謝罪の品
こんな感じでアセナとイチャイチャしている間にピンクちゃんの解毒は終わっていた様だ。
ピンクちゃんは意外と元気で身体が自由になった途端俺に威嚇を開始する。
「アエリヤ、いい加減にしないか。お前では勝てん」
あ、ピンクちゃんの名前アエリヤなのね。
そうウェールズさんが言うが威嚇をやめる気は全くない。
威嚇しながら俺の周りをぐるぐる回るピンクちゃんに、俺はほんの少しだけ本気を出して殴る事にした。
殴ると言っても頭が潰れる程ではない。ちょっと地面に顔がめり込むぐらいだ。
俺は平手でピンクちゃんの頭をそれなりの力で平手打ちすると、加減した通りに顔の下の部分が地面にめり込んだ。
俺はそのピンクちゃんの目の前で言う。
「俺はお前の親とこの国の連中と喧嘩しないと言う約束をした。お前が破っていいのか?俺より弱いくせに」
先程の空中戦が子供だましであると理解したのかピンクちゃんはようやくおとなしくした。
そしてちょっと光ったかと思うとみるみるサイズが小さくなり、最終的には中学生ぐらいの女の子の姿になった。
髪と瞳の色は父親と同じ赤い髪に緑の瞳、服装はワンピースの様なドレスで真っ白でシンブルな物だ。
ただし彼女にはドラゴンの角と翼、尻尾がある状態であり、周りの人達のように完全な人型とは言えない。
なんでだろうと思っていると執事ドラゴンが言う。
「アエリヤ様は現在修業中の身、普通のドラゴンでしたら成人すれば完全な人の姿になる事を許されるのですが、王族の場合成人だけではなく王位を継承した証でもありますから、現在完全な人型になる事は許されていないのです」
へ~これも文化なのかね。
つまり子供は今のピンクちゃんの様に竜人状態とでも言えばいいか、人間とドラゴンの姿が混じった状態でないといけないと言う事か。
そういやアセナ達以外で変身できる種族に会うのは初めてだな。変身できる種族はこういう文化があるのだろうか?
「この度は申し訳ありませんでした」
明らかに不貞腐れた態度でピンクちゃんは言った。
「アエリア!こちらがご迷惑をかけたのにその態度は一体何ですか!!きちんと謝りなさい!!」
そう言ったアルビーさんが足を高々と上げて、ピンクちゃんの頭を踏み潰した。
当然ピンクちゃんの頭は俺の時よりも地面にめり込み、頭全てが土で隠れてしまった。
子供の頭を思いっ切り踏むとか、人間だったら虐待通報待ったなしだぞ。
「ドラゴンが子供に対する躾けは大抵こんな物です。悪い事をしたら踏みつける。ドラゴンの状態であれば前足で踏み潰すのですが、人型だとどうしても後足になってしまうんですよね」
唖然とする俺に執事ドラゴンが説明してくれた。
そうですか。これは躾けなんですね。
他の国の文化と言うか、家庭の事情に口をはさむ勇気はございません。
「まぁ……これ以上喧嘩しなくて済むならそれでいいか」
これで終わりにしよう。そうしよう。
「それじゃ俺達は帰ってもいいか?みんなに喧嘩しないように言っておかないとダメだから」
「少し待て、謝罪として宝物を持って行って欲しい。今こちらに持って来させている」
そう言うと丁度いいタイミングで巨大な荷台に乗っけられた金の延べ棒やら何やらが運ばれてきた。ほとんどの物は……宝物とは思えない何かの道具っぽい。
なんだろうと首を傾げているとアスクレピオスが普段とは大違いのスピードでその道具に駆け寄った。
「これ、全部研究用の魔道具じゃないですか!全部頂いても!?」
「そのための道具だ。それとももっと分かりやすい金品の方が――」
「むしろこれでないと認めません!もうこれは私の物ですからね!!」
珍しくアスクレピオスがはしゃいでいる。
よく分からないのでアセナに聞いてみる。
「アセナ、あの道具は何だ?」
「あれは研究用の魔道具、だと思う。とっても古いの」
「古いって……それ大丈夫なのか?個人的に最新式の方がいいと思うんだけど?要らない粗大ごみ押し付けられた気分なんだけど」
「仕方ない。私達が暴れたせいで文明は何度か滅びた。その中で最も魔道具に力を注いでた時の魔道具。タツキの世界の言葉で言うなら、ろすとてくのろじーって言うぐらい古いけど性能が良い物」
