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共存社会

 こうして俺とドラゴンの間にケンカしないと言う約束を付けたのだが、続けてウェールズは言う。


「そしてこれは頼みなのだが……蛇の真祖よ、娘の事を解放しては頂けないだろうか」

「解放?何の事です?」

「貴殿の毒に娘が身体を動かす事が出来ないのだ。故に解毒を頼みたい」


 あれ?それって俺がピンクちゃんに使った毒の事だよな?確かにしばらく動けないようにしたが……まだ治ってなかったか。

 この話を聞いてアスクレピオスは俺をじっと見る。


「私の毒使ったんですか」

「使った。臓器には影響なく、筋肉に影響が出るタイプの神経毒だ。しばらく動けない様にぶち込んだ」

「はぁ。分かりました。では娘さんの所まで案内してください」


 こうして俺達はそのままピンクちゃんの治療に向かうのであった。

 ちなみにピンクちゃんが居るのは自室らしく、少し距離があるらしい。何でも子供用に別館があるとか。

 ………………いや、普通は部屋じゃないのか?子供用の別館って何?家ごと与えたって事?何だか王族って物は何でもスケールがデカいと何となく思った。

 そしてアセナがふと思い出して俺に言う。


「タツキはハーレムしたい?」


 いきなりの質問に何言ってるだ?っと言う気持ちがあったのでとりあえず聞いてみる。


「え、何その突然の質問。面倒臭そうだから止めておく」

「雄はハーレムに憧れるって聞いた事がある。ウェールズもそうだった」

「ま~夢と言うかロマンと言うか、可愛い女の子とか綺麗な女性にちやほやされたいってのが正しいんじゃないか?結婚まで考えるとすると俺は1人でていっぱいだ」

「そう」

「って言うか急にどうした?いきなりハーレムだなんて」

「昔アスクレピオスがウェールズに言い寄られていたのを思い出した」

「え、マジで?」


 アスクレピオスにウェールズさんがアタックしていた事にちょっと驚いた。

 ウェールズさんはその事に1度大きく肩を動かしたと思ったら、そのまま震えが止まらない。

 なんでだろうと思っているとアスクレピオスが俺に近付いて言う。


「ウェールズはアルビーが居ながら私に求愛してきたのでしばらく毒で動けなくしておきました。でも問題はその後だった様で……」

「浮気されたので“お仕置き”しておきました」


 アルビーさんがそう続けて言った。

 状況は分からないが聞く限り浮気したっと言う事だろうか?

 ウェールズさんはとうとう立ち止まってうずぐまってしまった。

 そして誰に言っているのか分からない弁明を言う。


「しかしあの時はまだアルビーと婚約もしていなかったのだ。真祖と言う強者を妻として迎え入れる事が出来れば国もより強固になるし、いいこと尽くめだと思ったのに……真祖様にフラれたのは仕方がない事だとしても、アルビーのお仕置きは関係ないと今でも思う。付き合ってすらいなかったのだぞ!」


 それは……俺としてはあまり悪い事をしたようには聞こえない。

 付き合っていたり婚約していたりするのであれば浮気はいけない事だが、その状態になっていないのであれば単に好きな人にアタックした様にしか聞こえない。

 どうなんだろうと女性陣に聞こうと思ったが……アルビーさんが目のハイライトが消えた状態でウェールズさんに這いよっていた。


「あらあなた?あの時すでにわたくしとの婚約が決まる直前でしたわよね?しかもわたくしは常に、24時間365日、1分1秒もウェールズ様の事をお慕いしていると手紙にてお知らせいたしましたよね?なのに他の女性に告白するとはどう言う事でしょう、求愛するとはどう言う事でしょう。あの時は真祖が相手であろうとも一歩も引かずに戦う覚悟をしていました。これほどまでに純愛をあなたに捧げていたのに、どうしてあなたはあの時他の方に告白などと考えたのでしょう?どうしてあの時に告白しようと言う考えに至ったのでしょう?」


 おっも!!

 え、なに?アルビーさんヤンデレだったの!?

 驚く俺にアスクレピオスはあ~っと言う表情をし、ウェールズさんは怯えきってドラゴンの王様の威厳が全くない。


 そして最も気になるのはアセナ。アルビーさんの言葉に何度も頷いて同意している様な気がする。

 まさかアセナもヤンデレさんだったのか?いや、きっと浮気された女性の心境に納得しているだけだろう。まぁ俺はウェールズさんの心境に同意するけど。

 ラブレターもらったからって必ず付き合わなきゃいけないルールなんてないでしょ?好きな人に告白する自由だって誰にだってあるでしょ?


