確認
ジャックと蛇の真祖を連れて次の町に着いた。
キリエスから見て南側にある国で俺が目指しているユーラニアはまだまだ遠い。
この国は農業地帯のようで小麦が多く生産されている。なのでこの国に来て朝飯はパスタだ。
正直パンとスープだけって腹減らない?周りじゃそれが普通みたいだけど。
「おお~このパスタ美味しい!」
「これ少し辛いですけど美味しいです」
ジャックと蛇の真祖も一緒にパスタを食べている。
金だけはあるので問題ない。と言うか王様から買い取ってもらった金どうにか崩せないかな……あんな大金どうやって使えと言うのだろう?
とりあえずアセナ達にプレゼントでも買って帰るか?
そして食いながら話を始める。
「それじゃ全員それぞれの事情説明でも始めようか。まず俺はタツキ。創造神に頼まれて真祖開放をしてる世界の敵です」
「私はジャック。名前は男の子っぽいけど女の子だよ。ちなみに転生者」
「あ、やっぱりジャックも転生者だったんだ。道理で強いと思った」
「スピード特化の一撃必殺が得意なんだけどお兄さんに通じなかったのはショックだったな~」
「……あの、こんな人の多い食堂でそんな話をしていいんですか?かなり重要な事を話してますよね?」
蛇の真祖は辺りを気にして見渡したりしている。
そこで俺は注意しておく。
「普通の音量で話してれば気にされません。と言うかそうやってキョロキョロしていると逆に気にされますよ?」
「す、すみません。わたくしはあまり強くないので……」
「え?強いんじゃないんですか?」
「他の姉妹と比べないでください……みんな戦闘系に特化していますが私は知力担当なんです。それがわたくしの1番の強みなんですから」
「そうなんですか?俺はてっきりみんな強いんだとばっかり……」
「わたくしは基本的に暗殺型なんです。地上を這うスピードと噛み付いた際に即死する毒を体内に流すだけで……」
それ十分にチートだと思う。
むしろ斬られるだけのジャックよりもヤバいんじゃないか?
「それ絶対私よりすごいと思うんだけど?」
やっぱりジャックもそう思うか。
確かに1撃の鋭さだけで言えばジャックの方が上かも知れないが、毒と言う何が起こるか分からない物に恐怖を感じる。
だが蛇の真祖は首を横に振りながら言う。
「それじゃ誰にも勝てなかったんです。4女なのに、妹にも負けました……何でわたくし以外あんなに強いんでしょう……姉達は噛む以前に追いつけないですし、カラスは強い光で長距離攻撃してくるし、鮫は噛む前に電撃を使ってきますし、これじゃ私は足手まとい……」
………………何と言うか、本当にネガティブだな。
確かにアセナとかマジで強いけど、この蛇の真祖が劣っていると言う感じはしない。
とりあえず細かい所を聞いてみるか。
「ちなみに毒ってどんな毒です?」
「え?ええっと色々できますよ。神経毒、出血毒などは当然使えますし、幻覚作用のある毒とか毒を注入したところから腐敗するような毒も使えますし、毒の性質を変えれば色々できますよ」
俺とジャックは顔を見合わせた。
やっぱ真祖ってチートだろ。
「と言うか毒の性質を変えるって凄すぎません?」
「でもやっぱり効かない相手には効かないんです。毒を流す前に攻撃されては元も子もないですし、代わりに知識の方を集めたんです。お陰で教会で捕らわれちゃったんですけど……」
「そう言えばお姉さんってどうして教会に居たの?敵じゃないの?」
ジャックの質問に俺も思った。
本来は敵であるはずの教会が何故自ら真祖を解き放っていたのか、その理由は知りたい。
