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とんぼ返り

 端的に言うとおチビ達の買い物に結構時間を食った。

 なんせ召喚された後、この学園にほぼ身一つで来たようなものだったらしく下着やら何やら以外は思い付く限りほぼすべて必要だった。

 服だって学園の制服ばかりで私服っぽい物が一切ないし、思っていた以上にせまっ苦しい生活を送っていたように感じる。


 そんな感じでヒノ先生と協力して旅行道具一式を全部俺の金で買った。

 後から学校側で払ってもらうようにすると言ったが俺は断る。だって有り余っていた金を少しでも消費するためでもあるのだから。

 という訳で買い物は夜までかかり、おチビ達は疲れ果てて眠っている。

 明日がとても楽しみだ。


 -


 翌日。校長先生に一言挨拶してから俺達はヴァロンランドを出た。

 大人2人と子供3人の小旅行である。

 既に子供達はワクワクが止まらないのかヒカルが元気に走っている。


「ヒカル!先に行ってもどうしようもないよ!」

「でも旅行なんて初めてだぜ!しかもすごく遠い国だ!!」

「だから先生が用意してくれた乗り物に乗るんでしょ!ですよねタツキ先生?」

「乗り物ではないがな」


 含みのある言葉にカエルは眉をひそめる。

 カエルはヒカルを止めるのに夢中だがトキは俺に聞く。


「どうやってその国に行くんですか?」

「ちょっとした裏技使う。結構目立つが……まぁ攻撃しようとはしないだろ」

「あのタツキ先生?その話し方だととても不安が残るのですが」

「大丈夫ですって。安全運転で行きますから」


 子供達の安全のためかヒノ先生も聞いて来る。

 子供達に何かあったら容赦しないという気迫を感じるのだが……これが1番速いんだよね。

 カエルがはしゃぐヒカルを捕まえて戻ってきた。

 ヒカルを引きずりながらカエルは俺に聞く。


「それで何で行くんですか?馬車だとは思いますけど」

「チッチッチ、甘いなカエル。ファンタジー世界に来て飛行するロマンを忘れてはいけない!!それが馬車だと?そんな物使ってたら今日中に着かないわ!!」

「飛行、ですか?それじゃ僕達が飛べるような魔法を?」

「それはそれでロマンはあるがまだ甘い。という訳で出て来いソニックドラゴン!!」


 俺の別腹空間から出てきたのは2体のソニックドラゴンである。

 つまりキリエスを襲った時に生き残ったソニックドラゴン達を脚代わりにするという計画だ。

 もっと有り余っているから1人1体でもよかったんだが、流石に空中におチビだけ乗せると言うのは不安が残る。なので保護者であるとな2人のうちどちらかと一緒に乗ってもらう事にした。


「見ろカエル!男の子なら1度はドラゴンの背に乗ってみたいという夢を同時に叶えると言うサプライズ付きだ!どうだ凄いだろう!!」


 キャラじゃないが大声で笑ってみたが反応が薄い。

 あれ?っと思って振り返って見ると既にトキ以外の男子2人は既にヒノ先生の後ろに隠れていた。

 ヒノ先生はヒノ先生で唖然としている。

 そしてヒノ先生は俺に向かって言った。


「タツキ先生……やり過ぎです」

「え?何がです?」

「乗り物感覚でソニックドラゴンを召喚した事です!つい半月ほど前にヴァロンランドを襲った種と同じドラゴンですよ。当然警戒します」

「え~男の子の夢なのに?」

「夢でも憧れでもやり過ぎです。しまってください」


 何て冷たい事を言うんだ!!

 外に出したソニックドラゴン達も泣き出したぞ。

 久しぶりの空。おチビ達を乗せるために全力で飛ばないとしても飛ぶ機会だったのに!そんな現実的な話で潰されてたまるか!!

 それに現実的な話で言うのであれば!!


「そんな事言っても無理ですよ。協力者には今日中に帰るって伝えてますし、これで行かなかったら1週間以上かかりますよ!しかも他に馬車とかの予約入れてないし、この機を逃したら子供3人連れて徒歩になっちゃいますよ!!」

「それは……」

「さらに言えばユーラザニアには勇者も来るとの噂です」

「え!?本当かタツキ先生!!」


 あ、ヒカルが食い付いた。

 ならばこの勢いを利用して!!


