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ユーラニアを目指す

 俺達は3人に増えてユーラニアを目指して南下する。と言っても歩いて行くのには大きな不安がある。

 ジャックと蛇はまだ幼い。いや、蛇に関しては俺が十分な魔力を与えれば問題ないと思うがジャックは見た目通りの年齢だ。

 たとえ中身が転生者で大人だったとしても身体は子供なのだから無理はさせたくない。

 なので俺は1つ手を打った。


「考えたよね~お兄さん」

「そうか?冒険者としては常套手段だと思ってたんだが」

「でも……わたくしとジャックだけ馬車に乗っていいんでしょうか?」

「良いの良いの、ちゃんと話は付けておいたんだからさ」


 常套手段とは目的地であるユーラニアまで行く商人の馬車の護衛をしながら目指すと言うものだ。

 給料も入るしおチビ2人は荷馬車に乗せてもらえる、これほど都合のいい仕事はない。


「いや~助かりましたよ。中々冒険者の方に依頼を受理していただけなくて困っていましたから」

「それは俺の方もですよ。おチビ2人を乗せていただきありがとうございます」

「子供2人ぐらいどうって事ありませんよ」


 今回の依頼主である商人はユーラニアから来た人で、その帰りに護衛を冒険者に頼もうとしていたのだが中々条件が合わず立ち往生していたと言う。

 その理由はユーラニアに行く冒険者が非常に少ないからだ。


 精霊が多くいる地域では魔物が居たとしても正直そんな強い魔物は出てこない。初心者にとってはいい狩場だそうだが、それなりに経験を積んだ冒険者にとってはあまりいい点がないからだ。

 ただでさえ命を張っていると言うのに、簡単に倒せる魔物だけを相手にしていても良い収入にはならない。

 なので簡単に倒せて価値の高い魔物ならともかく、簡単に倒せて価値の低い魔物いくら狩っても収入にはならないと言う事だ。

 なのでユーラニアに行く冒険者はとても少ないのだ。


「それにしても初心者じゃない冒険者さんが依頼を受けて下さるなんて、ユーラニアに何か御用でも?」

「精霊について興味を持ってな、ちょっと見てみたくなったんだ」

「なる程。確かに精霊と言ったらユーラニアですな。小さな精霊なら町でも見かける事が出来ますし、運が良ければ契約に応じてくれるかもしれませんからな」


 流石地元民。こういう情報はやっぱり地元の人に聞くのが1番だ。

 俺は精霊契約について聞く。


「契約ってやっぱり難しいものなんですか?」

「難しくはありませんよ。実は私も精霊とは契約しています」

「え、そうなんですか?」

「はい。一般的な風の下級精霊ですが契約そのものは簡単です。ただ呼び出すと言う点に関してはそれこそ内なる才能が関係していると言われています。精霊も弱い人間には興味が無いと言う事でしょう」

「と言う事は普通は下級精霊と契約ですか?」

「そうですね。なかには中位精霊と契約できた者もいますが、その場合精霊の力を借りながら冒険者になる者が多いです」


 となると生徒達に上位精霊を召喚させて契約するには相当難しいと考えておいた方がいいか。

 なんでも上手くいくとは思ってはいないが、上手くいって欲しいんだけどな……


「ちなみに上位精霊と契約できた方はいるんですか?」

「いなくはないですが……ほとんどが英雄や勇者などと呼ばれる方々ばかりですよ。ここ2~300年ぐらいは上位精霊と契約したとは聞いてませんね」


 そんなに長い事契約してないのか……これはまた不穏な空気が出て来たぞ。

 精霊って作品によって気難しかったり、チョロかったりするからこの世界の精霊はどんなもんなのか全く知らないんだよな……

 スマホで調べても精々属性だとか性質だとかばっかりで図鑑みたいな感じの情報しか出てこない。

 チョロいと助かるんだけどな……


「その契約する場所って決まってたりするんですか?」

「決まってますよ。私が契約した時は町のはずれにある祭壇で契約しました。地元の者はそこで契約をしています」

「俺の様な冒険者が契約を結ぶ事はできますか?」

「出来なくはないでしょうが……精霊達は気まぐれですよ?それに冒険者さんなどにお貸しする場合は金銭を要求しますし、地元の者が優先的に契約しますのでご都合通り借りれるとは限りませんよ?借りれたとしても精霊が現れるかは彼らの気まぐれです。実際何度か契約しようとした若手の冒険者が無駄に終わった事がありますよ」


