何も問題がなければだけど』

「よし。それじゃ今日中にホワイトフォレストに到着するよう頑張ってみるか。みんなもそれでいいか?」


 そう聞くと全員熊の肉を食いながら頷き返した。

 にしてもこの肉臭みが少ないな。食べやすいし元々この肉に塩気があるからか、ただ焼いて食うだけでも十分に美味い。

 凍っててもシャーベット状ならシャリシャリしてて美味いしな。


 こうして朝飯を十分に食った後に俺達は再び吹雪の中を進みだした。

 ついでに言うとかまくらはそのまま残している。帰りに使うかも知れないし、残っているからと言って誰かの迷惑になる事もないだろう。


 吹雪の中寒さに弱いスノーとアスクレピオスは動物状態で俺の懐に入っている。

 それを見ているアセナが少し頬を膨らませているが仕方がない事なので認めて欲しい。

 ちなみに俺の次に余裕なのは意外にもトヨヒメだ。深海よりはマシっと平然と言って歩いているのだから本当に大丈夫なのだろう。

 吹雪の風も物ともせず進んでいるのだから本当に大したものだ。


 スノーの案内で最短距離で突っ切る俺達だが、昨日ペンギンたちに負けた牛の群れが居たので3頭だけ倒して後は威嚇で追い払った。

 そんな風に進んでいると何故だか吹雪が弱まってきた。


『もうすぐだよ。吹雪が収まってきたのが証拠』

「何で吹雪が収まるともうすぐって分かるんだ」

『言ったでしょ、台風の目みたいになってるって。だからもうすぐ中心に着きそうって事』


 そういやそう言ってたな。となればさっさと到着して少しでもこの寒さを回避したい。

 まぁ俺は全然大丈夫なんだけど。

 変質で俺の皮下脂肪をちょっと特殊な物に変化させた。それは氷点下の海に住む魚などを元に作りだした不凍液である。

 氷点下の海で凍らずに泳げる魚の不凍液に、ここの熊を食った時に得た脂肪と空気を溜め込んでおく毛並みをまねた事で防寒しているのだ。

 体毛の方も空気を溜め込みやすい形状に変化させといたし。


 それで俺は温かくしているが、寒いのが苦手な俺の懐に居る2人は早く少しでも寒くない所に行きたいだろう。

 こういう時毛の短い動物は本当に大変だな。

 俺?毛深くないけど俳優みたいに毛を剃ってる訳でもないぞ?


 スノーの指示でまっすぐ歩いている間に雪がやみ、風も穏やかになった。

 そして見えるのは巨大な石の壁。国全体を囲んでいるのか、黒い石の壁がずっと続いている。

 それはこの吹雪の壁ギリギリ反っている様にも見えた。


 そして城門と思われる場所に来たのだが……誰もいない。

 どうやって入ればいいのか考えていると、壁の上の方から声が聞こえた。


「おいお前たち!どうやってここに来た!」

「あるいて来ました!開けていただけないでしょうか!!」

「今開けるがすぐに国には入るなよ!いいな!」


 そう言われた後、扉が少しずつ開く。

 少しだけ入って中の様子を見ると、そこは直ぐ町と言う訳ではなく兵士の詰所の様な所だった。

 二段構えなのだろうか?この国は魔物の脅威に相当悩まされているとみていいのか?

 少し待つと兵士が2人俺達の前にやって来た。


「お前達は……冒険者か?」

「はい。冒険者としてこの国を1度見てみたくてやってきました」

「後ろの彼女達は。子供も混じっているが……」

「妻とその妹達です。危ないから来るなと言ったのですが……駄々をこねるので仕方なく」


 適当な理由ででっち上げているが、周りの兵士の表情は険しい。

 それ程までにこの国は警戒心が強いのだろうか?それとも子供を連れてきた俺が怪しいからか。

 そう思っているとジャックが得意の高速移動から兵士を1人引き倒し、後ろからナイフを首に触れさせた。


「これで認めてくれるかな?ただの子供じゃないって」


 そうあっさりと実力を見せた後ジャックはナイフを霧散させて俺の元に戻ってきた。


「ジャック、いきなり実力行使はないだろ。さらに警戒されたらどうする?と言うか警戒されたろ今ので」

「私だって冒険者登録はちゃんとしてるからこうした方が早いでしょ?それからあれ出してよあれ」

「あれ?」

「あの大きな牛。あれを見せればここまで来た実力ぐらいは教えられるんじゃない?」


 まぁ確かに。あの牛がこの辺の人達にとってどれほどの脅威か分からないが、基準ぐらいにはなるだろう。

 俺は別腹内に収納していた牛を1頭出して兵士達に見せた。

 兵士たちはどよめいて牛が本物かどうか調べ始めたが、当然本物である。


「これで俺達が冒険者だって事は認めてくれるか?全員分のカードだってあるぞ」

「わ、分かった。それでこのブリザードバイソンはどうするつもりだ」

「どうって、当然アヴァロンで売るつもりだが?」

「…………残念だが本国にアヴァロン組合はない。あるのは海岸の町だけだ」

「え、マジで?」


 まさか世界展開をしているアヴァロンがないとは思ってもみなかった。

 それじゃこの牛はどこに売ればいいんだ?精肉店にでも売ればいいのか?


「ブリザードバイソンを売るとすれば国に直接売るしかないな。買い取れるのはそこぐらいだろう。それにこの国では貨幣はあまり流通してない。物々交換が主流だ」

「マジで?金貨とか使えないの?」

「使えなくはないが大金貨などのような大手取引では宝石などで払う事の方が多い。この悪天候のせいで本国まで来る冒険者など滅多に来ない。来るのは精々港町から本国に戻ってくる商人達ぐらいのものだ」


 あ~つまりあれか?

 冒険者が来ることすら相当珍しいと。

 まさかそこまで人が来ない国だとは思ってもみなかった。

 この返答には流石の俺達も驚いた。外国との交流が全くないわけではないだろうけど、ここまでつながらいが薄いのも珍しいとしか言いようがない。

 鎖国している訳ではないもんな。港にはアヴァロンがあるらしいし。


「とにかくこの国に外国の方が来るのはそれだけ珍しいと言う事だ。強く警戒し過ぎてしまって不快だったのならすまない」

「あ、そう言う事なら仕方ないと思う。こっちもそっちの事を知らな過ぎた」

「まぁ……仕方ないさ。カードを見せて身分を証明した後は城に案内する。国王様も喜ぶだろう」


 どうやら俺達はいきなりこの国の主に出会う事になりそうだ。

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