お化けみたいな悪魔
そんな感じで食卓に魚が並ぶようになってから2週間。そろそろ冬に入りそうな時期だ。
冬ごもりのために薪は蓄えた。布団も薄い物から温かい羽毛に変えたし、いつでもバッチ来い!去年の様に冬眠で誤魔化さなくて済む。
冬の影響で森の動物達も日を追うごとに数を減らしていき、気が付けば小動物を数時間かけてやっと見つけられるかどうかだ。
どの動物も冬から春にかけて対策は整えたのだろう。
起きているのは俺達と小動物ぐらいか。
そんな秋から冬へ変わる境を見ながら俺は森の中を散歩する。
春や夏と比べて大型の動物達は鳴りを潜めるが本当にどこに行ったんだろう?それと変わるように小型の動物達がさらに小さい子供達を連れている姿が見える。
どうやらこの森の小動物達は秋に出産し、冬に子育てをするようだ。
恐らく外敵が少ない冬を選んでいるんだろうが、それでもエサが少なそうな冬でなくてもいいのではないかと思う。
外敵が少ない代わりに環境が牙をむきそうな気がするが本当に大丈夫なのか?
ピョンピョン飛び跳ねているウサギの親子を見て思う。茶色い夏毛から白い冬毛に生え変わっている最中の様で毛色がまばらだ。子ウサギは真っ白だけど。
親ウサギは俺に目線を送るものの、敵意がないと分かると気にせず草を食む。
子ウサギは俺になど全く気にせず親から母乳を飲んでいる。と言うかこの森のウサギって普通に外に出るのな。てっきり巣穴に引きこもっているとばかり思ってた。
そんな光景を見てから俺は家に帰ると、アセナが待っていた。
「お帰り。ご飯できてる」
「ただいま。ヴィゾーヴニルがどんどん料理のレパトリーを増やしてくれるから飯が楽しみだ」
「美味いは正義」
「それだけは絶対正義だよな」
俺達にとっての絶対正義は美味しい物と決まった。
そういや勇者はどうしてんだろ?冬も誰かのために頑張っているんだろうか?
勇者業がブラックでない事を祈る。
それにしても……冬の間は暇なんだよな。
食料はこれでもかと言うぐらい詰め込んだし、狩りをしようと思えばできない事もない。
子育て中の小動物を狙った中型動物を狙えばいい。まぁ全部魔物だけど。さっきのウサギ含めて。
もしかしてこういう何もない時にバカンスに行くのではないだろうか?
セフィロの時は半分トヨヒメを助けるためだったし、普通のバカンスもそれはそれでいいよな……
避暑地ならぬ避寒地?っでいいのか?そんなところに行くのもいいかもしれない。
もし行くとしたら……温泉地がいいな……温かい温泉にみんなで浸かって、のんびりダラダラしたい。ヤタは元気に遊んでそうだけど。
そんな事を考えながらみんなで食事をする。
冬の間は本当にやる事がないし、将棋でも作るか?チェスのルールは中途半端だし。ポーンって1番端まで進んだらどうなるの?引き返せないじゃん。
それから……オセロか?意外と自製出来そうなボードゲームって少ないもんだな。
人〇ゲームとかはコマとかゲーム用紙幣とか色々準備が必要だし、何よりあのルーレットを上手く作れる自信がない。
そういやトランプってこの世界にあるのか?あれば買っておけばよかったな~。
なんて考えているとスノーが何故か俺の事をじっと見ている。
より正確に言うなら俺の後ろを凝視している様だが……
「スノー?俺になんかついてるか?」
『…………うん。憑いてるね』
「え、マジ?どこに何が付いてる?」
食った物が顔にでも付いてるんだろうか?
