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ホワイトフォレストの生態

 ホワイトフォレストに向かう途中、俺達は森の雪景色よりも幻想的な光景を楽しみながら進む。

 スノーの停止の能力なのか、元々森があったであろう場所に樹氷の森が存在する。とてつもなく巨大で正直生きているとは思えないが、こんな状態でも生きているらしい。

 それもスノーの停止の効果により、スノーが止めた時代、神話と言われるほどの大昔に樹氷となった樹木はまだ眠っている様な感じだそうだ。

 冬眠とかそう言うレベルではない。活動を魔法によって“停止”された事によりその状態のまま保存されている様な物の様だ。


「っとなると、スノーがこの魔法で止まっている樹木なんかは全部大昔のまんまって事か?」

『当然そうでしょうね。冷凍保存とは違うけど、周りが雪などで閉じ込められているからそんな風に感じるかもしれないけど、全然違う。停止された物は全部時空に関する所から停止されているから復活させる事なんて無理よ。私が解除しない限りはね』

「それじゃ何で雪は普通に降るんだ?止まってるはずなのに」

『それはを止めたからよ。天候を止めた訳じゃない。そうでなきゃこんなに高くなってないし』

「高い?」


 よく分からない事を言ったので聞き直してみるとスノーは平然と言う。


『地層の様な物、って言えば分かる?ここは私が止めた大地と降り積もった雪の上に雪が積もって踏み固められて、さらに新しい雪が踏み固められてっていう感じで古い雪がどんどん新しい土地になっていったのよ。昔はこの土地ももっと低かったの』

「…………とんでもねぇ話を聞いた気がする。でも当然削られる事だってあるだろ?」

『それはねぇ。魔物同士の戦い、風で削られる、色々な形で上下したでしょうけどあくまでも当時に比べれば高いって程度よ』


 なんにせよ人間には一生できそうもない壮大で時間のかかる話だ。

 だがそうなると疑問がいくつか残る。


「俺達が今歩いている下に魔物とかは居ないのか?」

『どうだろ?封印される前に大暴れしたからほとんど逃げちゃっただろうし、ヴィゾーヴニルみたいな私に仕える魔物も居ない。居ないと思うわよ』

「それじゃこの大陸に居る魔物は?」

『逃げたのが戻って来ただけか……行き場を追われてこの大陸でしか生きられなかっただけでしょ。なんにせよ、私が停止させた後にやってきた魔物って言うのは間違いないわね』


 なるほど。納得した。

 この大陸に居る固有の種と言う訳ではなく、後からやって来た外来種って事ね。

 まぁ人間の歴史から見れば十分固有の種と言って間違いないんだろうけど。


「タツキ、鳥が居る」

「鳥?この辺に鳥なんて……ってあれペンギンか」


 恐らくペンギン型の魔物と思われる鳥が大きな群れを作って固まっていた。

 多分皇帝ペンギンみたいな種類だとは思うが……サイズが段違いだ。あのペンギンたちの身長150センチぐらいあるんじゃね?1部大きいのがいるがそれでも155センチぐらいありそうだし、地球のより大きいな。


「多分ペンギンだと思うが……あれ地球と生態は同じなのか?俺が知ってるのは海に出て魚を捕まえる泳ぐ鳥なんだが……」

「それで間違いありませんよ。聖国の魔物図鑑に載ってましたから。ちなみにあれは帝王ペンギンです」

「皇帝じゃないのか」


 アスクレピオスの説明にちょっとツッコミを入れる。

 ペンギンたちの1部が俺達に気が付いてじっと見始めた。

 どうすればいいのかよく分からないのでとりあえず頭を下げてみる。下げるとペンギンもマネをしたように頭を下げると気にしない様になった。


「なんかよく分かんないけど正解だった?」

「帝王ペンギンの挨拶はおじぎだそうです。恐らくおじぎをしたので敵ではないと判断されたのでしょう」

「……なんか親しみを感じるな」


 おじぎがあいさつと言う所に日本人魂が騒ぐ。

 この世界じゃ手を上げて挨拶が主流だから懐かしい感じがした。


「あ!何か来たよ!」


 ヤタの声にその方向を見てみると、随分と毛が長い牛が1頭いた。

 その牛を発見した帝王ペンギンたちは騒がしい程に鳴き始める。恐らく威嚇のつもりだろうが、サイズが違い過ぎる。

 あの牛はざっと5メートルほどの大きさなのに対し、ペンギンたちは群れているとは言え150センチほど。群れは100を超えている様に見えるが、あまり動けない所を見る限り卵でも抱えているのではないだろうか?

