ドラゴンの国
その後は俺とアセナ、そしてアスクレピオスの3人でドラゴンの国へと向かう事になった。
他のみんなは一応お留守番。これ以上の攻撃はないだろうが、それでも家を守る者は必要だと判断した結果だ。
ちなみにアスクレピオスは個人的にドラゴンの調停者と交流があったと言う事で一応連れてきた。悪い感じではないとアスクレピオスは言っていたが、恨まれてたりしないといいけど。
むしろこの事で恨まれるのは俺の方か?
なんて考えながら俺達は救助部隊と勝手に呼んでいたドラゴン達に1人1体の背の上に乗る。
小型と言っても5メートはあるのだから十分1人乗る分ぐらいの大きさはあるし、ドラゴンだから人間1人ぐらい乗っても問題ないだろう。
その代わり緊張でもしているのかゆっくりした飛行である。それにソニックドラゴンの様に滑空するとは違い、バサバサと飛んでいるので普通の鳥の様な飛び方だ。上下運動が激しい。
そう思いながら飛んでいるとドラゴンの国の空域に入った様だ。なんとなく暖かい空気になった気がする。
冬である今と違って春先のような温かさだ。これだけでも十分に暖かい。
俺は冬服のままで暑いので別腹内からいつもの学生服に着替える。これもいつかは別な服にするようマコトに頼んでおくべきか?
そしてドラゴンの国は意外と言われると怒られるかも知れないが、穏やかで草木に満ちた住み心地の良さそうな国だ。
かなりの高度のはずなのに気温は高過ぎず低過ぎず、ウトウトとしてしまいそうな心地良さ。時折香る匂いは花の甘い香りが混じっているのが分かる。
なんて考えながら俺達はドラゴンの国の上を飛んで行く。
だがどう言う事だろうか……ドラゴンの姿をあまり見ない。居ない訳ではないが、ワイバーンの様なドラゴンだったり、今乗っている様な小型のドラゴンしか見当たない。
どれにも5メートル以上のドラゴンが居ないのだ。
それに意外な事に人間のような姿をしたドラゴン?がとても多い。
大きさは人間とそう変わらないし、見た目だって角があったり、翼があったりするわけでもない。一見すればただの人間にしか見えないが……気配は確かにドラゴンの物だ。
人間の姿になったドラゴンと言う訳でもなさそうだし、どういう事なんだろうと思いながら国を眺める。
人間に近いドラゴン?達は地上の人間よりも上質な服を作業着にしている。デザインは俺の知っている現代の作業着、つなぎに似ているだろうか。
作業をするための服なのは間違いないが、それにしては上質だ。どう見ても麻などではない。
っと言っても俺が捕食しないと成分とかは分かんないんだけどな。ぱっと見そうじゃなさそうだってだけの話だけだし。
そんな国の様子を見ながら飛行し続けると、国の中心と思われる場所に巨大な城があった。しかも物語りに出て来そうな白亜の城だ。きっとジャックが居たらキャメロットとでも叫んでいた事だろう。
その城の前で救助部隊ドラゴン達は下りて伏せた。
俺もドラゴンから降りて一言礼を言ったら俺達の後ろに下がった。
この巨大な白亜の城の城門を見上げながら俺はアスクレピオスに聞く。
「なぁアスクレピオス。ドラゴンの調停者って随分と良い場所に住んでるんだな」
「調停者ですからね。こういう見栄も必要なんですよ」
「見栄?実際に凄い奴なんじゃないの?」
「私達からすれば大した事ない。神々でも上級までしか相手に出来ない」
「それ人間である俺からすれば十分凄いんじゃないの?と言うか真祖の方が調停者より強いの?」
「当然。私達みたいな寿命のない存在は生きてる時間だけ強くなる。普通の生物の様に老いて弱くなる事はない」
うっわ~。それだけでチートに聞こえる。と言うか十分チートじゃね?