 何と言うか……不憫だな。ウェールズさん。

 ヤンデレに目を付けられてそのまま結婚まで進んだのだから大変だっただろう。

 強過ぎる一途はヤンデレ判定されるからやりすぎ注意。


 そんな事を思いながらピンクちゃんの家に着いた。

 家と言うよりは屋敷なんだが……これ本当に部屋感覚なの?広いしデッカイし、普通の屋敷だろこれ。

 庭で俺を睨むピンクちゃんの事はほっといて屋敷を見上げる俺である。


 ちなみにピンクちゃんは毒の影響で人型に戻る事すら出来ないらしい。

 それを聞いて俺はずっと疑問に思っていた事を聞く。


「所でウェールズさん。どうしてこの国のドラゴン達はみんな人間の形に合わせているんですか?あの娘さんの周りに居るのもドラゴンですよね」

「その理由は人間と共存しているからだ」

「共存?つまりここはドラゴンだけの国ではないと」

「この国に居るドラゴンは元々少ない。大元はドラゴンを崇める人間と、人間と共存するドラゴンの国だったのだから。私もそんな人間が崇めていたドラゴンの子孫にしかすぎないが……一応純血ではある。今ではそんな人間との恋も普通になっていてな、今ではドラゴンと人間が混じり合った種族がこの国の大半を占めるのだよ」


 なるほど。中途半端なドラゴンの気配がしていたのはその種族か。

 いわば人間とドラゴンの雑種、それがこの国の平民たち。


「今時のドラゴンは純血ではなく、先祖返りと呼んでいるドラゴンの力が強い者達がほとんどだ。時々現れる先祖の力持って生まれた者達がドラゴンを名乗っている。この国に住んでいないドラゴン達は違うと言っているがな」


 どこか寂しそうに言うウェールズさん。

 先祖返り、つまり隔世遺伝だな。先祖がドラゴンだった故にその力を継承して生まれた子供達。

 ある程度の実力さえあれば外の世界でも大丈夫だろうが……何だか不安になるような内容だ。

 板挟みになりそうな存在と言うか、苦労しそうだなっという感じがする。


 人間が嫌がるのは人間に似た何かだ。もしくは元人間。

 最初っから化物の見た目であれば殺すなり敵対すればあっと言う間に済む話だろう。だが人間に似た何かや、元人間と言うものに対して酷く人間は嫌がる。

 自分と言う人間もああなるじゃないか、きっと人間でなくなったのは神の意志に背いたからだっとか、悪魔に魂を売ったとか根も葉もない事を言い合うのだろう。

 そしてそれが伝染するのではないかと思えば全力で排除する。自分も元人間にはなりたくないから。


 俺は自らの意思で見た目以外はほぼ魔物と変わらない存在になったが、後悔はしていない。

 それが俺が望んだ力だから、そうする事が最も強くなりやすいと思ったから。


 様々な作品で言う所の等価交換。

 これに当てはめるとすればほとんどの力を得る対価は努力と時間だろう。アスリートが少しでも速く走れるように、いい記録を出せるように時間を割いて努力を続ける。

 だが俺はもっと手っ取り早い方法を選んだ。


 それが人間を辞める事。


 その効果は絶大と言える。

 この魔物の中でも特に強力な魔物達の特徴や特性を得る事で、身体能力などだけで見れば真祖であるアセナ達のレベルまでもう少しと言う所ではないだろうか。

 そんな都合よく簡単に力を得る対価として人間を辞めた。


 望んで人間を辞めた。

 望んで人間の道から外れた。

 望んで人間である事を捨てた。


 俺は人間が人間以上の脅威に勝てる方法など数えるぐらいしかないと思っている。

 最も分かりやすいのは武器の創造だが、所詮道具は道具、壊れたり無くしたり、不備が起これば残るのは脆弱な肉体だけ。生身だけで野生の世界を生き抜く事など不可能だと俺は最初から諦めた。

 だから俺はあっさりと人間を辞めた。

 脆弱な肉体から強固な肉体になるのであれば、その方が生き残りやすい。


「タツキ?」

「ん?どうかしたか?」


 なんて考えているとアセナに声をかけられた。

 そしてアセナは俺に身体を預けながら言う。


「私はタツキの妻。ずっと一緒」


 この言葉に、とても救われる。

 俺の様な醜い者に、一緒に居てくれると言ってくれるのだから。


「ありがとうな、アセナ」


 そう言ってからアセナの頭を撫でる。

 アセナは完全に俺に身を任せてただ撫でられる。

 アセナが俺に撫でられる姿は癒される。まるで子犬が親に甘える様に、とても幸せな表情を見せてくれる。

 もしかして俺の方が甘やかされている様な気がしないでもないが、お互いに幸せならいいか。


 俺とアセナはしばらくウェールズやアスクレピオス、その他大勢から生温かい視線を送られるが、特に気にせずいつも通り接するのだった。

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