猫の真祖(仮)
「――っと言う訳で蛇の真祖であるアスクレピオスと同じように転生したジャックを仲間にしたのでした」
改めて朝食後に説明すると全員から拍手が起こった。
そして今後の事を考える。
「まずもうすぐ秋に入るので食糧調達をして冬を越してから改めて、猫と狐の真祖を解放しようと思います」
「その方が確実だろうね~。っと言うか猫のお姉ちゃん寒いのダメだから温かくなってから助けに行く方がいいかも」
「猫の姉さまは我がままですから、出来れば最後にして欲しいですね」
「トヨもそう思う。猫姉さんはよく私達を噛んできた」
どうも猫の真祖は妹達に好かれていないらしい。
………………蛇、鳥、魚……そりゃ噛むな。
「タツキお兄ちゃん。今失礼な事を考えなかった?」
「自然の摂理に関して考えていただけだ。それじゃ猫と狐の真祖は春になってからでいいか?」
『ちょっと待ったー!!』
ふと声が聞こえたが聞き覚えない声だ。
誰だろうと振り返って見ると、そこには白い1匹の子猫が居た。
白い毛並みに青い目をした猫だ。
ブルーアイズホワイトキャットである。
「何でこんな所に普通の猫が?ジャック、お前拾って来たのか?」
「拾ってないよ。と言うかこの森に普通の動物が居る訳ないでしょ」
言われてみればその通り。
まだスパーキングレオの子供と言われた方が説得力がある。
滅多に子供見ないけど。
「そんじゃこの猫どっから入って来たんだ?と言うか今喋ったのこいつか?」
『喋ったとはとんでもない言い草ね。私は真祖の三女、猫よ!恐れおののきなさい!!』
いや、お座り状態でびしっとされても威厳も何もないぞ。
得意げな表情ってのは分かるけど。
「と言うかこいつどうやって入って来たんだ?と言うかなんか変じゃね?」
『当然よ。これは私の思念体、意識だけここに飛ばしている様な感じだから』
「幽体離脱か?」
「幽体離脱は魂ごと肉体から離れるので危険な技なんですよ。これは本当に意識だけを魔力で再現した幻の様な物なので、あれは精神体です」
そうアスクレピオスが説明してくれるが、いまだに精神体と魂の違いがよく分からない。
何となく精神の核が魂って所までは分かるんだが……違いが微妙な所なんだよな……
『それよりも!私を早く助けなさいよ!こっちは創造神から連絡があった後、今か今かとずっと待ってたんだから!!』
「んな事言われてもな。こっちはこっちで冬支度始めないと」
洞窟状になっている事と結界のおかげで気温は一定だが、薪やら食糧やら確保しなければならないのだ。
去年は俺1人だったので冬眠すると言う形で凌いだが、アセナやヤタが冬眠するとは思えない。
ならば冬の間も食料を消費するし、料理のために薪なども必要だ。
それにもうすぐ秋に入ると言う時なのだから結構ギリギリである。
薪を集めて冬眠前の気性が荒くなっている魔物達を相手にしなければならない。
これ本当に大変なんだぞ。
「薪に関しては最悪アスクレピオスの魔法でいくつかの木を倒して乾燥してもらうから良いけど、食料に関してはかなり忙しいんだぞ。うちの子達グルメなんだから」
『そんなの知ったこっちゃないわよ。私達を助けるのが仕事ならさっさと助けに来なさい!』
そういう風に言われるとやる気をなくす。
俺はみんなに聞く。
「こいつ嫌いだから最後にしていいか?次は狐の真祖助けに行こうぜ」
「タツキがそうしたいなら良い」
「異論ありません」
「さんせー!」
「そうしよう」
「みんながそれでいいなら良いよ」
満場一致。
よって猫の真祖は助けるの後回しで。
「よーし。そんじゃ食糧調達及び薪の調達に行くぞ~。アセナ、ヴィゾーヴニル、ジャックは食糧調達。俺にヤタ、トヨヒメにアスクレピオスは薪調達に行くか」
『え、ちょっと。本当に無視しちゃうの?ちょっと待ってよ!ねぇってば!!』
にゃーにゃ―うるさい猫を飼うつもりはございません。
うるさいからちょっと外行こう。
全員で。
