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蛇、開放

 手を繋がれて一緒に歩くジャックは意外と大人しい。

 時々俺の顔と繋がっている手を見て不思議そうにしているが時々笑みを浮かべている。


 ………………この子は転生者なのだろうか?

 年の割に異常な力、子供っぽい所はあるが思考も早い、そして何より人間の構造をよく知っている。

 この世界の医療技術についてよく知らないが科学的な発展はろくに進んでいないと予想している。

 だがジャックはどう見ても人間の関節がどのように動くのかよく知ったうえで攻撃を仕掛けていた。たとえ経験から来るものだったとしても、見た目通りの年と仮定するならそれはそれで矛盾が出てしまう。


「ねぇお兄さん。お兄さんは私の事聞かないの?」

『ん?興味はあるが……この場所では落ち着いて話しすら出来ない。話をするのならこの国を出てからだな』

「アハハ~そっか。この国じゃ落ち着かないよね……」


 話をする気はないと思ったのか、ジャックはちょっと落ち込んだ様に見える。

 俺は鎧の中でため息をつき、ジャックの手を思いっ切り引っ張った。


「あわわ!お兄さん何するの!?」

『歩き辛い。乗っかっておけ』


 簡単に言うと肩車だ。ジャックも手を伸ばすのに苦労していたような感じがするし、ちょうどいいと思う。

 ジャックは「おお~」と言いながら俺の上で辺りを見渡す。

 こんな地下じゃ何も変わらないだろうにどこか楽しげだ。

 俺は時々スマホのマップを確認しながら進む事数分。ようやく資料室の前に着いた。


 資料室の扉はいつも通り強固な結界に守られている。

 だが俺の『変質』を使えば簡単に破壊できる。結界を破壊して入った資料室は本当にただの資料室と言う感じだ。

 図書館の様に本が並んでいる訳ではなく、様々な紙の束や埃の被った丸まった羊皮紙がそこら辺にある。

 多分資料分けはされているんだろうが俺から見ればちゃんと分けられているのかよく分からない。


 そんな資料室の中を歩いていると1人の女性が居た。

 服装はこの教会のシスター服。手以外露出していない守りの硬い服だ。

 女性は机に向って何か書いているような音がする。何らかの資料を纏めているのだろうか。

 ジャックは俺から降りてどこからか出したナイフを構える。

 俺はまずシスターに声をかけてみる。


『こんばんわシスター。少々失礼する』

「先ほどから外がにぎやかだと思いましたが貴方がにぎやかにしていたのですね」


 シスターは手を止めるとこちらに振り向いた。

 正面から見ても見えるのは口元だけ。キリエス教のシスターは肌をさらしてはいけないと言う教義でもあるんだろうか?

 そして俺は聞く。


『この部屋のどこかに真祖を封じている物があると知って来たのだが間違いないか』

「それでしたらあちらのネックレスがそうですよ。あれが目的と言うのであれば持って行ってください」

『止めないのか』

「わたくしには戦う力はございませんので止める事は不可能です」


 何て言うがこのシスターはおそらく強い。強者の気配を隠している気がする。

 だが邪魔をしないと言うのであればこちらにとっても好都合。そのネックレスを手に取る。


『………………』

「お兄さん?それが目的ならさっさと逃げようよ。こんな国から」

『残念だがまだ帰れない様だ。シスター、1つ聞いてもよいだろうか』

「なんでしょう」

『このネックレスに封じられている真祖はどこにいる』


 このネックレスの中に真祖の気配が全くしない。

 その残滓と思われる気配はするが真祖本体が居る気配はしない。

 となると既に解放されている?その場合マップ機能ではここではない場所を示すと思っていたのだが……


「あら、わたくしは何1つ嘘はもうしておりませんよ」

『そうだろうな。嘘を付いたような様子はない。だが真実も告げてはいないだろう』

「ええ。お気付きになっていただき嬉しく思います」

『と言うかシスターが真祖だろう?』

「はい。わたくしが蛇の真祖です」


 あ~やっぱりか。

 ジャックは事情を知らない様でとりあえずナイフを霧散させた。

 だがどうしようかな……既に蛇の真祖が復活しているとは思ってもみなかった。と言うか雰囲気から察して自力で脱出したんじゃないか?