普通の生物であればアセナの言うように肉体と精神の成熟が過ぎたのちにあるのは老いると言う弱体化。つまり自ら死に向かっていくと言う事だ。
その制限がない以上彼らはどこまでも成長し、経験から更なる強さを得る。
つまり死ななければどこまでも強くなる事が可能と言う事だ。
これをチートと言わずに何と言う。
「でもこの城は何のために建てたんでしょう?見せる相手も居ないのに」
「どう言うこったアスクレピオス?」
「いえ、調停者は基本的に動く事を許されていないんです。つまり神々は彼らに調停者と言う管理職を与えておきながら、厳しい条件を満たさない限り動けないんです。しかもそれはプライベートでもです」
「え?ちょっと友達と話するとか遊ぶとかぐらい――」
「彼らの友達っておそらく精霊女王か魔王ぐらいですよ?しかもドラゴンの調停者が行っているのはパワーバランスの均衡。つまりどこかの勢力があまりにもおかしなぐらい戦力を得ると、現れて直接滅ぼすか、暴れないように注意を促します」
「ん?その場合俺達の前にドラゴンの調停者が現れたのは……」
「真祖達を集めた事が原因でしょうね。私達が封印される前も出来るだけ固まらないように言わてれましたから」
………………え~。
それじゃ今回は俺の方から喧嘩売っちゃった事になるのか?でも何の説明もなしにいきなり襲い掛かれたんだから大丈夫だよな?
あの数のドラゴンがやって来て、あれで忠告のつもりでした~って言ったらぶん殴ってもいいかな?
「……毎度こんな感じでいきなり来るのか?」
「大抵は違いますね。まずは使者となるドラゴンが1体来るはずです。問答無用で滅ぼすのとは違いますから」
「あの数は」
「ありえません。ドラゴンの調停者は各調停者の中では最もまともですから」
「それじゃ一体何だったんだろうな。あのドラゴンの群れ」
なんて話をしている間に白亜の城の扉は開かれた。
そこに居たのは人間の姿をしたドラゴンだ。これだけは間違いない。
ヴィゾーヴニルの様に執事服に身を包んだ彼はかなり中性的なイケメンだ。髪は金色で身長は俺と変わらないぐらいだが、女装すればきっとモテるだろう。
彼は俺達に向かって頭を下げたまま言う。
「いらっしゃいませ、狼の真祖様、蛇の真祖様。そして各真祖を束ねるお方。王がお待ちです」
そう言った後執事ドラゴンは俺達に背を向けて歩いて行ってしまう。
俺はその後を追っていいのか分からなかったが、アセナとアスクレピオスは歩いて行くので俺も慌てて付いて行く事にした。
まず門に入ってすぐ城下町がある。そこではドラゴンの気配がさっきよりもするがやはり思っていたよりも少なく感じた。
ここに居るのは純粋なドラゴンも混じって入るが、ほとんどはおそらくドラゴンもどきだろう。それにやはり人間の国に比べると人数は少ない様に感じる。
これは仕方がないだろうが、その代わり国民1人1人を大切にしているのか人間の国よりも裕福そうだ。
町などはヨーロッパ風のレンガ造りではあるが……この雰囲気はどこかで感じたことがあるような気がする。
どこでだっけな?
そんな城下町を抜けてもう1つの城門が開かれると、城の中はかなり綺麗だった。白と青を基調に石造りの城は物静かな印象を受ける。
そして城の中の庭園は花に溢れていてとても綺麗だ。
城の中も無駄な物は一切ない、と言う感じで少し寂しさも感じたが……まぁ他の人家にケチをつける様な真似はしない。
しかし俺はこの執事ドラゴンに聞いておきたい事がある。
「あ~、質問良いか?」
「何なりとどうぞ」
「俺達がこの城に招かれた理由は何だ」
「それは謝罪とあなたの今後についてお聞きしたいからです」
「俺の今後?」
「はい。詳しい話は直接王よりお聞きください。もうすぐですよ」
そう言った執事の言う先には巨大な門が立ちはだかっていた。
その扉にも当然のように何か描かれている。
目立つのは赤いドラゴンと白いドラゴンの喧嘩だろうか?門の上の方にはほとんどそんな暴れているような絵になっており、下に行くにつれて喧嘩は収まりって最後には2体が並んで城の前に鎮座しているような絵で終わっていた。
「こちらはこの国が出来るまでの経緯を描いております。元々王と女王様は敵同士だったのですが、今ではすっかり落ち着いております」
「敵って穏やかなじゃないな」
「はい。ですが当時の状況では仕方がなかったのです。詳しい話は後程。門が開きます」
扉は重たい音をたてながら開いて行くのだった。




