依頼終了
朝、子供達はヒノ先生が元気になった事で大喜び。良い事したな~っと思う。
ただすぐにアラドメレクの事も見つかりこの人誰?っと言うのも同時だった。
どう誤魔化そうかと思うとアラドメレクは言う。
「先生の冒険者時代の協力者。よく一緒に色んな魔物を倒したものよ」
流石悪魔、口がうまい。
ヒノ先生もあながち間違っていないと思ったのかアラドメレクに合わせる。
こうして冒険者時代の協力者、アラドメレクとして子供達と会ったのだった。
そしてヒノ先生も元気になったので俺達はヴァロンランドに帰る事にした。
その事を報告するために王様と謁見する。
「左様か。そちらの女性も無事悪魔の呪縛より解き放たれたか」
そう言えばあの時アスクレピオスが叫んだから悪魔の事バレてんだよな……
まぁ俺がぶっ倒した事になってるから問題ないけど。
「ちょっと大変でしたがどうにかなりました」
「そうか。そして私は精霊女王様より多少の事情は聞いている」
あの口の軽い女王から多少、ね。
俺は何を言われるのだろうと少し身構える。
「汝ははっきりと言うと世界に背く行動ばかりをしていると聞いている。なのに何故、子供達を助けた。何故ヒノ教諭を助けた」
何故?何故と聞かれたら……
「それは同情ですね」
「同情?同情だけで救ったのか?何かしらの考えがあったのではなく?」
「私はあまり口がうまくないのでうまく伝わるか分かりませんが……子供達が大人になれずに死ぬと言うのはかわいそうだと思ったからです。それにヒノ先生に憑りついていた悪魔に関してはあの時初めて知りましたし、彼女を失っては子供達が救われても一生気に病む事になってしまうと思ったので助けました」
すぐに言えるのはそのぐらいか。
特に助けたからこうしてもらえるかもしれない、ああしてくれるかもしれない。みたいなものは一切ない。
だって相手は子供なんだから対価として何かを要求するとしても応えられるとは思えないし、もしそう言う事が目的だと言うのであればもっと別な誰かを助ける方が得だろう。
そう言った打算で動くのではなく、ただかわいそうと言う感情だけで動いたのだからそれは同情と言っていいのではないだろうか。
そう言うと王様は少し俺を見てから言う。
「……そうか。ならば彼らは運がよかったと考えるべきだな。彼らは運良く助かった」
「そうですね。子供達は運よく俺と出会い、助かったと言うだけです」
おそらくそれでいいのだろう。これで王様の謁見は終わった。
そう言えば妖精女王は珍しく王様の肩の上にいなかったが、どこにいるんだ?
面倒だが協力してくれたのだから一言ぐらい言うべきだろう。
そう思っていたら子供達相手に泣きながら抱き付いていた。
と言っても妖精女王の方が小さ過ぎるので、引っ付いているっと言った方が正しい気がするが。
「うえ~ん!元気でね!元気に生きるのよ!!」
子離れできない親か?そんな感じのセリフに聞こえた。
ヒカルとカエルは戸惑いの方が大きそうだが、トキは優しく抱き締め返しているせいか妖精女王は余計に泣いている。
それを見守るのはヒノ先生。
アラドメレクは見当たらない。こっそり王城に入った様な物だからこっそり外に出たんだろう。
「何してんだ?精霊女王」
「だっで!この子達今日学校に帰っちゃうんでしょ!おわがれぐらい良いじゃない!!」
「それは別に良いんだが……まぁとりあえず俺からも世話になった」
「ぐす。あんたに言われも何も嬉しくないわよ。あんたはさっさと帰れ!!」
「そんじゃみんな、帰るぞ~」
「あー!子供達との別れはもうちょっと、もうちょっと待って!」
そんな精霊女王の声に手を振ってさよならする子供達。
ヒノ先生は1度頭を下げてから子供達の手を握る。
王城を出て街はずれの祭儀場の管理人にもお別れを言って国の外に出るとアラドメレクがカッコいいポーズを取りながら言う。
「遅いわよ」
「いや、なにカッコつけてんの?」
「こう言うシーンは格好つける物だとあなたの知識から学んだんだけど?」
「それは漫画の中だけだ。なんで壁に背を付けて両腕組んでる?それ男がやるポーズじゃね?」
「気にしない気にしない。それじゃこっちに来た時と同じように帰るんでしょ?」
