精霊召喚 カエルの場合
勇者の契約が終わった2日後、ようやく俺達の番だ。
昨日のうちに子供達に相談させて1番最初に契約をするのはカエルからになった。
この中では年長であり、自分が先陣を切ると言った雰囲気がある。
そんな身構えなくても俺とアスクレピオスなら問題ないはずなんだけどな。
と言っても俺達も小さな実験はしていても大規模な実験はしていない。具体的に言うと強制的に上位精霊を召喚する実験はしていない。
出来た実験は魔方陣による精霊の属性の指定まで。一応中位精霊までは召喚に成功しているが上位精霊には意思や感情があると言うのだからどうなるのか分からない。
あの精霊女王も手伝うと言っているがどれぐらい役にたつのかは不明だ。
「あんな見た目でも一応わたくし達とそう変わらない年ですよ。あんなのでも」
「あんなのあんなのって言わないでよ!!これだから真祖は……!」
ちなみにもう既に王城に着いており儀式場に向かっていた。
ついこの間勇者が召喚に成功したらしいが予想通り光の上位精霊だったらしい。
まだ精霊召喚成功後に勇者と会っていないがどれぐらい強くなったのだろうか?あまり興味ないけど。
ちなみにこの会話はご都合主義の魔法で王様や周囲の人間には聞こえていません。
「なぁ精霊女王。素で聞くが本当にお前って役にたつの?」
「むっかー!!バカにして!!いい、私は精霊の中で最も上位の存在で限りなく神に近い精霊なのよ!なのにあんたったらろくな敬意も払わないで……」
「仕方ないだろ。全然強さを感じないんだから」
「しょうがないじゃない!私は大自然のバランスを司る調停者なの!戦闘とかは魔王が龍皇にでも任せておけばいいの!!」
「調停者?」
初めて聞く言葉なのでアスクレピオスに聞いてみる。
するとアスクレピオスは自信なさげに言う。
「わたくし達が封印された後の話の様だから自信はありませんが、どうやら神々の代行者のような立場にいる存在達の様です。それが今ティターニャが言った精霊女王、龍皇、魔王の3柱が人類からそう言われているようです」
「は~。ちなみにアスクレピオスから見た精霊女王ってどんな存在?」
「そうですね……自然のバランスを司っているだけですね。戦闘能力はありませんし、まさにただの管理者とでも言いましょうか?」
「その仕事がどれだけ重要なのかほんとに分かってる!?私が居なかったらこの世界はあっと言う間に崩壊するわよ!精霊の居ない世界で人類が生きていけると本当に思ってるの!!」
「生きてけそうな感じがするけどな。俺が元々いた世界なんて精霊は空想上の生物だし、幻想だし、妄想だし、伝説だし、そんなもん意識してなかったと思うな~」
「……え、それホント?居ないの?精霊?」
「居たとしても見た事はない。居ると言えるのは子供内だけだな。大人になっても言ってる奴は現実と妄想が区別できない奴扱いされる」
俺の世界に精霊って居たのか?
確かに建設現場とかでは事故が起こらない様に祈祷とかしてただろうけど、本当に居るって自信を持って言える奴はどれぐらい居ただろう?
なんて考えていると精霊女王は器用に空中で四つん這いになってうなだれていた。
「そんな……私達精霊はどこにでも居て、自然環境を守って来たのに……見た事ないって、幻想だなんて……」
そんなに凹む事か?