そう聞くと蛇は言いにくそうにしながらも言った。
「その……とある実験を手伝わされていたんです」
「実験ってどんな?」
「天使と人間の融合実験です。彼らが祀る神であるジャッジの天使と信者である人間の融合実験を手伝わされていました。でも成功率はとても低く、成功しても人間の身体が持つのはほんの数日です。ですので少しでも長く保つように実験を繰り返しています」
うっわ~本当にやってたよ人体実験。
それを聞いたジャックは嫌そうな顔をしながら聞く。
「繰り返すって何100人ぐらい試したの?」
「まだ二桁です。ですがこればっかりは人間の適性次第と言いますか……と言うか人間の身体に馴染ませるだけでも無理なんですよ。精霊契約と同じように扱ってほしくありません」
「あ、俺はその精霊契約が目的で来たんですけど大丈夫ですか?」
俺は蛇に肝心な事を聞く。それが蛇を助け出した目的だし、出来ないとなればまた別の方法を探さないといけない。
いざとなったらスマホの機能を使って一か八かの大勝負に出るしかない。
繊細な魔力操作なんて出来る自信ないけど……
「精霊契約ですか?それは普通の人間でも出るはずですが?」
「俺が求めているのは自我のある上位精霊です。上位精霊を確実に召喚するにはあなたの協力があれば確実と聞いています。ご協力いただけませんか」
そう聞くと蛇は難しそうな顔をする。
「………………出来なくはありませんが……すみません。今すぐにと言う事でしたらできません。魔力が安定していませんし、上位精霊を召喚する魔力も足りません。回復するとしても……10年はかかるでしょうか」
「魔力に関しては俺の魔力を使ってくれれば構いません。安定するのにはどれぐらい時間がかかりますか」
「……およそ1週間ほどです。それぐらいの時間があれば十分です」
「それは良かったです。それから確認なのですが自然が豊かな場所の方が上位精霊を召喚し易いと聞いたのですが」
「確かにその方が召喚し易いです。精霊召喚の際には自身の魔力だけではなく周囲の自然から溢れ出た魔力が必要となります。ですので自然豊かな場所が好ましいです」
「それに関しては現在ユーラニアと言う国で行いたいと思っています。精霊信仰が盛んな国らしく、そこでならっと」
「ユーラニアですね、そこなら好条件でしょう。豊かな自然に精霊を信仰しているのならこれ以上ない場所です。おそらくそこでなら召喚する事は可能でしょう」
「ではお願いしてもよろしいですか?」
「わたくしは貴方に助けられました。精霊を召喚するぐらいお手伝いしますよ」
ふう。これで断られたら大変な事になる所だった。そうなったら自力で
頑張るしかないもんな~。
となれば後はユーラニアで召喚する場所を探しに行かないと。少しでもうまく召喚出来るために頑張ろう。
そう思っているとジャックは俺に聞く。
「ところでお兄さんはどうして精霊が欲しいの?戦力強化?」
「いんや。精霊を必要としてるのは俺じゃなくてもっと小さい子供達。実はな――」
ジャックと蛇に詳しい話をする。
未完全な召喚によって寿命が決まってしまった子供達。その子供達を救い出す方法が精霊と契約し、体内の魔力を制御してもらう事だと話した。
それを聞いたジャックは怒りをあらわにする。
「あいつら本当にろくでなしだったんだね」
「ジャッジ……彼ほど愚かな神はいないでしょう。よりもよって独断で異世界の存在を召喚するとは」
蛇の方は呆れ返っていると言う感じか。
どんだけジャッジって神様は信頼がないのだろう?
