ユーラニア到着!!
馬車の護衛をしながら南下する事5日目の昼。ようやくユーラニアに到着した。
ユーラニアは森林に囲まれた国であり木材の資源がとても豊富な国だ。だからと言ってむやみやたらに伐採している様子はないし、何と言うか自然とうまく付き合いながら生きている感じがするっと言えばいいだろうか。
他の国ではレンガや石造りの家が多かったがこの国では木造住宅が多い様でちょっとなじみがある。
流石に屋根は瓦ではない様だがそれでもなんだか温かく感じる。
「いや~ありがとうございました。お陰で無事帰ってくる事が出来ました」
「いえいえ、俺もチビ達を馬車に乗せてもらえたので良かったです」
「ですが荷馬車なので狭かったでしょう。大丈夫だったかい?」
「大丈夫だよおじさん!直接地面の上で寝ないだけよかったもん」
「屋根があるのはとても良い事です」
ジャックとアクスレピオスがそう言うと依頼主は満足そうに頷く。
そして依頼達成の所にサインをして俺に渡した。
「こちらが依頼報酬です。銀貨2枚と銅貨6枚です。それから依頼達成のサインをした羊皮紙です」
「確かに受け取りました。それでは俺達はこれで」
「はい。しばらくユーラニアに入らっしゃるのならぜひ店に来てください。サービスしますよ」
「ぜひお願いします。それでは」
「バイバーイ!」
「ありがとうございました!」
ジャックは手を振って、アクスレピオスは頭を下げながら言った。
見送った後俺達も行動を開始しする。
まずはアヴァロンで依頼達成の羊皮紙を渡し、おじさんが言っていた精霊召喚を行える場所を探さないといけない。
そしてそこで上位精霊が呼べるかどうかの確認も行わないといけない。
「ねぇお兄さん。これからどうするの?」
「とりあえずアヴァロンで依頼達成を知らせて、後は町のはずれで精霊召喚について聞かないとな。無事召喚出来そうならヴァロンランドに戻ってあいつら連れてこないと」
「生徒さん達ですね。わたくしの魔力も安定していますし、行うだけならいつだって出来ます。ただ……」
「上位精霊が興味を持つかどうかは運と実力次第、だろ?まぁいざって時のために対策は考えてあるし」
それが上手くいくかどうかは分からないが、それでも何も対策をしないよりはマシだろう。
問題は精霊による知識がどこまで通じるか何だよな……
一応知識だけはスマホとかで色々調べた。でもあくまでも知識だけの話であり、行動に移した際どこまでできるかはまだ分からない。
それも検証出来そうなら検証したいな。
とにかく今はアヴァロンで依頼達成の報告をして宿を探す事が先か。
アヴァロンは比較的直ぐ見つかった。街に入って少し歩いた大通りにあったのだからとて見付けやすい。
依頼達成報告が終わって宿を取り、すぐに上位精霊を召喚しやすい場所を探す。
まずはおじさんが言っていた町はずれの祭壇を管理している人達の所に行ってみる。
街の人に聞いてみたら、他所から来た者達にとってちょっとした観光スポットになっているそうだ。異文化交流と言えばいいのか、精霊と言う存在を実感できなくとも興味はあると言う感じか。
俺も実際に精霊を生で見た事がない。
スマホで調べても図鑑に載っているのは名のある上位精霊ばかり。大して名のない下級精霊などはまとめて風の精霊とか、大地の精霊と言われてお終いだ。
なので俺自身もとても興味がある。
という訳で町はずれの祭壇を管理している人達に会いに行ってみた。
「あらいらっしゃい。観光ですか?」
ほうき片手に掃除をしている女性に声をかけられたのでこの人に聞いてみる。
「すみません。この精霊召喚の祭壇についてお話をお聞きしたいのですが……管理をしている方はいますか?」
「それなら私がご説明しますよ。私も管理している者の1人ですので」
「え、あなたが?」
そう言う女性の服装は町の人と何も変わらない。
教会のシスター服の様な物でもなく、この地域特有の文化的な服装と言う訳でもない。
意外そうに言ったのがおかしかったのか、女性はくすくすと笑いながら言う。
「はい。私はこの祭壇の管理をしている者です。先祖代々この祭壇を守っておりますが普段は普通ですよ」
