勇者パレード
なんて思いながら次の日。
街は勇者を迎えるためにお祭り騒ぎ。
こういう物を見ると勇者は本当に人類の希望なのだなっと思う。
本格的に始まるのは勇者が来てからだが気の早い屋台は店を開いている。
祭りの食べ物と聞くと焼きトウモロコシとか焼きそばとか思い付くが、この世界では屋台と言ったら焼き鳥なのだろうか?
中には牛肉を串に刺している所もあるし、串焼きがっと言う感じだろうか?
今の時間は朝10時。
昨日は暗くなっていて気付かなかったが既に街のいたるところに勇者を歓迎する飾り付けがされている。
中には熱狂的なファンが居るのか、タペストリーの様な物を飾っている場所もある。
「やっぱり勇者様ってすごい人気なんだな!!」
「まるで有名なシンガーが来るときみたいですね」
「先生は勇者様と会った事ある?」
ヒカルが興奮していい、カエルはそう言いながら圧倒され、トキが無邪気に聞く。
「まぁ一応な。イケメンだったぞ」
「やっぱイケメンなのか~。勇者になるのにはやっぱり顔もよくないとダメなのか?」
「その前にみんなに認められるように頑張る所から始めないとダメじゃないか?名声はおまけみたいについて来る」
「どこで会ったの!?」
「前に言ったリゾートで会った。と言っても遠くから見ただけだけどな」
多分勇者と一緒になる事はないだろうから、あまり関係ないと言っても大丈夫だろう。
本当は友達とか色々言われてるけど。
「お兄さん!!あれ買って!!」
そう言うのはジャックだ。
ジャックが俺の服を引っ張りながら指差すのは串焼きを売っている屋台。
「あれって……まさか串焼きか?朝飯食ったばっかりだろ」
「その隣。射的やってる!」
そう言われてとなりを見ると射的……でいいのか?
コルク銃ではなくパチンコの様に見えるが。
「まぁいいか。ほれヒカル達もしたいだろ?一緒に行くぞ」
「え!いいのか!?」
「ヒノ先生が居ない内に遊んどけ。金は俺が出す」
「それじゃ先生行こうぜ!!カエルも来いよ!!」
「みんなで誰が1番多く取れるか競争しよ!」
元気に遊ぶのはヒカルとカエルとジャック。
逆にこういう場でもクールと言うか落ち着いてると言うか、それがトキとアスクレピオス。
2人とも俺の服を掴んで離さない。
「お前達はいいのか?」
「わたくしは遠慮しておきます。ああ言うのってボッタクリの店なんでしょ?」
「私はお祭りを見てる方が楽しいからいい」
アスクレピオスはともかく、トキはもうちょっとはしゃいだ方がいいんじゃないか?
子供は元気に遊ぶものっと思っていたが、大人しくしてる方がいいと言うのであれば好きにさせておけばいいか。
そんな感じで午前中は子供達と祭りを楽しんだ。
射的の他にも遊ぶ屋台はあったのでそこで金を使いまくった。
基本的に銅貨で払ってばかりだったのであまり消費した感じがしないが、こういう所で遊んでいるといつの間にか金がなくなっているのはよくある話。きっとかなりの金額を消費したはずだ。
そして子供達に思い出として露店で買ったアクセサリーもある。
それぞれ好きな物買ってあげ、ヒカルは剣、カエルは鎧、ジャックは双剣でアスクレピオスは杖。最後にトキは蝶のアクセサリーを上げた。
とても喜んでいる様で大事そうに両手で握りしめる。
「先生、ありがと」
そう言ってはにかむトキはとても可愛らしかった。
こう言うもので喜ぶのは女の子らしいと言える。
今貰ったアクセサリーで早速戦いごっこをヒカルとし始めるジャックは女の子らしいとは言えない。
「あまりこう言うのは良くないと思いますが……大目に見ましょう」
そうしている間にヒノ先生登場。
午前中は体調不良で休んでいたのだが、今じゃ顔色も悪くないし大丈夫そうだ。
勇者が来る前にみんなで腹ごしらえを済ませた後、みんなでいい場所を取ろうと頑張ってみる。
既に国の人が交通整理をしており、町どころか国中で勇者を一目見ようと集まっていた。
これは何かあれに似てるな。
オリンピックでメダル取った人たちのためのパレード的な雰囲気に似てる。
国中の人達が集まって勇者が来るのが今か今かと待ちわびる。
「よく見えねぇ……」
「これは厳しいですね」
「……人いっぱい」
ただ問題はヒカル達がよく見えない事だろうか。
そんなに離れている訳ではないが最前列と言う程でもない。どうしても前の方に居る大人達が邪魔でよく見えない。
なので俺は手っ取り早くヒカルを肩車し、トキを抱き上げた。
「これで見えるか?」
「スゲー!滅茶苦茶見える!!」
「先生大丈夫?重くない?」
「子供2人ぐらい何ともないって。それからカエルには踏み台な」
「ありがとうございます。でも魔法で作った物を踏み台にして大丈夫なのかな……」
正確には『変質』で急遽用意した踏み台である。
地面を盛り上げてカエルが乗ってもぐらつかない、壊れない頑丈な作りなのだ。
もちろんこのパレードが終わったら元に戻しておく。
そんな様子を見ていたヒノ先生が微笑ましそうに言う。
「そうしていると本当の親子のようですね」
そんな事を言うがどう見てもそれは違うだろ?