このまま暴走しないかちょっと不安になってきた。
「それじゃお兄さんはその子達を助けるために動いてるんだね。偉いな~」
「まぁ……助けられる命ぐらい助けても罰は当たんねぇだろ。それに気に入ってるしな」
「キャー!お兄さんのロリコン!!私の事ももらって~」
「せめてあと10年育ってから言え。小柄な女性が嫌いって事はないが、幼い女の子は流石に守備範囲外だ」
決して俺はロリコンではない。
子供は好きだが性的な目で見た事など1度もない。
「ところで私の事は?私の事は聞かないの?」
「そういや……転生者と話すのは初めてだな。そっちはどんな感じだった?ちなみに俺転移組」
「へ~本当に転移した人居たんだ。私の場合は物心ついた時から前世の記憶はあったよ。それから神様に貰ったスキルは全部使えたし、後は……好きなように生きてたかな」
「と言うかあのスキル強力過ぎない?あのナイフとか切れ味良すぎるだろ」
「あれもスキルで『絶対切断』ってスキルだよ。私が生成できるナイフで切れない物はないよ。有機物でも無機物でもね」
そう言って笑うのは止めようか。ちょっと怖い感じが出てるぞ。
「つなみに前世について聞いても――」
「あ、あの。その前によろしいですか?」
俺とジャックは手を上げながら聞く蛇に俺達は蛇に目線を移す。
そして蛇は意を決したように聞く。
「まさかお2人を召喚したのもジャッジじゃ……」
「そう言えば誰なんだろう?神様ってしか言ってないかったらよく分かんない」
「俺は知ってるぞ。この世界の創造神だってさ」
「え!?創造神様!!」
驚く蛇に対して普通に言う。
「はい。本人から直接頼まれたので」
「直接って……」
「俺が転移した先はどっかの神殿でして、多分そこで祀られていたのが創造神なんじゃありませんかね?まぁこれに関してはただの予想ですけど」
そう言うと蛇は少し考えこんでしまった。
なら仕方ないとジャックと話をする。
「なぁジャック」
「何お兄さん?」
「絶対そのキャラメイク、ジャック・ザ・リッパーが元ネタだろ」
「あ、やっぱり分かっちゃう?大好きなんだ~ジャック・ザ・リッパー。正体不明の切り裂き魔で世界で最も有名な切り裂き魔だよね!」
「でもさ……その姿を見る限りゲームのジャックぽくないか?女の子だし」
「もちろんそっちも意識してる。と言っても真似たのは白髪とショートヘアだけだけどね。後は露出度0のライダースーツだし、ナイフをしまう場所もない。でもジャックファンとしてはFG〇のジャックちゃんもいいな~って思ってます!」
「いや、確かに服装は違うだろうけどイラストとかで普通に描かれてない?大丈夫?」
「多分大丈夫じゃない?目は赤いし、成長するから今だけだろうし」
それならいいのだろうか?
でもこの世界だと普通にアニメとか漫画でしか見ない様な真っ赤な髪や青い髪、目の前には緑色の髪だったりとカラーバリエーションが豊かだからな。白はむしろ普通か?
「そんじゃ次。お前のあの暗殺テクどこで覚えた?普通じゃないだろ」
「ああ、人体の急所は大体分かるよ。私医者だったから」
「え、女医さん?」
「うん。と言っても司法解剖に携わってたから普通の医者とはだいぶ違ったけどね~」
そう言いながらジュースを飲む。
医者が人体の急所を知ってておかしくないわな。マンガやアニメの知識じゃ勝てないのは目に見えている。
ジャックは本当の人体のスペシャリストだ。
「道理で強い訳だ。それ聞いたら色々怖くなってきた」
「え~お兄さんと仲良くしたいな~。解剖してみたい」
「素で怖い事言うな。解剖してきた人に言われるとマジで怖い」
でも今の俺の身体ってどうなってるんだろう?
『変質』によって俺の身体を魔改造しまくった身体、生物学的に言ったら既に人間ではない様な気がする。
DNAは変化なしだと嬉しいのだが……本当にどうなってるんだろうな。マジで。
「……大体の事情は分かりました。それで姉達は?」
しばらく1人で考えていた蛇がそう言う。
「アセナ……狼の真祖や今まで開放した真祖達はその神殿に居る。会いたいのは分かるがもうちょっとだけ付き合ってくれ、子供達を助けてからのんびり帰ろう」
「分かりました。よろしくお願いします」
「そしてジャックはどうする?一緒に来るか?」
「うん!か弱い女の子を助けて」
「どこがか弱いんだよ。まぁ責任は持つ」
連れ出したのは俺だし、最後まで責任は持たせていただきますよ。
こうして今日から1人旅から3人旅に変わったのだった。