 魔物は雑食がとても多いので肉だろうが草だろうが何だって食べる。


「?同じペンギン?」


 助太刀した方がいいかと思ったらトヨヒメがそうつぶやいた。

 氷上を腹ばいに滑ってこちらに向かってくるのはペンギン。もしかして海で漁をした後に帰ってきた1団だろうか?

 その数はおよそ100。これで200羽の群れとなったが大丈夫か?


 なんて思っていたら恐らくペンギンが魔法を使いだした。

 滑っているペンギンたちの周囲につららが現れて牛に向かって放ったからだ。


「おい、ペンギンが魔法使ってるぞ」

「魔物だから問題ないんじゃない?」


 俺のツッコミにジャックが言う。

 牛は牛の方で角の先が氷で覆われ、角のサイズが格段に大きく、太く、長くなった。

 その角でペンギンたちが放ったつららを砕き、突進に移る。


 流石にスピードは氷上を滑るペンギンたちの方が速いが牛が狙っているのは戦えない群れの方。群れのペンギンたちも連続でつららを発射しているが牛は物ともしない。

 危険だと思っていたら移動していた側のペンギンが氷原の段差を使って飛び出し、回転しながら牛に突っ込んだ。

 それにより噴き出す牛の血。可愛らしいペンギンとは思えない特攻戦闘である。


「おいジャック。あれ本当にペンギンか?」

「ペンギン型の魔物だからいいんじゃない?」


 魔物って言葉本当に便利。

 相当分厚いと思われる毛皮と脂肪を貫通して攻撃するペンギンは凄まじいとしか言いようがない。

 何発か食らった牛は倒れて息絶えた。

 ペンギンたちは喜びの鳴き声を上げ、そして逆に牛を食っている。


「……野生の世界の厳しさを改めて知った気がする」

「地球じゃありえないよね。普通逃げるよね、普通勝てないよね」


 ジャックも流石に今の攻撃方法には驚いたようだ。

 人によっては愛玩動物のように思っているだろうペンギンが、自分達の身長の倍以上の敵相手に勝って逆に捕食すると言う何とも言えない光景が広がっている。

 ただ何羽か牛に突き刺さったままじたばたとしているのが居たので引っこ抜いておいた。

 引っこ抜かれた帝王ペンギンは俺におじぎをして群れに帰って行く。


 その後は俺でも知っているペンギンの生態だ。

 恐らく漁で得たであろう食べ物を夫婦で分け合いともに卵を温める。

 そんな知っている光景にちょっと安心感を覚えたのは当然だと信じたい。

 まだ牛の近くでついばんでいるのもいるけど。


「やっぱこの世界驚く事の方が多いわ。あのサイズ差で勝てるとか地球じゃありえねぇ」

「ん?タツキの故郷は大きいだけで有利?」

「大体はな」

「タツキの世界はかなり単純」


 単純なぐらい分かりやすい方が俺はいいよ。

 そう思いながら俺達は帝王ペンギンに挨拶をしてから再び進む。


 どういう訳かホワイトフォレストに近付いて行くほどに雪が激しくなってきた。

 視界も悪くなり、アスクレピオスは寒さに耐えているがそろそろ厳しいだろう。


「ここいらで休憩しよう!今かまくら造るからちょっとだけ待ってな!!」


 俺は変質を使って周囲の雪を動かして全員が入れるかまくらを造り出した。

 その中は吹雪きをしのいでいるだけでも十分に暖かく感じたし、呼吸もしやすい。思っていた以上に厳しい環境だと思い知った。

 かまくらの中央にヤタが光の球を作って明るく照らしてくれる。


「ふ~。助かりました。タツキの変質はこう言う時に便利ですね」

「まぁそう言っても複雑な物は直ぐにできないけどな。とりあえずここで休憩と飯にしよう。ヴィゾーヴニルの弁当温めて食べるか」