俺の遺伝子を引き継いだ子供がイケメンだったり、美少女になるはずがない。
でも上手い事アセナの遺伝子が勝ってくれればもしかしたら?
ま、その結果は遠い未来に任せれば分かるか。
どのぐらい遠いのかは分からないけど。
そしてヒノ先生はどうしても子供達を俺に任せたいみたいだ。
でも俺にはそんな暇はない。
真祖開放を行っていれば自然と危険に巻き込む事になるし、人の世界で生きていけるとは思えない。
俺はその辺ずぼらだからアセナ達さえいればいいと思うが、子供達には出来るだけ様々な選択肢を得られる様にする。
その事を考えると俺の元に来るのはデメリットばかりになる可能性がとても高い。
だから俺が出来るのは子供達がきちんと成長できるようにするところまで、それ以上の事は人の世界に身を置く人たちに任せるしかない。
俺はこの仕事が終わった後身を引く必要がある。
ただの他人と言うのは難しいだろうがそれでもあの森に連れて行くわけにはいかない。
なんて考えている間に遠くから歓声の声が上がった。
おそらく勇者が来たのだろう。
子供達は勇者を見ようとして、じっと門の方を見始めた。
そして俺の頭の上でヒカルが言う。
「見えた!勇者様だ!!」
「あ、居た!!」
勇者は屋根のない馬車に乗ってやってきた。
オープンカーの馬車版?そんな感じがする。
「隣には聖女様も居ますね」
聖女?
そう言われて勇者の隣の人を見た。
そこには白いシスター服を見た女の子が居た。顔に薄い布をかけているが、顔の輪郭はちゃんと分かる。
ただシスターはあまり肌を露出させない物なのか、頭から足の先まで服で覆われている。
しかも大きめなのか身体の凹凸をはっきりさせないためか、体型もよく分からない
あれが勇者の彼女か……リアルヤンデレ彼女。
服のせいかぼんやりとしか見た目は分からないが勇者は美人って言ってたな。
思い出してみるとハイスペックヤンデレ彼女なんだよな?
家事が得意で美人。
俺の中ではヤンデレと一途は紙一重だと思っているが……実際の所はどうなんだろう?
今度勇者に会ったら聞いてみよ。
流石に今回はダメだろうけど。
そう思っていると勇者と目が合った。
勇者は驚いた様に一瞬驚いた表情を作ったがすぐににこやかな表情に戻った。
それを見た子供達は「俺に向かって手を振ってくれた!」「きっと僕ですよ!」「私かも!」っと言う。
微笑ましいな~っと思ってたら嫌な気配を感じた。
それは隣に居る聖女からだった。
布越しだと言うのに俺の事を見てるとはっきり分かる。
布のせいで目の色までは分からないが、相当ヤバい目で見られている気がする……
最終的にその視線は馬車が通り抜けるまで続いた。
そして俺は素直に思う。
あれマジのヤンデレかも知れない。
怖い女に目を付けられたと思いながら、俺は勇者を一目見て満足している子供達をヒノ先生と共に連れて帰るのだった。