「ああ本当だぞ。でもそれは2日後の話、1週間もしたらとっくに帰ってるだろうな~」


 その言葉にヒカルだけではなくカエルやトキも興味を持ち出した。

 こういう時は子供を味方に付けるのが手っ取り早い。

 ズルい?そんな事より期限以内に着く方が重要なのです。


 そうオーバーに言うとおチビ達が協力的になってくれたのでヒノ先生は大きなため息をつきながらも仕方がなさそうに言う。


「落っことしたらその首切ります」


 ソニックドラゴン達は落とさないと首を動かして伝えた。

 さて次はおチビ達が俺とヒノ先生どっちを選ぶかである。

 個人的には同性同士かな~っと思っていたのだが、ヒノ先生の所に男子2名。俺の所にトキ1名が来た。


「おい男子。こういう時って男同士で組むもんじゃないのか?」

「嫌だって……なぁ?」

「だよね……」


 何か合わせる様な2人に疑問に思っていると、カエルがしきりにトキを見ろとジェスチャーする。

 俺はトキを見ると……なんか黒いオーラ的な物が出ている気がした。

 何と言うか近付くな、こっちに来るな、みたいな感じがとてもする。

 いや~子供でも女は女と言う事なんだろうか?ちょっと怖い。

 まぁそれだけ気に入られていると言う事なんだろうけど。


「それじゃ俺はトキ、ヒノ先生はヒカルとカエルと一緒って事でいいな」


 確認して言うと全員頷いた。

 ちなみにソニックドラゴン達は伏せて待っている。

 大人しくしていても子供から見れば十分怖い存在なんだろう。ヒカルとカエルはビビりながらもソニックドラゴンの背に乗った。

 ヒノ先生は呆れていると言うか腹括った様な表情をしている。

 やっぱりドラゴンの背に乗ると言う事は普通ないんだろうな。


 それに比べるとトキは恐怖心の様な物をあまり感じない。むしろ好奇心と言うべきか、ソニックドラゴンに触れている。

 俺はそんなトキを抱えてソニックドラゴンの背に乗った。

 当然だがソニックドラゴンの上に椅子の様な物はない。じかに乗っているからどうしてもちょっとだけ落ちていまうかも知れないリスクはあるのだ。


「そんじゃ行くぞ~」


 そうヒノ先生グループの方に言うとヒノ先生は頷いた。ちなみにヒカルはヒノ先生の前、カエルはヒノ先生に後ろからしがみ付いている。

 俺の方はトキの希望で俺の前に座っている。

 ソニックドラゴン達は俺の合図を聞いてゆっくりと四つ足で立ち上がる。俺達がずり落ちない様に気を遣っている証拠だ。


 そしてソニックドラゴン達は飛び立った。

 流石に最初だけは低空だったが、今では人目には分からない高度で飛んでいる。

 本当ならもっと速く飛べるソニックドラゴンだが俺達を乗せているのでそんなに早くは飛べない。それに俺達が乗っているのでちょっと重いのだ。

 詳しく調べてみた結果、ソニックドラゴンはそんなに体重はない。飛ぶと言う事に特化した形態のせいか筋肉量も少ないし、とにかく軽いのだ。


 まぁ何にせよ俺達が乗っている時点で思ったように飛べないのは確実だけどな。

 元々誰かを乗せて飛ぶなんて想定してなかっただろうし。

 そしてソニックドラゴンの背の上は意外と快適だ。それはドラゴン達が風を操作して俺達の周りに風が来ない様にしているからだ。

 なので暴風に負けないようにしがみ付く、と言う事をしなくて済んでいる。


「先生凄いね!飛行機の上みたい!!」


 いつになくトキがはしゃいでいる。

 確かにこの光景は前の世界でも見る事が出来ないだろう。飛行機の窓は小さいし、こんな風に360度見渡す事など出来ないはずだ。

 そう考えると魔法様様だ。俺の知っている科学技術じゃ生身で飛行機に乗るなどただの自殺行為だろう。

 でもこの世界ではそんな空想が現実に起こせるのだから夢がある。


「トキ。寒くないか?」

「寒くないよ!所で先生。この子に乗ってどれぐらいでその精霊の国に着くの?」

「ざっと4時間ぐらいかな。お昼ちょっと過ぎになるがどうする?食べてから行くか?それとも着いてから食べるか?」

「それじゃ……食べてから!」

「よし。それじゃ向こうにも伝えておかないとな」


 そう言うと俺達が乗っているソニックドラゴンが動いて、ヒノ先生達に声が届くほどに近付く。

 そして軽く相談。


「ヒノ先生、トキは向こうに着く前にご飯食べたいそうですがどうします?」

「この子達に乗って移動するのにどれ程の時間がかかりますか?」

「およそ4時間ですね。今10時ごろなので……14時ごろには着くかと。ただ大騒ぎにはしたくないので少し離れた所に着陸する予定ですから……15時ごろになってもおかしくないかも」

「では途中で休憩を取りましょう。2時間後辺りを目安にするのはどうでしょう」

「そうですね。乗ってるだけでも疲れるでしょうし」


 子供なんだからその辺も考慮しないとダメだったな。

 そんじゃお昼に降りれる様人気のない所を探しておきますか。

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