「まぁね、その方が早いし。という訳でちょっと歩くぞ」
そしてまたソニックドラゴンに乗って帰る。
席順は俺とトキ、ヒノ先生とヒカル、アラドメレクとカエル、アスクレピオスとジャックでソニックドラゴンも4体出した。
そのソニックドラゴンの上でトキは言う。
「先生はこれからも先生でいてくれるの?」
「残念だがここまでだ。仕事が終わったから家に帰らないと」
「そっか……そうだよね」
残念そうに言うトキ。
そういやこの子には精霊ではなく神様が憑りついたと聞いているが……
「トキ、体調が悪いって事はないんだよな?」
「ないよ?私どこか変?」
「いや、その後の体調の管理とかアスクレピオスに任せっきりだったから一応と思ってな」
そう言ってごまかす。
実は精霊じゃなくて神様が憑りついてるから気にしてますとは言えない。
「先生……私たち大人になれるんだよね?」
「そうだな。順調に育てば大人にはなれる。でも勉強とかしないと大変だぞ?」
「分かってるけど……聞きたいのはそれじゃなくて……先生は先生を辞めちゃうの?」
上目遣いで聞いてくる。
そう聞かれると嫌がるだろうが……ちゃんと言っておかないといけない。
「そうだな。お前達を救って俺の目的も果たした。もうヴァロンランドでする事はないな」
「帰っちゃうの?ずっと先生してよ先生」
「悪いが家に色々待たせてる相手が居るから帰んないとダメなんだよ。いい加減帰んないとどうなる事やら……」
大袈裟に怖がりながら言うとトキは俺の腕を引っ張った。
それはトキを後ろから抱き締める様な感じで、トキは俺をじっと見ながら言う。
「お家どこ?私も付いてく!」
「止めとけ止めとけ。俺ん家危険な場所にあるからトキなんてあっと言う間に魔物に食われちまうぞ」
「でも先生が守ってくれるでしょ?」
「守るのは簡単だが、これからは自分で頑張らなくちゃいけないんだよ。俺が出来るのは無事に大人になれる様にするところまで。後は自分で頑張っていかなくちゃならない」
諭すように言うとトキはポロポロと涙をこぼす。
そして涙交じりの声で言う。
「ヤダぁ……先生居なくなっちゃヤダぁ。先生はずっと先生だもん。ずっと学校で一緒に居るんだもん!」
何と言うか……初めて我がままを言われたような気がする。
確かに店の露店とかでは欲しい物を選んだりしたが、基本的には俺が買ってあげると言ってからだ。
許可を与えられずに我儘を言うのは初めてだ。
でもその我がままを聞いてあげる訳にはいかない。
優しく抱き締めるが、ちょっと強めに抱き締めながらトキの涙を拭う。
それ俺は何て事のない事を言う。
「別に学校を辞めたからって先生じゃくなる訳じゃない。先生って呼びたかったらそう呼び続ければいい」
「でも……帰っちゃうんでしょ?」
「帰るさ。俺には俺の家があるし帰ってくるのを待ってくれている人も居る。でも俺達の縁が消える訳じゃない」
「縁?」
「そう、縁だ。この縁はお互いに嫌いにならないと消えない縁だ。だから俺はトキの事を嫌いにならないから消えない。もしかしてトキは俺の事嫌いか!?」
「そんな事ない!先生の事大好きだよ!!」
「ありがとう。だからまた会いに来る。そん時は俺の仲間も紹介したいからお利口さんで待ってろよ」
「……ん。分かった。先生の事待ってる」
「ああ、ちょっと待ってな。仕事終わらせたらまた会いに行くさ」
そう言うとトキは俺に寄り掛かってきた。
安心したのだろう。それに子供1人寄り掛かってきたぐらいどうって事ない。
今回は朝早くに移動し始めたので昼休憩なしで飛んだ。
そして丁度昼頃にヴァロンランドの近くに降り立った。
ソニックドラゴン達を別腹内に収納しながら子供達は、ヒノ先生と意外にもアラドメレクと手を繋いでヴァロンランドに向かって歩く。
そういや降りた時にカエルがスゲー顔真っ赤にしてたな。
アラドメレクが何かしたんだろうが……魔法やスキルによる物ではないので証拠がない。
からかっただけなら良いんだが。
「ところでお兄さん。私、暗殺者だけど影薄すぎない?忘れ去られてない?」
「覚えてるぞ~ジャック。そういやお前今後どうする?俺とアスクレピオスに付いて行くか?それとも学校に入学してみる?」
