冬は……暇
お化けみたいな悪魔が憑りついていても俺達の日常は何も変わらない。
いや、冬になってダラダラしているっと言うのが最も正しい。
この家の外では数日間猛吹雪が襲っているし、流石にこういう悪天候の日はヤタも外に遊びには行けない。
大人しく家に居るのだがそろそろしびれを切らしそうだ。
俺はこういう時のためにトランプや将棋、オセロを用意したがそれだけではヤタの遊びたいという欲求を満足させるのは難しい。
こう考えると本当にゲームなどの娯楽は偉大だ。
だって家の中から出なくてもいいという人種が生まれる程なのだからそりゃ偉大である。
でもここは異世界、当然テレビゲームなどあるはずもなくとにかく家でゴロゴロする。
他の家だとどんな感じなのだろう?農家のみなさんは悪天候だと仕事休んで~っと言うが休んでなにしてるの?っと聞くと答えてくれた事はない。
やるとすれば……家事ぐらいか。
でも俺が家事を手伝おうとするとヴィゾーヴニルが何故か悲しそうな顔をする。
だってこの人数だと大変でしょ?スノーはともかくとして俺達は基本的に人型のままで生活しているし。
でもヴィゾーヴニルは何故か家事をしたがるんだ。俺達の細かい所を色々としてくれるのでとても助かっているんだが……大丈夫?本当に無理してない?
家の中でまったりとし続けるのはそれなりに疲れるし大変な事もちょいちょい出る。
とりあえず変質を使ってこたつを作ってみた。っと言ってもテーブルの間に布団を挟み、魔法でちょっと空気を温めただけの超簡易版。
元の世界でぬくぬくとして温かさにはまだ遠いかな~っと思う。それに温めている間は起きてないとダメだし。
そしてこのなんちゃってこたつに入りっぱなしなのはスノーである。
子猫の姿をそのまま利用してよくこたつの中に入っている事が多くなった。
布団の中という事もあり、確かに他と比べれば温かいだろうが……別にこの家、寒いって事もない。
確かに神殿を好き勝手に改造しまくったが保温に関してはしっかりしている。
だからこたつから出ると寒いって事はない。むしろ一定の気温を保てているのだから、他の家より暖かいんじゃないかと思う。
そう言えば娯楽として作った将棋はアセナとアスクレピオスの間でとても流行っている。
アスクレピオスは知能系だから納得だが、正直アセナは意外だ。
アセナは俺同様に考えて倒すよりも勘と経験を頼りに戦っている気がしていたからだ。
だが将棋ではよく考えてコマを動かしているから意外とそうでもないのかも知れない。
ちなみに俺は最初だけ2人に勝てて、後は負け続きである。
ルールをきちんと理解した後俺はボロボロに敗れ去ったのであった。
無念…………
「やっぱり姉さま達は強い」
アセナとアスクレピオスの盤を眺めて少しでも勝てる様になりたいと見ていると、トヨヒメが俺の対面に座った。
その手にはオレンジの乗ったお盆があり、俺にも1つくれた。
みかん感覚で皮をむきながら聞く。
「やっぱりって?」
「アセナ姉さまは昔から群れを率いて戦うのが上手。配下に収めた狼や犬たちも凄かった」
「アセナって群れを率いてた事があったのか?1人じゃなくて?」
「うん。アセナ姉さまは狼だから本当は軍団の方が強い」
………………何ですと!?
1人であんなに強いのに本来は軍団向きだったのか!
