海の魔物
連絡船と言うものがどの辺にあるのかは分からないが、スマホでちょっと検索すればあっと言う間にマップに表示される。
と言ってもそんなの使わなくてもスノーの気配は覚えたので、その方向に走れば必ずスノーに出会う事が出来る。
ただ問題はどんな魔物に襲われているのか、今船はどんな状況になっているのかまでは、それなりに近付かないと分からないと言う事だ。
それにマップだと上下とかは分からないし、結局画面では全てを知るは出来ない。
海の上をしばらく走っていると、スノーの気配がとても近くなってきた。
大雑把な予想を立てて進んでいると……船が巨大な触手に襲われている光景が目に入った。
もしかして魔物ってタコかイカなのか?
そういやタコ食ってないな……イカも食ってないな……
………………捕まえて食うか。
そうと決まればタコ狩りじゃあ!!
イカかも知れないけど。
俺は船に絡みついた触手を手刀で切り離す。
と言っても切り離しただけでは触手はトカゲのしっぽの様にまだまだ動いているので、ひっぺ替えした後別腹内に収納した。
こうすれば問題ないだろう。
と言ってもまだ船に張り付いた触手はあと2本残っているのでもう1本切り落として収納すると、残った1本は慌てて海の中に戻って行った。
その間に1度船に飛び乗り、スノーが居ないか見てみる。
と言っても混乱する乗客が多く居るのだからそう簡単に見つかるとは思えないが。
「あ、あの。あなたは一体?」
「俺はホワイトシーに居た冒険者です。救助に来ました」
船員と思われる青年に言われたのでそう答えた。
青年は安心半分、恐怖半分と言った様子で俺に聞く。
「ホワイトシーの冒険者と言う事は、他の冒険者の方も居るんですか?」
「申し訳ありませんが、俺は先行してきただけなのでもうしばらく時間がかかると思います。申し訳ありませんがお待ちください」
「つ、つまり援軍は来るんですね。よ、よかった」
援軍が来ると言う事で周囲の人達にも安心が広がった様だが正直安心は早い。
この船にまた触手がやって来る可能性は高いし、衝撃で海に落っこちたらそのまま寒中水泳をしなければならなくなる。
助けるのも面倒臭いし、出来れば船の真ん中あたりで小さくなってくれていると助かるんだが……
そう思っていると船に大きな衝撃が来た。
恐らく船底を叩いている感じだろう。下からの衝撃に乗員たちは倒れたり転がったりしている。
俺はしゃがんで耐えている船員に言う。
「とりあえず危ないんで大人しくしていてくださいね。ちょっとは攻撃して気を引きますから」
「お、お願いします!!」
そいう言った後俺は海へと飛び込んだ。
ドボンと言う音が鳴った後俺は素早く変質して冷たい海の中でも活動できるようにする。
ちなみにメインはトヨヒメがメインではあるがエラは付けていない。確かに水中でも呼吸はできる様になるのだが……あんまり使い勝手は良くない。
トヨヒメが鮫だからか常に泳ぎ続けないと呼吸が出来なくなるし、カロリー消費も実はかなり激しい。
どう見ても短期戦仕様と言う感じだったので、呼吸だけは素直に肺のままにしておく。それでも長時間空気を溜めて置けるように改造してあるが。
それから皮下脂肪も変質させて寒い海の中でも体温を維持できるように改造。体内の不凍液を強化させる事で凍りにくい身体にした。
それでもベースは人間なので出来るだけ早めに船に上がりたい。凍りにくいだけで凍傷にならないようにはしてるけど!
そして今回の敵は……やっぱり巨大タコか。
でも足の数は8本……あれ?2本切り落としたはずだよな?
なんでだろうと考えている間にタコは俺に向かって足を1本伸ばしてきたので手刀でぶった切った。
もう大丈夫だろうと思っていると再生した!?