『は、早く温めてよ。私もかなり冷えちゃった』


 ずっと俺の懐に居て歩いてなかった奴が何を言う。

 そう思ったがみんなの疲労もあるのでここでは言わないでおこう。

 コンロを使ってヴィゾーヴニルの弁当、鮭や野菜を使った魚介スープである。そしてパンに乗っけた肉なども焼いてみんなで食べる。

 それだけでも心が休まるのだから食事って本当に大切なんだな。

 そう思いながらも珍しく熱いままスープを食べるスノーに聞く。


「所でスノー。ホワイトフォレストまであとどれぐらいだ?ここで寝た方が安全か?」

『う~ん。正直この先ってずっとこんな天候なんだよね』

「ずっとってマジか?自然現象だろ」

『元々この辺って風が強いのに私が季節を停止させちゃったからずっと吹雪いてるの。だからこの先もずっとこの吹雪なのは間違いない』

「うっわ。そりゃホワイトフォレストに行く人間が居ない訳だ。こんな悪天候がずっとってそりゃ海岸付近までしか近寄らねぇよ」


 観光目当てで港に小さな町が出来ている程度なのはとても納得した。

 だがそうなると本当にこの先に国があるのかすら疑わしい。これほどの悪天候が常に続いている場所に人間が生きていけるとは思えない。


「そうなるとどうやってこの国の人間は生きてるんだ?」

『あ、それは多分私の本体のすぐそばならギリギリ生きていけてるんじゃないかな?台風の目みたいに私の本体を中心に渦が出来てるからそこに住んでると思うよ。そんなに広さはないと思うけど』


 そう言われてスマホで調べてみると確かにその通りの様だ。

 スノーの本体を中心におよそ5キロの渦が出来ている。そのギリギリの面積で城壁を築き、あまり豊かな暮らしではなさそうだ。

 こんな極寒の世界では野菜なども育たないだろうし、結構ギリギリの生活をしているのではないだろうか。


「……それなのに移住しないのは地元民の愛国心か、意地か分かんねぇな」


 1人呟いて仰向けになる。

 ここまで酷い環境だと俺は逃げ出したくなる。それなのに離れないのは意地の様にしか思えない。

 自分が過ごしやすい環境を作れないのであれば、離れて別な場所に行きたいと思うが……


 全員が食べ終わった後に食器を俺の捕食で汚れだけを捕食して今日は寝ようと思ったが、外の獣の気配がする。

 一応と言う事で確認してみると、そこには腕が6本もある10メートルのホッキョクグマが居た。


 正直眠いので時間はかけたくない。

 だが明日の飯ぐらいにはなりそうなので狩っておこう。吹雪の影響で匂いでの判別はし辛いが、多分雄だから殺した所で大した影響はないと思う。

 熊が俺に襲う前にさっさと首をちょんぱして終わらせた。

 これで明日の飯ゲット。


 別腹内に収納して今日は眠りについたのだった。

 ちなみに布団などの寝具も別腹内に収納していたので素直に取り出してみんなで寝ようと思ったのだが……


「なんでみんなして俺にくっ付く?」

「人肌が1番温かい」

『お邪魔しま~す』

「お、お邪魔します……あ、やっぱりタツキさん温かい……」

「ヤタも一緒に寝る~!」

「お姉さま達が一緒になるなら私も……」

「あ、私は別に寝るからね。お兄さん♪」


 何故ジャック以外は全員俺と同じ布団で寝る?狭くね?

 俺はため息をついてからせめてもの頼みを言った。


「せめて動物状態でいてくれ。狭いし、大変そうだし、何か心の均衡が崩れそうだから」

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