「……アトランティスだかの歯車の欠片を見付けた時の人ってこんな感じだったのかな?」
俺にはでっかい粗大ごみにしか見えないガラクタをアスクレピオスがめっちゃはしゃいでいるのを見ながら思った。
アセナはウェールズさんに振り向いて言う。
「でも何故?自然は精霊、力のバランスはあなた、そして魔道具の管理は魔王だったはず」
「それに関しては……その……あれだ、あれ」
「要らない物押し付けられたとか?」
俺がそう聞くがウェールズさんは苦笑いするだけだ。
押し付けられたようでもないし、何だろうと考えていると土まみれの顔を払いながらピンクちゃんが言った。
「それは昔、お父様が魔王様から買い取った品です。まだアスクレピオス様の事を諦めきれていないご様子ですよ」
何と、妻も子供いるのにまだアスクレピオスを諦めきれてなかったか。
ウェールズさんは娘に裏切られた様な表情をし、その後ろにはアルビーさんが既にスタンバイ。いつでも攻撃できる態勢だ。
「ま、待ってくれ!これは結婚する前に送ろうと思っていた品であり、決して浮気などでは――!!」
「ふふふ、それは後でゆっくりお聞きします」
「た、助けてくれー!!」
アルビーさんに引きずられるウェールズさんに俺は合掌。そして同時にありがたくいただいて行きますと念を込めた。
そして俺は一応執事ドラゴンに確認を取る。
「確認しますけどこれ全部もらっていいんですか?」
「はい。どうせこの国では役に立たない医療用魔道具です。ドラゴンは病にかかりませんから」
あ、やっぱり要らない粗大ごみを押し付ける的な意味もあったのね。なら全て俺の別腹内にしまって持ち帰るとしよう。
俺は魔道具を1つ1つ見て確認しながら別腹内に収納する。
ただ違和感があった事が1つ。それは医療用ドラマとかでよく見る医療器具によく似ていたからだ。
手術台に心電図、輸血用の血を抜く機械っぽいの、挙句の果てにMRIの様なバカデカい物まで。ここまでくると遺伝子操作できる機械まで出て来そうな勢いだと俺は思った。
もし出てきたらななんちゃってSFの世界にはいっちまいそうなんだが?
「ところでこれ取扱説明書とかないの?精密機械みたいなものでしょこれ」
「取扱説明書はこちらに。そしてすべて繊細な魔道具となっておりますので使う際はお気を付けください。直せるのは恐らく……魔王様だけでしょうから」
そうですか。
それじゃ壊さない様に気を付けながら帰るとしよう。
と言うか魔王なら直せるのね、意外と技術職だったりするんだろうか?
こうなるのならもっとアラドメレクに話聞いておくんだった。
なんて思っているとアルビーさんがウェールズさんの首根っこを掴んで引きずって戻ってきた。
もうドラゴンの王様の威厳どっか行ってないか?かなり悲しい状態になっている様に思えるのだが。
ウェールズさんにお礼を言ってから帰るとしよう。
「ウェールズ様、魔道具を譲っていただきありがとうございました」
「有効に使ってくれると私は嬉しい」
全て別腹内に収納した後、俺は頭を下げた。
アセナ達は謝罪の品だから頭を下げる必要はないと思っている様だが、ここは一応下げておこうよ。表っ面だけでもいいからさ。
「それから私からもこれを」
そう言ってアルビーさんが手渡してくれたのは水晶だ。
………………これどうやって使うんだ?俺占いとかよく知らないんだけど?
「こちらは通信用の水晶となっております。何かあった時はお互いに連絡を取り合いましょう」
「あ~なるほど。分かりました」
つまりセフィロで使ったのと似た様な感じか。
携帯とかスマホとかより家電感覚でいいのかな?持ち歩きし辛そうだ。
っとなるとヴィゾーヴニルにも使い方とか教えておく必要があるな。多分1番電話受け取るのヴィゾーヴニルになりそうだし。
「それでは……何かあったら連絡させていただきます」
「ええ。よい関係を築きましょう」
「アルビー?そこは私が言うべき発言ではないか?」
何と言うか、政治的と言うか、仕事的な内容はアルビーさんから受け取る事が多くなりそうだ。
そんな予感をしながら俺達は同じドラゴンの背に乗って帰宅するのだった。