ファンタジーは全てフィクションです。っで育ってきた俺にはよく分からない。
とりあえずアクスレピオスに確認する。
「俺そんなに変な事言ったか?」
「確か……タツキ様の世界では魔法は発達しなかったと考えてよろしかったのですよね?」
「そうだな。宗教的なものもあったかも知れないけど、こっちじゃ科学力の方が上で一般的。代わりに魔法とかはさっき言ったように空想上の産物として扱われてる」
「となると仕方がないのかも知れません。精霊も信仰心が必要です。自然がなくならない限り消滅する事はありませんが、姿が見えない。聞こえない。感じられないなどはあるかも知れません」
「ふ~ん。信仰心ね」
日本じゃ神様居るだろけど信仰するかどうかは自由じゃない?って感じだからな……
第一次産業関連の人が1番信仰深いんじゃないか?っと個人的には感じている。
土地神とか水の神とか、豊作の神とか色々祀ってそうだし。
な~んか半端な感じがする気がするんだよな~日本の信仰心。
なんて会話をしながら進むと儀式場に着いた。
おしゃべりはここまでだ。ここからは本気出す。
以前にも下見で訪れた儀式場。
ここで成功させなければ子供達に未来はない。
「ヒノ先生。子供達を落ち着かせるのは任せてもいいですか?」
「分かりました。ちなみに本当にお2人だけで大丈夫ですか?」
「大丈夫です。俺は元々アスクレピオスの足りない魔力を補うためですから、どっちかっていうとアスクレピオスの方が頑張るだけですね。ま、俺は魔力切れを起こさない様にに頑張りますよ」
「タツキ先生……」
カエルが少し不安そうに俺を見上げる。
俺はそっと笑ってからカエルの頭をガシガシと撫でながら言う。
「安心しろ。確実に俺達が助けてやる。だから安心して呼び寄せな」
「はい!」
「ヒカルとトキもカエルの事応援してやれよ」
「わ、分かってるって!」
「カエル頑張って!」
「うん。そうだね。頑張らないと」
そう言ってカエルは儀式場の真ん中に向かって歩く。
俺とアスクレピオスはその祭儀場の制御をおこなう場所に向かった。
魔力を送る俺は祭儀場に触れて魔力を流し始める。
アスクレピオスは前に見た三次元魔方陣を展開。精霊を呼び出す準備を整えた。
カエルは中心の少し手前の所で止まり、片膝を付いて祈る。
精霊女王はそのカエルと対面するような形ではあるが精霊女王も中心から少し離れた位置で止まった。
それを見てアスクレピオスは魔方陣を発動させた。
祭儀場を中心に立体で動く魔方陣はとても美しい。光り輝く魔方陣の文字が星空の連続写真の様に線を引きながら動き回る。
まだ俺の魔力を多く消費させていないが、アスクレピオスは視線で俺に伝えた。
俺は頷くと俺の魔力が一気に消費される。
感覚としては急激な空腹と言うべきか、はたまた体内から何か大切な物を奪われる感覚とでも言えばいいだろうか。
自分の意志とは関係のない魔力消費は想像以上に背筋が凍る。
だが俺の溜めまくっていた魔力の消費は、丁度5割を超えた所で止まった。
召喚に成功したのかと思い祭儀場の中心を見ると、そこには小柄な男性のような姿が見える。
あれは……ドワーフか?
小柄な身体に髭だらけの顔、背負う巨大なリュックには金づちやのこぎりなどがぶら下がっている。
細かい物を見るためか、額にはゴーグル型の眼鏡の様な物を装着している所を見ると機械技師と言った方がしっくりくる。
そしてドワーフによく似た精霊は口を開いた。
「俺を無理矢理召喚んだのは小僧、貴様か」
無理矢理召喚した影響なのか精霊は不機嫌そうだ。
カエルは顔を恐る恐る上げると言う。
「はい。僕がお願いしました」
「妙な言い方をする。直接召喚したのは貴様ではない様だが、何の用だ」
「ぼ、僕の中にある魔力の制御を手伝って欲しいんです。お願いします」
そう言うと精霊は額のゴーグルをつけてカエルの何かを見る。
見終えてゴーグルを外すと、精霊は言う。
「なるほど。自身の許容を超えた魔力があるためにその制御を我々精霊に任せたいと」
「はい……お願いします」
「………………はぁ。仕方あるまい。では契約するとしよう」
その返答に俺は胸をなでおろした。
これでまず1人だ。
精霊は幻影の様に姿が薄くなったかと思うとカエルの中に入り込んだ。
アスクレピオスに目線を送って契約完了したのか確認すると、笑顔で頷いた。
契約に成功したカエルはヒノ先生やヒカル、トキに祝福される。
そして最後に俺を見て泣き付いて来た。
「先生……ありがとうございます。ありがとう……ござい……ます」
「男に泣きつかれも俺は困る。今日は疲れたから帰るぞ。てなわけで精霊女王明日もよろしく」
「え!?明日も手伝わないとダメなの!」
「創造神にチクるぞ」
「手伝わせていただきます!」
最初っからそれでいいんだよ。
ああ、それにしても腹減った。