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それぞれ狩りだったり薪を持ってきたりして帰ってくると、神殿で泣き声が聞こえた。
『うぅ。なんで本当にどっか行っちゃうのよ~。私だって、早く自由になりたいだけなのに、早くあんなとこから居なくなったら……』
「居なくなったらどうすんだ」
そう声をかけると猫は俺に振り返って全身の毛を逆立てる。
『な、なによ薄情者ども!!私1人置いて行ったくせに!』
「冬支度はどうしようもないに決まってるだろ。人間の方はどうだか知らないが、俺達はそれなりに大変なんだよ。急に助けに来いって言われても、そうすぐ動けねぇんだ」
『それは……そうかもだけど……』
そう言って俯く猫。
そこにアセナが猫の目線に合わせて言う。
「猫。素直が足りない」
『姉。だって私基本的に人間の事嫌いだもん。弱っちい癖に数ばっかり多くて嫌になる』
「ん。でもタツキは強い。信用も出来る。だからちゃんとお願い言う」
『………………はぁい。姉』
そう言うと猫は俺の前に来て頭を下げた。
『お願いします。助けて下さい』
「いいよ。どうせ助けるつもりだし」
『む。さっきはダメって言ったくせにあっさり承諾した』
「アセナの妹は俺の義妹、助けない訳にはいかないだろ。それに最初からアセナの家族を全員助けるって決めてるんだよ」
『そう言えばさっきからアセナとかヤタとかって誰の事?』
「誰って、当然お前の姉妹達に決まってるだろ。俺は人間だから呼び名がないと何て呼べばいいんだか分かんねぇんだよ。だから名前を付けた」
そう言うと猫はそわそわし始める。
何か期待している様な、そんな感じだ。
『その名前って……私にもくれるの?』
「そりゃ当然。言ったろ?呼び名がないと俺の方が苦労するって」
『ふ~ん。そうなんだ。私の名前ってもう決めてるの?』
「単純なので良ければ」
そう言うと尻尾を揺らし始める。
何を期待しているんだか、俺が思い付くのはかなり簡単な名前ばっかりだ。
「スノーじゃダメか?」
「それってどんな意味です?」
アスクレピオスが聞いて来たので答える。
「何と言うか猫の毛並みって処女雪みたいに綺麗だったからさ、それで素直に雪から名前を取ってみた」
まぁ後はいつもの様に縁起のいい空想上の動物からもらったというのもある。
スノーライオンと言う空想上の動物が居る。
幸福だとか守護者とか様々な意味があるらしい。
そう思って名付けたのだが喜び方は半端だ。
『雪かぁ。寒いの嫌い』
「そんじゃ別な名前考えるか?」
『ううん。それでいい。こう言うのは最初に思い付いたものが良いって聞くし、綺麗って言ってくれたのは、その、悪くないし』
「そっか。それじゃ今日からスノーな」
猫の真祖の名前決定。
安易っちゃ安易だろうけど。
さてこうなると急いでスノーを助けに行く必要がある。期間は冬が本格的に入る前。
うん。圧倒的に時間が足りない。
この間アスクレピオスと子供達を助けるのに大分時間使っちゃったし、やるとすればヤタの時の様に電撃作戦しか思いつかないが、下調べが足りない。
どうしたもんかと考えていると、スノーが言う。
『あ、私の本体は後回しにしてていいわよ。冬にあの大陸に渡ったらそれこそ自殺行為だし』
「自殺行為?そんなに寒いのか?」
『そりゃもう当然よ。冬場は吹雪いている時期の方が長いし、何の準備もせずに着たら簡単に凍っちゃうわよ』
それはとても大変だ。
となる余計に電撃作戦を成功させなくては。
『そこまでしなくても大丈夫。今この大陸に向かってるから』
「は?向かってるってどうやって」
『この大陸と私の本体が居る大陸間で船が出てるの。今その船に私が乗ってるから港に迎えに来てくれればいいわ。本体は落ち着いている春か夏に改めて取り戻しに行けば大丈夫』
「スノーがそれで構わないなら助かるが……どこの港だ?」
『ホワイトシー。ドワーフの居る国から見て西の港よ』




