久しぶりの子供達
翌日。
俺は祭壇を管理している町はずれの祭壇の女性に会いに来た。
「っと言う訳で少しの間この子達の事を見ていてもらっててもよろしいでしょうか?」
「はい分かりました。それではお預かりします」
どうせとんぼ返りの予定なのだからジャックとアスクレピオスはユーラニアに置いて行く事にした。
中身は大人みたいなものであっても見た目は子供。どう頑張っても大人扱いされる事はない。
なので俺が大丈夫だからと言って子供2人だけにする訳にはいかない。もし放っておいたら……育児放棄扱いされる可能性が非常に高い。
それだけは嫌だ!!この年で犯罪者になりたくない!!
という事でこの国で唯一子供を預けられそうなのはこの女性だけだったのである。
それに俺が居ない間の食費や迷惑料はきちんと出す。
とりあえず白亜金貨2枚でいいだろう。
「これは迷惑料と食費です。受け取って下さい」
「分かりました。安心して……あら?これって銀貨じゃなくて白亜金貨?」
少し混乱している女性は放っておいてジャックとアスクレピオスの目線にしゃがんで俺は言う。
「良い子にして待ってろよ?じゃないと俺が大変だ」
「この辺で遊んで待ってればいいんでしょ?それに私達中身は大人だよ」
「お世話になっている方にご迷惑はおかけできません」
そう言うが……アスクレピオスはともかくジャックの方は好奇心で暴走しそうな感じがするんだよな……
解体大好き幼女とか恐ろしさしか感じない。
「とにかく迷惑はかけるなよ。そんじゃ行って来る」
「「行ってらっしゃ~い」」
という何とも軽いノリで俺はヴァロンランドに戻る事にした。
ユーラニアからヴァロンランドまで直線で飛んで大体2時間ぐらいか?昼前には着くだろう。
俺は鎧を着ながら周囲に合わせて変色し、目に見えない様にする。これで人が飛んでいても気にならない~
今回は鎧の翼で飛んでいる訳だがスピードだけで言えばこっちの方が早いんだよな。
ヤタの翼は近距離向きと言うか、バサバサする必要があるからどうしても長時間飛ぶとなると疲れるんだよね。
グライダーみたいに作ったのが原因か?鳥のように飛ぶ、というより滑空すると言った方が正しいし。
心地いい風を感じながら飛ぶこと多分2時間。ヴァロンランドが見えた。
ほんの2週間ぐらい前だと言うのに何だか懐かしく思える。おチビ達は元気だろうか?
俺は人気のない場所に下りて周囲に誰も居ない事を確認してから鎧を解除した。
その後は堂々と正面から入ればいいだけなので問題ない。と言うかこそこそ入った後の方が色々メンドな事になりそうだし。
俺は一般用入り口からカードを見せ、身分証明して入国した。
お久しぶりのヴァロンランドだが今回は真っ直ぐアヴァロン自由学園に向かわせてもらおう。
「あー!!タツキさんじゃないですか!!」
のんびり歩いていると後ろから誰かに呼ばれた。
振り返って見るとそこにはマルダが居た。
「お~マルダ。久しぶりだな」
「お久しぶりです~。ご依頼の方でこの国から出て行っていまったと聞いていましたが、依頼達成したんですか?」
「その準備が終わっただけだな。だからその準備が終わりましたって報告しに行く所」
「へ~やっぱりタツキさんは優秀な冒険者なんですね」
「別にそんなもんでもないさ。それでそっちはどうよ?」
軽く世間話のノリで聞いてみる。
俺が知りたいのは半壊したキリエスの状況だ。ぶっ壊した後どんな風になったのか知りたい。
そう思って聞くがマルダは何て事のない様に言う。
「私達は相変わらずですね。訓練して、奉仕活動をして、寝るだけの毎日です。今日だって町の治安維持活動で歩き回ってるだけですから」
マルダは嘘のつけない人だと思う。
もしキリエスが魔物に襲われたと知ったら興奮して話して来ると思う。なのにそれがない所を見ると、本当に知らない様だ。
話しているのはここ最近の上司や同僚へのグチ。騎士団長の訓練がキツイとか、同性の同僚が居なくて寂しいとか、そんな話だ。
「毎日ご苦労様です」
「頑張ってますよ~!これもジャンヌさんに追いつくためです!」
そういやジャンヌさんとジョージさんは今どこにいるんだろう。
キリエスで死んでないといいんだけど……
そう思っている間に久しぶりのアヴァロン自由学園に到着した。
今の時間帯は授業中か。それなら逆に校長先生に会いに行きやすい。
俺達は校門で別れる事にした。
「そんじゃマルダ。俺依頼主に話してこないと」
「はい。またお話ししましょうね!」
