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作戦

 ヴァロンランドからキリエスまでは歩いて1週間、馬車で3日ほどと言われている。

 正確な距離に関してはまだ世界的な統一はされていない感じがする。なのでどうしても人の足で、馬車で何日みたいな表現が使われる。

 俺の場合は飛んで1時間、走って数時間と言うぐらいだろうか?


 他と比べて圧倒的な速さで着くのは間違いないが……ヴァロンランドとキリエスの仲がよく分かると言うか何と言うか、綺麗に整備された道があるので空を飛んだりすれば絶対にバレる。

 流石に道を全て石畳にするとかそう言う所までは手が回っていない様だがそれでも他の道に比べればかなりまともだ。

 地面をならしてあるだけまだまだに歩きやすい。他の道じゃ自然のままの方が多い。


 そんな道を歩きながら夜になるのを待つ。流石に夜になれば飛んで行っても目立たない、少しぐらいキリエスがどのような所なのか直接調べてみたい。

 マップ機能だけでは分からない所もあるだろうし、なんだって百聞は一見に如かずって奴だ。

 それに俺のスキルを使った実験。これがどこまで上手くいくのかも気になる。

 何だって下見は必要だ。特に今回は教会の本部なのだから当然邪魔も入ってくるだろう。個人的にはジャンヌさんとジョージさんだけはここに居て欲しくないなっと思うし。

 偶然とはいえ助けた相手を殺すと言うのは気がのらない。その国でどんなことをしているのかマルダにもっと聞いておけばよかったか?


 そんな事を考えながら早歩きで既に夜。誰も居ない所で実験を開始する。

 今回実験するのは変質を使って魔物を生み出す事が出来るのかどうかという実験だ。

 一応この世界で探した俺にとって都合のいい生物は見付けて『捕食』しておいたので能力だけは使える。ただ実際に使ってみた事はないので使った際にどうなるのかよく分からないと言うのが問題だ。


 今回使う魔物の力はプラナリアによく似た力を持つ魔物だ。

 プラナリア、奇妙な動物特集に出ていた本当に摩訶不思議な生物である。不死にとても近い生物の1体である。

 その不死の原因となる細胞がノウダラケという細胞のおかげだそうだが、簡単に言うとプラナリアを切った際切られてバラバラになったプラナリアは全て本体として再生されると言う本当に不思議な生物だ。


 俺もこのプラナリアに似た生物と戦った時は本当に苦労した。

 殺して食おうとした時にぶっ飛んだ方がいつの間にか高速で再生され、不意打ちを仕掛けてきたのだから本当に驚いた。

 流石に細切れになったら再生できないだろうと思って細かくすべて手刀で切り刻んだら、それ全てが元の1体と変わらぬ戦闘力で襲って来たのだから数の暴力と言うものを本当に感じた。

 最終的には全て『捕食』で全員頭から尻尾の先まで丸のみにするような形でしか殺せなかった。


 そんなプラナリアに似たとんでも生物の細胞を使って魔物を作れないか考えてみたと言う訳だ。

 ただその際俺の細胞がどれぐらい必要なのか、腕1本?手1つ?それとも血を1滴垂らすだけで事足りるのだろうか?