「でも……多分もう居ない。長い時間が経っちゃったから」
そう聞くと本当にアセナが長い時間を生きてきた事がよく分かる。
アセナが感じたことを全て分かり合うことはできなくとも、ちょっとでも分かっていけたらと思う。
ではこの将棋はアセナにとって得意分野かも知れない。
そう思っている間にアスクレピオスが後ろに倒れ込んだ。
「もうダメです。負けました」
「ん。お疲れ様」
どうやらアスクレピオスが負けたらしい。
盤を見るとまだ勝負は遠い所にあるような気がするが、負けを認めたと言う事は負けフラグは立っていたと言う事だろう。
俺にはさっぱり分からないが。
「それにしても……この大雪どうにかならねぇのかな……」
こんな大雪ニュースでしか見た事がない。
日本海側の人達って本当に大変だったんだな……それでもこの家は温かいけど。
「タツキは雪嫌い?」
「嫌いって訳じゃないが吹雪は別だろ。ここから出たら何も見えないだろ」
アセナが将棋のの駒を片付けながら言う。
一応東北出身なので雪は嫌いではないが、それでも外の猛吹雪を見ていると早く落ち着かないかと思う。
それにしても……東京の人達って本当に雪と氷に弱いよな。ニュースで滑り難い歩き方を紹介してた時は正直驚いた。
「そう言うアセナは?」
「私は好き。ふかふかしてる」
「ほ~。この辺の雪はいい雪なのか。それならソリでも用意した方がいいか?」
「そり?」
「まぁ何だ、ソリってのは子供が雪で遊ぶときの道具の1つかな。簡単に言うと、板状の物の上に乗って滑り降りるんだ」
「それだけ?」
「それだけ。それじゃ……雪合戦でもするか?本気は絶対出さないのが条件だけど」
「本気を出しちゃいけない遊び?」
いや、雪合戦そのものは雪玉をぶつけ合うだけだからそんなに危なくはない。
だが固く固めた雪玉、石を中に居れる邪道な雪玉、それ以前にアセナ達真祖が本気で雪合戦したらどんな事になるのか想像したくない。
アセナ達はともかくとして俺は死ぬんじゃないか?雪で真っ白になって。
「雪玉を作ってぶつけ合う遊びだからな。加減してほしいと思ってる」
「全力でやっちゃダメ?」
「家に雪が入らない様にするのと、怪我しない事を前提にしてくれるなら」
「それじゃやる」
そう言ってアセナの尻尾は機嫌よく動く。
そんなに雪合戦が楽しみですか。
「ちなみに私は参加しませんよ」
『私も寒いの嫌~い』
そう言ったのはアスクレピオスとスノーだ。
変温動物と猫はやっぱり嫌か。
しかしそれを許すアセナでもなかった。
「お姉ちゃん命令。強制参加」
『それは流石に横暴よ。温かい場所でぬくぬくしてる方が幸せじゃない』
「スノー姉さんに賛成です。それに私の場合はジャックにも聞かないと――」
「あ、それなら参加するよ。たまには外で動かないと太っちゃいそうだし」
そう言いながらジャックもこたつに入ろうとする。
しかし小さな試作型こたつのなので大した大きさではない。
どこに座らせようかと思っていると、アセナはこたつから出て再びこたつに入った。俺の膝の上に座って。
「アセナ?狭くない?」
「ちょっとテーブルに脚が当たる。でも気にしない」
「気にしないからって言う問題でもないだろ。それなら俺出るから――」
「ダメ。お嫁さん命令」
そう言ってアセナは俺が動けない様に深く座る。
俺は諦めてアセナを後ろから抱き締める様にして大人しくする事にした。
「うわ、人前で堂々といちゃついてるよ。この新婚夫婦」
「新婚だからイチャイチャさせてくれよジャック。っと言うかさっきの会話だがお前まだ子供だろ。ダイエットは早過ぎるって」
「そこまでの事はしないけど、研究でこもりがちだからたまには身体を動かしておきたいの。成長のためにもね」
そう考えるとジャックはもう少し外で遊んだ方がいいのかも知れない。
見た目は子供、頭脳は大人。それが暗殺者ジャックである。
当然成長期なので食べるだけではなく、遊びで身体を動かした方がいいだろう。
「それじゃ吹雪が収まったらソリ滑りと雪合戦で遊ぶか」
こうして少しずつ予定を立てていく俺達なのであった。