「最後までお兄さんに付き合うよ。帰るって言うのは聞いてたけど家はどこなの?」
「あの森の中央辺りだ。神殿を改造して家みたいにしてる」
そう指を指しながら言うとジャックはワクワクした様な表情を見せながら言う。
「確かあそこって魔物がいっぱい居るところだよね!!うわ~楽しみだな~」
「家に来ても大丈夫そうだな。アスクレピオスも大丈夫か?」
「はい。姉妹達が居るのであればそこに赴きます」
「それじゃ俺達は今後も一緒に行動するって事で」
「だね」
「ですね」
お互いの今後を確認してから俺達はヒノ先生達の後を追う。
門をくぐる際にそういやアスクレピオスとアラドメレクはどう誤魔化そうと思ったが、自力で人間のふりをしてあっさりと通った。
具体的に言うと人間が持っている魔力に限りなく似せる事で警報が鳴らない様にしていたらしい。
流石知識担当。
そして俺達は久しぶりの学校に行き、全員で校長室に居た。
理由は今回の依頼終了とアラドメレクの扱いの相談だ。
「依頼の成功を確かに確認しました。ですが……本当に報酬はこれっぽっちでよろしいのですか?」
「今回は運よく新しい仲間も出来たので構いません。それに依頼内容を変更させたのは俺ですし、このぐらいで良いんですよ。それからアラドメレクをよろしくお願いします」
今回の依頼報酬は銀貨23枚だ。
2ヶ月分の教員としての給料だけにしてもらった。
金は使いきれない程に持ってるし、これ以上の金は要らない。
その代わりにアラドメレクを学園で引き取ってもらう事にした。
引き取ってもらう、と言っても何もさせないはずがない。
俺が居なくなる事で出来る副担の穴をアラドメレクで埋めてもらう事にしたのだ。
ヒノ先生も副担が居た事で結構楽になっていたらしく、俺が抜けると子供達の相手が少し大変だそうだ。
それなら暇そうにしている悪魔を使おうと決めたのである。
どうせアクセサリーが欲しいと言っても金は必要。働き口を用意してやる代わりにヒノ先生の手伝いをしろと言ったのだ。
アラドメレクは最初こそ給料が少ないとか、もっと良い所で働きたいと言っていたが、ヒノ先生が睨むと大人しくなった。
いつの間にそんな力関係になったんだ?無理やり閉じ込めてたらしいし、実は何も変わってなかったり?
「こちらとしてはありがたい限りなのですが、その……アラドメレクさんにはお願いが」
「何かしら?」
「その服装は止めていただけませんかね?」
「……え?」
「この学園には主に幼い子供達に授業を行っています。現在の服装では少々派手過ぎると言いますか、あまり子供達に悪い影響を与えないようにいていただきたいのですが……」
あ~それか。
現在のアラドメレクの服装は俺と戦った時と同じ踊り子の様な服装。
なのでへそが出ているとかそう言うのひっくるめて露出が激しい。
確かに教師がそんな格好してたら怒られるだろう。
「服装ぐらいいいでしょ?」
「いけません。教師としてもっと露出を抑えた物をお願いします」
「露出を抑えたって具体的には?」
「私の様にスーツでお願いします」
有無を言わせない態度で言う校長先生にアラドメレクは折れた。
校長先生強い。
っとまぁこんな感じで俺の依頼終了と同時に俺が教員を辞めるのとアラドメレクが新しい教員になるのが同時に進み、無事俺はただの冒険者に戻ったのだった。
そして俺が去る時になぜか来たのがマルダと騎士団長さんだ。
「一体どっから聞きつけた」
「門の前に居る衛兵の人に聞いたんですよ!仕事が完全に終わったから帰るって!挨拶ぐらいさせて下さいよ」
「そうだ。君はこの国の英雄なのだから見送りぐらい必要だろう」
あ~すっかり忘れてた。
そういや俺英雄だった。
「だからって家に帰るだけですよ?そんな慌てて来なくてもよかったのに」
「今度いつ会えるか分からないじゃないですか。ですからちゃんと挨拶はしておきたいんです」
そう強くマルダに言われると言い返せない。
それじゃっと思いながら俺は校門の前で並ぶ全員に向かって言った。
「お世話になりました!」
「元気で頑張ってください!」
「今回は本当にありがとうございました!」
「先生またね~!!」
こうして俺の長い旅は終わった。
アスクレピオスとジャックを連れて家に帰ろう。