 そう言った細かい点が分からないので今回の実験を行ってみる事にした。

 それに仮に複製が出来たとしても、俺の姿そのままだととても都合が悪い。


 だってその複製した魔物達にキリエスを襲わせ、その隙に蛇の真祖を助け出そうと考えているのだから。

 複製した魔物達の知能はよく分からないが正直頭は良くないと思う。俺の言う事を聞いてくれるだけで十分だと個人的には感じている。

 完ぺきに俺の代わりをしてもらうつもりはないし、今回だけの活躍のつもりなので正直使い捨てなのだから長生きしてもらっても困る。


 とりあえず血を1滴垂らして様子を見る。

 しばらくじっと見ていると……血を垂らした土に何らかの反応がある。

 周りの土をかき集めながらそれは少しずつ大きくなっていく。最終的には俺そっくりな何かがそこに立っていた。


「お前、話せるか」


 俺そっくりになった奴に話を聞くと、首を横に振る。


「俺の言葉は理解できてるか?」


 そう言うと頷いた。

 どうやら言葉は話せなくとも俺の言葉を理解する程度の知能はあるらしい。

 こうなると使い捨てとしては使い辛いが、ある程度の知能は必要だと思う。ならば彼を攻め込む際の群れのボスとして使うのがいいのかも知れない。

 後他の者は俺と似ない様に作ればいいだろう。


「とりあえず俺のしたい事は分かってるか」

「(コクコク)」

「ならお前にはキリエスに攻め込む際の指示を出してもらう。それから姿形を変えられるか?」


 そう言うと彼は俺に言われたように姿を変える。

 変えた姿はこの間食ったソニックドラゴンによく似ていた。サイズは一回り大きいし、鱗も固そうだ。これなら戦力として申し分ないだろう。

 では次は最初からこれと同じ魔物を生成する。

 さらに血を満足する数になるまで垂らして複製。結果20体のソニックドラゴンが生まれた。


 恐らくただの国規模であればこれで十分だろう。

 しかし相手は教会の本部。どんな強者が居るのか分からないし、ソニックドラゴンを倒せる相手が居ないとは言い切れない。

 俺は彼らに言う。


「今度の夜にキリエスを襲う。その際君達の役割は2つ。1つは時間稼ぎ、俺が蛇の真祖を封じている物を見付けて取り出すまで待ってくれ。2つ目は勇者召喚の祭儀場を破壊する事。積極的に行ってほしいとは思うが無理をするほどではない。余裕があれば程度でいい。以上だ。理解できたか?」


 そう言うと生成された者全員が頷いた。

 なら彼らには攻める前までは俺の別腹の中で待機してもらおう。細長いとはいえ21体のドラゴン、共に行動するには目立ち過ぎる。

 という訳で彼らを別腹内にしまった後、再び俺は歩き始めた。徹夜して歩けば3日目あたりには到着するだろう。


 -


 とりあえず徹夜して歩いたら3日目の朝に到着した。

 と言ってもキリエスに入国できないのは知っているのでその周辺で待機する。


 キリエスと言う国を見て俺は正直歪な様に感じる。

 その理由はキリエスを守る壁の周りに小さな町の様な物が形成されているからだ。

 町と言ってもほとんどが路上販売と言うか、祭りの屋台の様な感じで質素な感じ。物を売っている店はみな敷物を引いた上に商品を置いているだけだし、少し油断すれば置き引きとかスリとかそう言う犯罪に遭いそうだ。


 教会本部が目の前にあるのにその恩恵を与えられない人達、の様な感じがする。

 俺はとりあえず朝飯として屋台で串焼きを売っている店で串を10本ほど買って食べながら話をしてみる。


「こんな所で売ってて売り上げはいいのか?」

「それなりに、かな。ここに居る連中は全員異常だからな」

「異常?……俺が知っている商人達と何も変わらなそうだが?」

「それは()から見た場合だよ。俺達は本当はあのキリエスの中で住んでたからな」

「キリエスの中?中ってどんな風なんだ?」

「俺から言わせればつまらない国だったよ。全て与えられて、神様に祈りをさせげるだけの毎日。確かに外の世界は厳しいが何故だかこっちの方が性に合ってる。()の方が安全で安定してるのは確かなんだけどな」


 何て屋台のおっさんは言う。

 つまりこの町はそんなキリエスの中から出て来た者達が作った町だと言うのだろうか?

 おっさんは自分の意志で出てきた様だが他の中に居る人間はどうなっているのだろう?


「中で住んでる連中はどんな生活を送ってるんだ?」

「俺が若い頃と変わらなそうだな。最近外に出てきた若い奴が言うには昔と何も変わらないらしい。朝昼晩と変わらない食事、勉強は聖典を読めるようになるだけ。俺はこの外で商売している方がよっぽど面白い」

「中に戻りたいって連中は居ないのか?」

「たまに出てくるが……1度外に出たら2度と戻ってこれねぇよ。あの国は1度去った者に戻る場所はない。冷たい国さ」


 去った者が戻る事はできないか。

 それは少し寂しいと思う。俺はともかくとして地元に帰りたいと言う感情は誰にだってある物だと思う。

 それを否定する国があるとは思ってもみなかった。


 おっさんともう少しだけ話して俺はその場を別れた。

 国の外を見て回りながら作戦を考える。

 おっさんが言うにはこの路上販売の人達は常にここに居る訳ではない。昼過ぎには帰り支度をして家に帰るらしい。

 キリエスからおよそ半日歩けば着く距離だそうで、キリエスから外に出て来た者達の小さな村があるそうだ。

 そこでおっさんの様な人が新しく外に出てきた若者に外で生きていく術を教えるのだと言う。


 なので昼を過ぎればキリエス周辺に人は居なくなる。

 さらに言えばキリエスに入れるのは午前中のみ。しかも教会騎士、もしくは巡礼者が来た場合のみ門は開かれる。なので周囲に人は誰も来ないのだ。


 こんな国がよく今まで生き残ってこれたものだと思う。

 それともこの国の中に居る教会騎士達はそれほどまでに強いのだろうか?

 はたまた異世界から召喚された人達が、これでもかという程に居るのだろうか?

 なんにせよ油断はできない。

 俺は改めてこの国をスマホで調べながら夜になるのを待つのだった。

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