タコはその足でそのまま俺を殴ってくる。
水中なのでそんなにダメージはないが、素直に驚いた。切り落とした足は浮いているし、切れた足をくっつけた訳ではない証拠があるので非常に興味深い。
でもそうなると生け捕りにするのは難しそうだ。
元気に標的を船から俺の変えてきたので、楽なのだがどうするかな。
俺は水中で水を蹴った。
水の上を走れるのだから水の中を走っても良いじゃない?っと言う移動方法だ。
流石に水面を走るよりも大変ではあるがスピードは意外とある。その理由として体形を水の影響が出ないようにできるだけ海獣、イルカとかクジラとか、アザラシをイメージして服や体の性質を変質させたから出来る移動法だったりする。
まぁそんないい所をとにかくくっ付けた様な感じで泳ぐのではなく、蹴って移動し続ける。
一応アスクレピオスから教えてもらった初歩魔法などを使ってみるが……当然炎系は無駄、水系は海流に邪魔されて上手くいかない、氷も水の壁により威力がかなり下がり、風なんて論外。
そして最後に残った電撃系は……色々不安だ。
0距離で放電するならともかく、離れた位置に居るタコに届くのかどうか分からない。
電気ウナギは効率的に電気を流すために、相手の身体によじ登る様にして身体をくっつけるとテレビで聞いた事がある。それと同様にするためにはわざとタコに捕まるのも手か?
なんて考えている間にタコが墨吐いた!
視界が悪いな……確かタコの墨って攻撃用だっけ?それはイカか?どっちだっけ?
なんて思っている間に墨によって視界が悪くなっている間に8本の足が先を丸めて殴ってくる!これが本当のタコ殴りって奴か。
まぁ別に視界だけじゃなくて水中で不自然な音とか、普通に魔力の流れとかは見えているので何一つ問題ないんだけどな。
そしてタコ足が触れる度に電撃を放射。
最終的にタコは痺れている。痺れて身体を上手く動かせていない様だ。
その隙に『捕食』して別腹送りにした。これで生け捕り完了だな。
あ~タコ料理ってタコ焼きしか思いつかないけど、マヨネーズと一味を混ぜた奴に付けて食いたいな~。
ん?これはイカの方が多いか?
そう思いながら俺は海面に上がり、船まで泳いだ。
船の方は無事だった様で、多少壊れてる部分はあるが全体的には問題ないだろう。
俺は船に勝手に上がって、服を絞って乾かす。
そしてこういう時はドライヤー魔法~。乾燥魔法は微妙な魔力操作が難しいのでパス。実は使えるのはヴィゾーヴニルとアスクレピオスだけという地味に面倒な魔法だったりする。
「冒険者さん!あの魔物は!!」
「あ~追い返したよ。今は諦めて海の底に帰って行った」
船員に言うとほっとした様に息を吐きだした。
これで安全にホワイトシーに戻れるのだから当然か。
後は……俺の中に居るタコをどう締めるかだな。別腹内だと攻撃できないんだよな……
それよりもスノーだ。
スノーの気配は確かにこの船の中からする。
元々子猫サイズだから目立ちにくいとは思うが、あの真っ白な猫なら――
「ミャー!」
「まって~!」
白い子猫をこれまた小さな子供が追いかけ回していた。
子猫は明らかに嫌がっているのだが子供は全く気付かず追い掛ける。
巨大タコに襲われていた後だからだろうか、周囲の客はほっこりしている様な表情を見せる。
その子猫は俺を見付けると爪を立てて俺によじ登ってきた。
『ちょっと!もっと早く助けに来なさいよ!!』
「子供の遊び相手になってたのか?優しいな」
『そんな訳ないでしょ!おもちゃにさせられてたのよ!』
そう言ってスノーは俺の方の上でフーッ!と怒る。
女の子は俺の方に居るスノーに向かって手を伸ばすがスノーはつれない。
しょんぼりする女の子に、俺は別腹内にある魔物の毛皮などを利用してスノーに似た猫のぬいぐるみを製作した。
それを女の子に渡して言う。
「悪いな、この猫はうちの子なんだ。だからそれで我慢してくれ」
「うん!ありがとうお兄ちゃん!!」
そう言って女の子はどこかに走っていった。
俺は肩に居るスノーの顎の下を撫でながら言う。
「ああ言う時はこういう感じでいなすのが上出来だろ」
『今のはあなたにしか出来ないでしょ。私に物を作る力なんてないわ』
「俺だってああいう使い方をしたのは初めてだよ」
何てやり取りをしている間にホワイトシーからの冒険者達を乗せた船がやって来た。
既にタコは追い払った後ではあるが、また魔物が現れないとは限らないのでそのまま護衛としてホワイトシーに向かうのだった。