そう言ってマルダは町の方に戻る。
俺は門番の人に「お久しぶりです」と言ってから学園に入って行く。少しの間でも教師として働いていたから顔パスで通れるのは本当に楽でいい。
そして職員室に行き、冗談半分でただいまーっと言う。
すると同僚達は驚いた表情で出迎えてくれた。すぐに賑やかになり、校長先生が出てきたのでそのまま校長室で話す。
「――っと言う事でユーラニアで彼らを助ける準備が整いつつあります。ですので彼らに外泊許可をいただきたいのですが」
「そう言う事でしたらクラスでの野外活動という名目で外泊許可を出しましょう。この目で生徒達が救われる瞬間に立ち会えないのは残念ですが、その役割はヒノ教諭にお任せしましょう」
「そうしていただけるとありがたいです。俺1人で生徒達を止めるのは大変でしょうから」
「ええ。ヒノ教諭が最も待ち望んでいた事ですから、彼女にはぜひ彼らが救われる瞬間を見せてあげてください」
そんな話をしている間にチャイムが鳴る。これは多分昼休憩のチャイムだな。
校長先生は俺の様子を見てかにこやかな笑みを浮かべて言う。
「それでは彼らとヒノ教諭への説明はタツキ教諭にお任せします。会いに行かれたらどうです?教室で弁当を食べている頃でしょう」
「そうですね。それでは少し説明して来ます」
そう言って立ち上がると校長先生が「あ、そうでした」と言う。
「今日の午後からは休みで構わないと説明に加えておいてください。色々と物入りでしょう」
「分かりました。そのように伝えます」
こうして俺は校長先生への説明を終え、おチビ達の居る教室へ。
何てことないようにいつも通り歩く。とりあえず考えているのはすれ違いにはなりたくないな~という不安だけである。
途中他のクラスの生徒達に「久しぶり」と言われたので「久しぶり~」っと返しておく。
そして教室の前に来て、今まで居なかった事が嘘のように普通に扉を開けた。
「よ~お前ら、良い報告があるぞっぼ!?」
「先生!先生先生!先生先生先生!!」
普通に扉を開けただけのはずなのに……トキの頭突きが飛んで来た……
受け止める事には成功したが腹部に大きなダメージが……たった2週間で成長したのか?
トキを抱きしめながら俺はここに散る………………
「タツキ先生!?大丈夫か!!」
「完全に不意打ちで頭が鳩尾に入ってましたね。流石のタツキ先生も今のは……」
「トキ。嬉しいのは分かったけどまずは回復させてあげて」
「あ!先生ごめんなさい~!!」
まさかの不意打ちにより腹部を抑えていた俺だが、どうにか持ち直した。
変質による自己改造、身体強化がなければ俺もまだまだ人間だった様だ……ごふ。
「あ~とりあえず、ただいま」
「お帰りなさい先生」
「あ、うん。お帰り」
「感動的な場面なんでしょうけど……トキの頭突きで感動が台無しですね」
俺の言葉の後、トキ、ヒカル、カエルが言う。
そして最後にヒノ先生が俺の顔を覗き込みながら言う。
「お帰りなさいタツキ先生。この子達を助ける準備は出来たと言う事ですね」
「はい。今日はその話をするために戻ってきました。時間大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。先程昼休みになったばかりですので」
「それじゃ早めに言っておきますね」
という事でヒノ先生と生徒達に今後の予定を伝えた。
校長から許可をもらって今日は授業なしである事。
明日にはユーラニアに行くので着替えなどの準備が必要な事。
そしてユーラニアで1日1人確実に精霊を呼び出し、契約する事で生徒達の命が救われる可能性が非常に高い事を伝えた。
今までは確実に実行できる段階でなかったから伝えられなかったが、もう既に確実に実行できるまで進んだのだから伝えてもいいだろう。
その事を伝えるとおチビ達は色んな意味で喜んだ。
単純に海外旅行に行ける事。
勉強しなくても良い事。
そして生き残る事が出来る事。
おチビ達も喜んでいるが最も喜んでいるのはヒノ先生だろう。
彼らの反応を見て微笑んでいるだけにも見えるが、その眼もとにはうっすらと涙が浮かんでいた。
「という訳で今日は学校サボって旅行の準備だ!町で足りない物買ってくるぞ!!」
「「「おー!!」」」
「あ、ちなみにタツキ先生は勉強なしと言いましたが私は勉強させる気なのでちゃんと勉強もさせますよ」
「「「「え~」」」
元気になったり落ち込んだり、忙しいな。おチビ達は。




