雪遊び
雪遊び計画をしてから2日後、俺達は温かい恰好をして家を出た。
森は雪に包まれていてとても幻想的な風景だ。スノーがあの森の中で迷子になったら見つけられないぐらい真っ白な景色である。
ちなみに今日はヴィゾーヴニル以外は全員外に出ている。
ヴィゾーヴニルは家で昼飯の下ごしらえ、冷たくなって帰ってくる俺達を温かい飯で出迎えてるためだ。
なので今日はヴィゾーヴニル以外全員で遊ぶ。スノーは無理やり連れてきた。
『何で私も外に出なきゃダメなのよ!寒いのダメなのに!!』
「だからって家でずっとゴロゴロしてると太るぞ?」
『太らないわよ!』
スノーは全身の毛を逆立てて威嚇するが、子猫の姿だからか全く怖くない。
他のみんなの服装はこの世界の冬の格好、だったのだが遊びには向かない気がしたのでジャックと共に俺達の世界の冬服を教えた。
最も喜んだのはヤタで、俺達の言うコートやスキーをするような恰好など忠実に再現してくれた。
結果アセナは黒くてフードの部分がモフモフしたコート、アスクレピオスは緑色で完全防寒のスキーかスノボーをする人のような服、ヤタはピンク色の子供らしいファーコート、そしてトヨヒメが大人っぽい紺色のコート姿になった。
そして俺は何の面白みのない迷彩柄のコート。
最後にスノーは、全裸。
『全裸って言い方止めてくれない!?どうせ全員魔法で自分の毛皮とかを好きな形に加工してるだけのくせに!!』
「でもスノーは本当に普段と何も変わらないじゃん。ペット用の服でも教えようか?」
『そんなの獣状態に必要ないでしょ……もういい。好きにさせてもらうから』
そう言ってトコトコと歩いて行ってしまう。白くて小さいから本当に迷子になりそうだ。
こうなる事は最初から分かっていたので最初に作るのはかまくら。とにかく雪を積み上げて中をくり貫けば完成する。
雪はみんなで集めてギリギリ3人は入れそうな感じの大きさには出来そうだ。
ここを休憩所として使うためにしたには毛皮を敷いておく。本当はござを敷いてその上にこたつを乗っけるのが風流な感じがするが、今のこたつってただ布団を挟んだテーブルだからな……アスクレピオスにでも頼んでみるか?魔法道具研究って名目で。
今現在俺の別腹にある素材じゃ作れそうにないからな……温かい熱を出す石みたいなの落ちてないかな?それがあれば疑似的にこたつが作れそうな気がするんだけど。
まぁそれでもただ外に居るだけよりは寒くないので今はこれでいいだろう。
スノーも文句を言わなくなったし。
「休憩所も出来たと言う事で、そり滑りから初めてみるか」
っと言う事で用意したのは木の板で作ったホームセンターで売っている様なそりもどきだ。大きさはいじって大人が乗っても大丈夫なサイズにした。
ヤタにはちゃんとサイズに合ったそりを用意。簡単なひもを付けただけの板だがちゃんと雪が入り込まない様に反り返しは付けてあるし、滑っただけで雪が入り込む様な手抜きではない。
さらにそりの底は滑らかに動くよう加工済みだし十分だろう。
「タツキお兄ちゃん。これに座るの?」
「そうそう。足はちゃんとそりの外に出しておけよ、じゃないとブレーキにならないから」
ただ……本当にこの場所で大丈夫か?