「あ、そのすみません。何というか、こう特徴的な服装をしているとばかり思っていましたので」
「正式な儀式を行う時はきちんと正装に着替えますよ。立ち話も何なのでこちらにどうぞ」
そう言われて俺達はこの祭壇の事務所的な場所に通された。
いきなり来たと言うのに丁寧に対応されるとちょっと心苦しい。
俺の前にお茶、ジャックとアスクレピオスにジュースを置いてくれた。
「ありがとうございます」
「そう畏まらないで下さい。あなたがこの国に来られるのは知っておりましたから」
「え?」
お茶に手を伸ばすとそう言われたので驚いた。
女性は微笑みながら言う。
「この国では代々王家の方々が精霊女王様と契約をなされております。その精霊女王様よりお言葉があったのです。『今度子供を救おうとする男が来る。来た場合は協力を惜しまない様に』と。大柄で普通ではない男と聞いていましたからもしやと思ったのです」
「……ですがその条件に当てはまる男性は多いのでは?俺は冒険者なので余計に多いと思いますが」
「子供を連れた冒険者は少ないですよ。それに私の目は少し特殊なのです。大きく分ければ大地の英霊に分類されるのですが、死に関連した精霊なのです。なので私の目にははっきりと分かりますよ。あなたの異常さに」
精霊のご加護っとでも言うべきか。
この人の目には俺はどんな風に映っているのだろう。恐ろしい化物か、それとも見るも無残な男か。
俺は茶を1口飲んでから聞く。
「分かっていて協力すると?」
「確かにあなたは異常ですがこの場で殺してしまえと言うほど過激な事を言うつもりもありません。精霊女王様のお言葉と言うのもありますが、あなた自身がそこまで危険な存在に思えないだけです」
「………………」
「それにお連れの方も悪い方ではなさそうですし、協力してもよろしいのではないかと」
女性はジャックとアスクレピオスを見て言う。
こちらに危害を加える気がないと言うのなら俺も事を荒げるつもりはない。
それに事情も分かっている様だし、ならば協力してもらおう。
「とある子供達を救うために上位精霊を召喚できる場所を探してます。教えてもらえますか」
「上位精霊ですが……確実に、となりますと王家の方々の協力が必須ですね。精霊女王様に言われていますので恐らく大丈夫でしょうが……その助けたいお子さんはそちらのお2人で?」
「この2人じゃありません。今は別の国に居ます。人数は3人だが大丈夫ですか?」
「………………少々時間がかかってしまうと思います。上位精霊を確実に召喚するとなるとおそらく1日1回が限界と思われます。それに莫大な魔力を消費する事となるでしょうから1日開けて……6日はかかるでしょうか」
「6日か。それはあなた達だけで行った場合ですか」
「そうなりますが?」
「俺の魔力を使って構いません。その場合はどうなりますか」
そう言うと女性は考えながら俺の事をじっと見る。
そして言った。
「残念ですがおそらくできません。確かにあなたの魔力は強大ですが、それを制御するのにも力が必要となります。我々にはそのような力は……」
「ならわたくしが制御します。元々そのために連れて来られたのですから」
アスクレピオスがジュースのコップを置いて言う。
そして何て事の内容に言う。
「わたくしの魔力はまだまだ足りませんが、タツキさんが協力していただけるのなら問題ありません。元々タツキさんは場所だけ貸してもらい、後は我々だけで行おうとしていたのですから。それにあなた方の協力でさらに召喚できる確率が増えたと言うだけの事。魔物が精霊を召喚するより人間が召喚する方が精霊も素直に出てきてくれるでしょうから」
「………………」
女性は驚いて俺を見る。
俺はとりあえず頷いてから言う。
「そう言う事です。少しでも確実性が高くなるように全力を尽くしてますから。それにアスクレピオスも普通じゃない事は分かってるのでは?」
「分かってはおりましたが……はっきりと口に出されると驚きを隠せないものですよ」
こうして向こうから協力してくれるのと言うのならありがたい。
それじゃ下見やら何やらした後あいつらを迎えに行かないとな。




