子供達と精霊女王
おチビ達は眠そうだったのでさっきと同じ座り順でソニックドラゴンに乗って移動を再開する。
落とさない様に抱きかかえた状態で2時間近くとは意外と大変だ。ヒノ先生には一応おんぶひもを渡しておいたのでカエルに関しては背中でくっ付いている。
流石に男の子2人は大変そうだったので俺が代わろうかと言ったのだが問題ないと言われてしまえばどうしようもない。
1時間ほど飛んだところでトキは起床、男の子2名は爆睡中。こんな調子で夜ちゃんと寝れるんだろうか?
「おはよ~先生」
「おはよトキ。あと1時間ぐらいでユーラニアに到着するぞ」
「ん~?今何時?」
「大体……午後4時かな。もうちょっと飛ぶけど寒くないか?」
「寒くないよ。ず~っと先生に抱き付いてたから温かい」
まだ寝ぼけているのか、トキは眠たそうだ。
ヒノ先生の方は……まだ起きていないらしい。むしろこのまま着くまで寝てる方が安全か?
なんて思いながら飛ぶことさらに1時間、ユーラニアが見えてきた。
もう既に日が陰ってきているのでちょっと急ぐ。
ユーラニアに着いたら着いたで国に入る手続きとか色々あるし、王様にも報告しないといけない。
まぁ王様に報告するのは明日にしてもいいんだけどさ。
それにソニックドラゴンを国の近くに着陸させる訳にもいかない。
どうしても少し離れた場所で降りないと騒ぎになってしまう。
なので少し離れた所で俺達は降りた。
森の中にぽっかりと空いた場所に降りた俺達は子供達をそっと降ろしながら起こす。
トキはともかくとして、ヒカルとカエルはソニックドラゴンが降り立った衝撃で目が覚めたようなものだからまだ半分寝ている。
「ヒカル、カエル。そろそろ起きなさい」
「あれ?ここどこ?」
「え~っと?到着したんですか?」
まだまだ眠たげな2人を置いておいて、俺はソニックドラゴン達を別腹内に収納する。
トキは既にソニックドラゴン達に慣れたからか、俺の中に収納する前にバイバイと言いながら手を振っていた。
優しい子だな~トキは。
まだお眠な男子2人はヒノ先生が手を繋ぎ、俺はトキと手を繋いですぐに移動する。
このユーラニアの門限は午後6時、それを超えると決して扉を開いてくれないのだからちょっとだけ急ぐ必要がある。
「ここからだとどのぐらいで門にたどり着きますか?」
「大人なら10分、子供なら15分ぐらいか?でもあれだからな」
ヒカルとカエルは寝起きのせいで欠伸をしながら歩いている。
この調子だと30分はかかるかも知れない。
そう言った事を考えると子供達の歩く速度に合わせると、たどり着く前に門が閉じられてしまう可能性も否定しきれない。
と言ってもまだ1時間余裕があるので大丈夫だろう。
と言うか手を引いて歩いている間にヒカルとカエルは目を覚めしてはしゃいでいる。
目が覚めてすぐ動けるってこれが若さなのかな。
ちょいとはしゃぎながら歩いているとユーラニアに門が見えた。
まだ門は開いており、身分証明を見せてあっさりと通れると思ったのだが。
「タツキ様ご一行ですね。こちらに馬車を用意しております。こちらにお乗りください」
「それはどういう事でしょう?」
「王よりご命令で1度精霊を宿したい者を見ておきたいと」
「この時間ですが?」
「この時間でもです。当然お目通りの後は街はずれの祭壇までお送りいたします」
予定にない事が組み込まれちまったな。
でも王命となれば仕方がない部分もある。協力してもらう立場としては断り辛い。
「あ~悪いが晩飯は遅くなりそうだが大丈夫か?」
「まだ起きたばっかりだから大丈夫だぞ」
「私も平気」
「と言うか着いてすぐ王様と会うってどうしてですか?」
カエルが当然の質問をする。
「簡単に言うと精霊を召喚するための場所は王族が管理している物だから、どうしても王様から許可をもらわないとダメだったんだよ。召喚する場所そのものは別な場所にもあったんだが、王族が管理している場所が1番都合がよかったんだよ」
そう言うとヒノ先生は言う。
「この国の王家が関わっているのなら先に言っておいてほしかったです。それなら礼服も用意しなければならなかったのに」
「その辺は学校の制服で十分だろ。それより仕方ないのでお城に行きましょうか」
仕方ないの一言で済ませてしまう俺にヒノ先生はため息をつく。
王命では仕方ないと言う事で子供達も素直に馬車に乗る。
そして少し馬車に揺られて再び謁見の間、そこには既に王様と精霊女王が居た。
俺とヒノ先生は片膝を付き、子供達もそれを真似して膝を付いた。
「立ってよし」
そう言われたので立つ。
すると王様よりも精霊女王が飛んできて子供達をじろじろと見る。
俺はその姿を横目に見ながら王様に聞く。
「王様、どうかなさいましたか」
「どう、とは」
「確かに彼らを見る必要はあったかも知れませんが、これほどまでに早く動く必要はなかったのではないでしょうか」
俺がそう聞くと王様は言う。
「明日には勇者殿が参られる。その前にその子供達を見定めておきたかっただけの事。精霊女王様、彼らはいかがでしょう」
「うん。この子達から嫌な気配はしないよ。この人間やめちゃった感じがする人間と比べるのもバカらしいぐらい」
そう言われたので飛んでいる虫を潰す要領で精霊女王を潰した。
謁見の間に叩いた音が響き渡る。
そして哀れな女王は俺の掌の上で目をまわしていた。
「きゅう」
「口は禍の元ってことわざを知らないみたいだな。これに懲りたら無駄な事は言わない事だな」
「「「女王様ー!!」」」
王様が誰よりも大きく叫んだ。
ギャグマンガみたいに潰れた女王に兵士が駆け寄る。
俺は兵士に女王を渡して手を叩く。
パンパンと汚れを落とす様に。
「せ、先生?大丈夫なの?」
「大丈夫だぞトキ。ただ……鱗粉みたいなのが手に付いた」
それを何度も落とすように手を叩いていると、復活した女王が飛びながらキックみたいに落ちてきた。
俺は鱗粉がまたつくのが嫌だったので、デコピンの様にして女王の腹をピンとした。
そして王様の元に飛んで帰る女王。女王は腹部を抑えて痛がっている。
「いくらその女王様が信仰の対象と言っても、もう少し厳しくした方がいいじゃないですか?」
「……善処する」
ダメそうだなっと感じながら俺達はその場を後にした。
カエルからはあんなのが自分達を助けてくれるのか疑問に思っている様子。
あんなのを見た後じゃ仕方ないかな。