口の周りを触れてみるが、食い物が付いている様な気がしない。
スノーは首を横に振ってから言う。
『そうじゃなくて、憑りつかれてるって言ってるの。悪魔っぽいけど……なんか変な事した?』
悪魔?悪魔と言えばアラドメレクだが……あいつの気配は一切しない。
俺も首を傾げながら聞く。
「それってどんな悪魔だ?」
『悪いけど憑りついてるって分かるだけで姿はおぼろげ。でも私の目をもってしてもぼんやりとしか分からないから相当上の方の悪魔みたい』
「悪魔ね……魔王が俺に対して何かしてきたとか?」
『何でそこで魔王が出てくるの?』
「え?悪魔って魔王の配下じゃねぇの?」
何やら俺とスノーの意見に食い違いがあるようだ。
そう思っているとアスクレピオスが言う。
「悪魔と言う種族は自由気ままで元々誰かの下に就く、っと言う事はしてきませんでした。しかしとある日魔王が産まれた事により1部の悪魔が魔王に支配されるようになりました。それがタツキさんの言う悪魔のイメージでしょう。ちなみに悪魔とは元々、赤、青、緑、黄、白、黒の6色に分かれます。タツキさんが知っている光の三原色と、色の三原色が一緒になった形です。このうち魔王を名乗っているのは赤の悪魔であり、それ以外の悪魔達はそれぞれ縄張りで好きにしていますよ」
ふ~ん、6色ね。
スマホで調べた時はそこまで詳しく調べてなかったな。今度詳しく調べてみるか?
「それじゃアラドメレクは何色の悪魔だったんだ?」
「赤です。魔王の衣装係と言っていたそうですし、おそらく赤の悪魔でしょう」
「っで俺に憑りついている悪魔は何色だ?」
そうスノーに聞いてみるが首を横に振る。
『残念だけど分かんないって。ぼんやりとしか見えないから始まりの悪魔でしょうね。超大物よ』
「そいつが俺に憑りついている事で何か問題あるか?」
『問題と言えば普通憑りつかれてたら魔力をどんどん吸い取られるはずよ。何で人間が平気なのよ?』
「さぁ?特別魔力とかを思いっ切り奪われている感じではないし……まぁ問題ないだろ」
確かに気が付けば魔力が奪われているのは分かるが、それでも微々たるものだ。
正直トヨヒメを別腹内に入れていた時よりも消費は少ない。だからまぁ、大した事ないだろう。
「それともだれかなんか身に覚えのない被害とかあったか?」
そうみんなに聞くと全員思い当たる節がないようだ。
被害はない。あると言っても俺の魔力をちょっと食べているだけなので被害らしい被害はない。なら別に悪魔はいても問題ないという事でいいだろう。
それよりも俺には気になる事がある。
「スノーの目って特別なのか?」
『まぁ……多分?と言ってもちょっと見ている物が違うだけで、特別って感じたことはないけど』
「具体的には?」
『天使、精霊、悪魔の姿がよく見れる事かしら。それは肉体を持っていない状態でもはっきり見えたし、そう言う物に敏感なの。ゴーストみたいな実体を持たない魔物にも適応される。っと言ってもアセナ姉さんなら嗅覚、アスクレピオスは熱源感知、ヤタは聴覚、トヨは電磁波で分かるから正直みんな備わっている様な物だけど』
つまり目で見えると言うのがスノーだけであり、アセナ達はそれぞれ別の方法で感知しているから特別感は少ないと。
俺は……まず悪魔とか精霊とかちょっとした事しか知らないし、ちゃんと調べた方がいいんだろうか?
そう思っているとアセナが挙手した。
「被害、ある」
「え、どんな被害だ?」
「エッチしてたの見られたかもしれない。ちょっと殴らせて」
あ~プライバシーの侵害か。
どうなんだろうと、俺の五感では感じる事が出来ない悪魔に向かって振り向こうと思ったが……どこにいるんだろうな?
見えない聞こえない、匂いもないとなるとこの状態の方が便利そうな気がするが、アラドメレクの話だとそうでもないらしい。
いいとこどりってのはどんな世界でも出来ない物なんだな。
アセナには分かっているらしい悪魔に向かい、拳を振り下ろしていた。
リビングのすぐ近くに居たようでそこで殴る仕草をしていたが……はたから見るとシャドーボクシングか、何もない所に殴る変な人に見える。
ただアセナがそのままエッチしている時は離れてろ、と言っているので多分そこに居るんだろう。
どうやら我が家にお化けの居候が出来た様だ。