 最後は精霊様の気まぐれか。

 まぁ意思のある存在なのだから、こちらの言葉に耳を傾けるかどうかは精霊次第っと言うのは仕方がない事だと思う。

 だが生徒達の命がかかった状況なのだから何としてでも成功させなければならい。

 そのために先に蛇を助け出したんだからな。


「お兄さんお兄さん。盗賊が来たよ」

「そうみたいだな。ジャック、手伝ってくれ」

「は~い」


 そう言ってジャックは荷馬車から降りた。

 依頼主は怯えながら俺に聞く。


「盗賊ですか?今さらですが本当にお2人だけで大丈夫なんですよね……」

「大丈夫です。俺達かなり強いんで」


 流石に人前で鎧を着れないが全く問題ない。ジャックは既にナイフを取り出しているし戦闘体勢ばっちりだ。

 ちなみに蛇は荷馬車の中で大人しくしている。

 戦えない事はないのだがまだ魔力が回復していない事と、蛇らしい攻撃が出来ないので人間態での戦闘は苦手らしい。

 なので後ろで支援に回るそうだ。


 わらわらと出てくる盗賊の数は全部で20ちょい。いかにも盗賊と言う感じで軽装で湾曲した剣を構えている。

 とりあえず積み荷と商人を守る様に立ち向かう。

 そしてふと思い出した。


「なぁジャック。盗賊ってぶっ殺していいのか?」

「確か……殺してもいいんじゃないっけ?明確な敵対行動をした場合は仕方ないって感じじゃなかったかな?」

「ふ~ん。そんじゃ殺すか?」

「これ全員?え~疲れるからヤダ~」

「そんじゃ追っ払うか」

「なぜそんなにのんきに話が出来るのですか!相手は盗賊ですよ!」


 いや、俺から言わせれば基本的に魔物ばっかり狩ってたから雑魚にしか見えないし、殺さないように調整するのも面倒臭いな~というレベルでしかないと言うか。

 なんて話をしていると、盗賊たちが襲って来たのでさっさと迎撃する。


 殺す殺さないは微妙な所の様なのでとりあえず殴って動けない様にする。顎を思いっ切り殴れば大体気絶するし、砕かないように手加減すればそれで終わりだ。

 ジャックの方は……俺よりえげつない。身長が低い事を利用して盗賊のアキレス腱をぶった切って動いてる。

 それ絶対歩けなくなるよね?アキレス腱って再生したっけ?しないならもう二度と歩けないじゃん。


 それでも戦いを止めようとしない盗賊たちに呆れていたが、突然盗賊たちの足元に変化が起きた。

 より正確に言うと盗賊たちの影。そこから小さくて細長い手が盗賊たちを掴み、地中に引きずり込もうとしている。

 え、何この急なホラー現象。盗賊たちが喚きながら引きずられていくからホラー度が結構高いんだけど。

 最終的に盗賊たちは地面から頭だけを出した状態になり、何もできなくなった。

 誰がやったんだろうと考えていると、荷台から蛇が顔を出しながら聞いてきた。


「上手くいきました?」

「上手くって、今のあなたがしたんですか?」

「はい。影魔法のシャドウハンド、相手の影から影の手を出し地中に引きずり込む魔法です。本当は生き埋めにするんですが……生け捕りで良かったんですよね?」


 確認するように言う蛇にやっぱ真祖だなっと強く思った。

 と言うか後方支援って魔法でするものなんだ。まぁファンタジー世界だから間違ってないけど。

 にしても……意外とえげつない魔法だな。文字通りからめ手と言うか、テクニカルな魔法と言うか、使いこなすの大変そう。


「まぁ生け捕りと言うか追っ払えればいいや程度だったから……うん。これでいいんじゃないか。ありがとな……」


 そしてふとまだ蛇に名前がない事に気が付いた。

 アセナもトヨヒメもヤタも俺が名付けた。なら蛇の名前も名付ける必要がある。

 ちょっと考えて蛇っぽい名前は……


「ありがとうございます。アスクレピオス」


 そう蛇の事を呼ぶと蛇はキョロキョロと辺りを見渡してから自分の事を指差す。

 俺はそっと近付いて小さな声で話す。


「名前はあった方が便利ですからね。そう呼んでも構わないですか?」

「アスクレピオス……それがわたくし?」

「はい。他のが良いと言うのであれば他のを考えますが」

「いえ、それがいいです。ではわたくしは今日からアスクレピオスですね」


 そう言うとどこか嬉しそうにするアスクレピオスだった。

 ………………何と言うか長い名前だな。今度もっと短い呼び方考えよ。

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