家から少し出ただけの場所で結構距離があるし、高さもある。山の下まで一直線とは言え結構な高さなのだからもうちょっと低い所から始めるべきでは……
「そんなに心配ならお兄ちゃんも一緒に乗ってよ」
「それもそうだな。それじゃ2人で――」
そう言うとアセナがそっと俺の服の袖を掴んだ。
「3人で乗るか。ジャックはアスクレピオスとトヨヒメに教えてやってくれ」
「分かった。でもこれってそんなに説明いるかな?滑るだけでしょ」
「一応だ一応。足引っ込めてて止まらずにぶつかりました~なんてなったら大惨事だぞ」
「……前から思ってたけど、結構お父さんしてない?」
「その辺はよく分からん。子供は嫌いじゃないけど」
こうして1つのそりに俺が乗り、俺の上にアセナが乗り、アセナの上にヤタが乗った。
うん。確かにこの説明だけだと親子っぽい。
雰囲気的には子供を連れて雪山に来た家族?俺、家族で雪山に行ったの小学校以来だな……
「お兄ちゃん。早くいこうよ~」
「はいはい。それじゃ滑るか。少しだけ足上げろよ」
そう言って足を上げるとそりは少しずつ滑り始めた。
ここからふもとまで大体……10メートルぐらい?傾斜は10度ぐらいか。
緩やかに滑り出したそりは少しずつ速度を出し、結構いい速度ではないかと思う。
でもそれはあくまでも普通の人間目線での話だった様だ。
ふもとまで来てヤタは言う。
「もっと速くしちゃダメなの?」
「ん。ブレーキ要らない」
「そうか?子供にはあのぐらい安全な方がいいと思ったんだが」
「足りないよ~。もっと風を感じたい!」
どっかのバイク乗りのセリフか。
では開き直ってもっと速度を上げようと家の前まで登った。そこにそりをを置いて再び全員で乗る。
次は俺がひもを握った。
「お兄ちゃん。次は何であぐらなの?」
「ブレーキ要らないって言ったから」
「タツキ。どうして次はタツキがひもを握る?」
「俺が操作しないとヤバいから」
家の前からではおよそ50メートル。っと言ってもこれはらせん状になっている距離が多分50メートルという話だ。
そこから大人2人+子供1人分の体重。これは加速するはずだ。
そしてらせん状になっていると言う事はどうしてもカーブが生まれると言う事だ。直線は最後の10メートル部分だけ、これなら文句出ないだろう。
っと言う事で2人が俺の上に深く座るとそりはゆっくりと動き出す。
俺は直ぐに風の魔法を使ってロケットダッシュを決めた。
ボン!っと言う爆発に近い音が鳴った後そりは勢いよく滑り出した。滑っている雪が少しはねてヤタとアセナにかかっているだろうが気にしない。
何故なら――
「ヤッホー!!やっぱりこれぐらいのスピードは必要だよね!!」
ヤタがとてもはしゃいでいるからだ。
俺はそりのひもを引っ張って上手くカーブを曲がる。強くまかり過ぎるとぶつかったり飛び出してしまうので微調整が必要だ。
それに今回は脚のブレーキはないので加速し続ける。
風を切る音でかなりの速度を出している事が分かる。安全なそり滑りをしていたジャック達の隣をあっと言う間に追い抜いてラストの直線。
当然ふもとには木が生い茂っているのでぶつかれば大惨事だ。
なのでふもとに着いた瞬間、俺は片方のひもを思いっ切り引っ張って急に曲がった。
これによりそりは木にぶつかる事なく、急に曲がった事により速度は一気に落ちて安全に止まった。
まぁ急カーブした時点で安全とは言い難いけど。
「それでどうだった?ヤタ、アセナ」
「面白かった!今度はあの速度のまんま森の間を滑ってみようよ!」
「それは楽しそう」
だ、ダメだこいつら。スピードジャンキーだ。
雪合戦で気を逸らさないと。
っと言う訳で3対3で始めた雪合戦。ちょっとはしゃいだ感じで平和な感じだと思っていたのだが……全然そんな感じではない。
ちなみにメンバーは俺、アセナ、ヤタ。対するはジャック、トヨヒメ、アスクレピオスである。
「それー!」
「えい!」
「あ、もうちょっとだったのに!」
そんな会話は確かに平和だ。でも投げる雪玉の威力が想定以上だ。
木に当たれば木が大きな音を立ててぶっ倒れる。地面に当たればクレーターが出来るとこれどこの戦争?っと思うような具合なのである。
いやまぁ確かに合戦だけど、本当に戦みたいにする必要はないから。
そして俺は後方で雪玉づくりで後方支援をしていた。
投げるのはアセナとヤタの2人。向こうはアスクレピオスが雪玉を作って補給しているらしい。
一応そんな威力の雪玉でも防いでいるのがこの雪を固めた壁なのだが……どうして防げてんの?魔法でも使っているんでしょうか?
そして球を投げている方は……容赦ないな。普通に顔面狙ってるじゃん。
最初に危ないから顔面はなしって言っておいたんだけどな……熱中し過ぎて忘れてるな。
もしかしたらヤタだけじゃなくて、他のみんなもずっと家の中に居てストレスが溜まっていたのかも知れない。
そうだとしたら丁度いい気分転換だったのかも知れない。
「コッケエエエエエェェェェェェ!!」
雪玉を作りながらそんな事を考えていると、ヴィゾーヴニルから警戒の鳴き声が響いたのだった。