 そうなるとどのように脱出しようかな……


「よく分かんないけどお兄さんの目的はあのお姉さんでいいの?」

『まぁそれで合っている。では蛇の真祖よ、私と共に行動してもらってもよろしいだろうか?』

「構いませんが……何故わたくしと共に行動したいのか理由をお聞きさせてください」

『すまないがそれはこの国を出た後でも構わないだろうか?ここでそのような話をするのは情報漏洩に繋がりかねない』

「……あなたにとって重要な事のようですね。分かりました、質問は後で答えていただきましょう。このキリエスにも飽きましたし、出て行くのには丁度いいタイミングでしょう」

『それでは失礼する』


 そう言って蛇の真祖を俺の別腹に収納した。

 ジャックはそれを見て驚く。


「え、お兄さん今何したの?」

『収納しただけだ。ジャックも1度収納されてくれないか。脱出は1人の方が行いやすい』

「う~。ちょっと怖いけど……分かった」


 了承を得たのでジャックを俺の別腹内に収納する。

 それでは逃げようと考えていると、この資料室の中にもう1つ小さな気配がする。

 何の気配だろうと思いながら探してみると、そこには小さな蛇が居た。

 緑色の身体に金色の瞳、この資料室の隅で怯える様にとぐろを巻いていた。


 少し考えた後、この蛇にそっと手を伸ばす。

 蛇は舌を出しながら慎重に俺の様子を見る。じっと待つ事数分、蛇は俺の身体に巻き付いてきた。

 少し危険なので鎧の内側に招待し、俺の身体に直接まきつかせる。

 蛇のヒンヤリとした身体が少し冷たかったが、今はこれでいいか。


 俺はスマホを取り出してキリエスから脱出をした。

 マップで確認しながら順調に外に向かって走り、脱出を果たした。

 後は混乱に乗じて国を出るだけ。それだけの簡単な終わりである。

 それから時間稼ぎをしていたソニックドラゴン達には1度バラバラに逃げてもらい、その後合流する事になっている。

 中々の暴れ具合だったらしく、国中が倒壊していた。

 ざまぁ!!


 そんなキリエスをバカにしながら走っておよそキリエスから歩いて1日ぐらいの所で俺は止まった。

 そして別腹から2人を取り出す。


「ぷはぁ!ちょっとお兄さん!何なのあれ!!すっごく変な感じがしたんだけど!?」

『ただの空間収納だ。身体に害はない』

「それでわたくしを連れてきた理由をお聞かせ願いますか?」

『ああ。それでは内容を言おう』


 俺はシスターに近付いてその首を絞めた。


「がぁっ!?」

「あれ?お兄さん?」


 シスターの目は見えないが俺は強く言う。


『聞こえているか、キリエスの愚か者共。このようなつまらぬ手に引っ掛かる私ではない。次はもっと上手くやるのだな』


 そう言った後シスターの首を握り締めて殺した。

 死んだ後の死体は適当に魔力で吹き飛ばした。

 その様子を見てジャックは聞く。


「その人がお目当ての人じゃないの?」

『残念だがこの者ではない。だが目的は果たした』


 そう言ってから俺は鎧を解除した。

 俺に巻き付いていた緑色の蛇は地面に下りる。


「お兄さんその蛇を身体に巻き付けながら戦ってたの?」

「いんや、彼女はシスターが居た部屋の隅でとぐろ巻いてた。にしても本当に中途半端な罠だったよ。ったく」

「あ、お兄さんの素の話し方ってそう言う話し方なんだ」

「別に変な話し方でもないだろ」

「でもあっちの言い方の方がカッコよかったのにな~」

「あれ言い方考えるのマジで面倒なんだよ。変な言葉使いになってないかとか色々さ」


 何て話していると緑の蛇は緑色に輝いた。この光はアセナ達真祖が人の姿になる時の現象だ。

 光が収まった時に現れたのは緑色の髪をした女の子。ヤタに続くロリっ子だ。


「助けていただきありがとうございました。えっと、わたくしが本物の蛇の真祖です」


 幼い口調ではあるが知的な雰囲気も感じる。

 きっと大人になったら眼鏡の似合う秘書的な感じに育つだろう。


「俺はタツキ、あなたの姉妹である真祖達を解放している人間です。既にアセナ……じゃなくて狼、鮫、カラスの真祖は開放しています」

「はい。僅かですが姉妹の気配を感じました。ですがまさか私達を解放するもの好きが居るとは……」

「それはちょっと色々ありまして、まずは落ち着いて話せる場所に行きましょう。ジャックはどうする?」

「ここまで連れだしてさよならな訳ないよお兄さん」

「よし。それじゃ次の国か町で飯食いながらでも話そうか」


 こうして3人で次の国へと向かう事になった。

 ちなみにソニックドラゴン部隊は全員無事だったため夜の内に近くの国まで乗っけてもらった後別腹内に収納した。

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