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ドラゴンを売る

「タツキ先生王様と会うのか!!スゲェ!!」

「と言うかその前に先生が国中で話題になったドラゴンを倒してたなんて……」

「タツキ先生カッコいい」

「そりゃどうも」


 王様に会う前日。王様に会う準備が必要と言う事で今日と明日は有休をもらった。

 と言っても礼服はこの間リゾートに行った時のがあるし、ほとんど普通の有給である。

 デスクワークばかりでパソコンのありがたみと言うものを強く感じた。コピー機も当然ないので同じ内容の物をひたすら書くのは本当に面倒臭い。

 あの仕事に遠い目になっているとヒノ先生が言う。


「ほとんど他のクラスの手伝いですからね。このクラスは少人数なのであまりやる事は少ないですが」

「ですがねヒノ先生。あの量はないでしょ?色んな所から手伝ってって来たのがまるわかりですよ」

「仕方がありませんよ。一応遠くに住んでいるご家族にご報告しなくてはいけないのですから」

「それは……仕方ないですけどね」


 子供を預かっている身としてそういう報告が大切と言うのは分かる。

 それにこの世界には魔物が蔓延っているので手紙を送る際、3枚別々のルートで届ける必要があると言うのも仕方がないのかも知れない。

 でもな……頭では分かってても実際に書けと言われるととんでもない疲労感がマジ半端ないんですよ。

 同じ作業をひたすら繰り返すとしても体を動かす感じがいい。ただひたすら手紙とにらめっこしているのなんてマジ大変。


「タツキ先生大丈夫?」

「あ~ギリギリ大丈夫だ。多分」


 トキは俺のあぐらの上に座って首をかしげる。

 俺は何故だかトキに好かれている。

 なんでだろうな~とぼんやりと考えるが、生徒達を助けようとしているのが伝わったと信じたい。


「と言う訳で明日はお城でドラゴン売ってくる」

「お土産買って来てくれよ!」

「いや、この国の王様だからな?お土産も何もこの国のもんだからな?」


 調子の良い事を言うヒカルに全員笑った。

 さてと、ちゃっちゃと売って金に換えるか。


 -


 と言う訳で翌日。俺は王城で片膝付いて王様と会った。

 感謝状を直接王様からもらい、ドラゴンを売って終わった。

 他に何か言う事はないのか?ある訳なかろう。


 言うとしたら白亜金貨200枚で売れたと言うだけだ。俺の目的はあくまで生徒達を救う事であり、国王様と親しくなったところでどうしろと?

 ただ記念にドラゴンの頭だけは売らずにはく製にして飾ると言っていたぐらい。俺としては、はいそうですかで終わりである。


 まぁあと言うとしたら感謝状の他に記念品として短剣をもらったぐらいか。

 実用性ではなく、鞘とかに宝石をくっつけているので美術品としての価値は高いのかも知れない。それに短剣の柄の部分にはこの国の国旗が記されていたし、いい記念品になっただろう。


「で、これがその時もらった短剣」


 それを今生徒達に見せていた。


「スッゲー。これどれぐらいの価値があるんだ?」

「さぁ?そんなの王様に聞けないし、かと言ってギルドに価値を聞きに行くのも何かな~って思うし」

「と言うかこれ本当に国宝級のお宝じゃないんですか?良いんですか?僕達に見せて?」

「壊さなければ持ってみていいぞ?」

「タツキ先生すごーい!!」

「ありがとなトキ」


 ヒカルは短剣をそっと抜いて「おお~」と言いなら手に取って見ている。

 カエルは短剣を壊したくないからか遠くから見ている。

 トキはヒノ先生と共に居る。

 その日の先生は俺の行動にちょっとだけ困った表情をしていた。


「あまりこう言う物を生徒達に見せるのはどうかと思うんですが……」

「実用性0の武器ですもんね」

「そういう意味ではなく、こういう価値のある物をむやみに見せるのはどうかと思いますよ?」

「そうですかね?ただの記念品ですが……」


 個人的な言い方をすれば、オリンピックでメダルを獲得できた選手が母校で後輩達にメダルを触らせる。みたいな感じのノリだったんだけどな……


「なぁタツキ先生!!俺達もでっかくなって強くなったら、こう言うのもらえたりするのかな!?」

「ん~その辺は運だが……ドラゴン倒せるぐらいに強くなればその内もらえたりしてな」

「本当か!!」

「多分な」

「それじゃタツキ先生!今すぐ試合しようぜ!!」

「その前にそれ返せ。それ切れ味悪いから武器としては扱い辛いぞ」


 そう言ってヒカルから記念品を取り返した。

 その後暇潰し感覚の軽い試合を何度か繰り返し、程よく生徒達が疲れたところで休憩を入れた。


「あー!また勝てなかった!!」

「先生手加減なしですよね……もうちょっと手加減してくださいよ」

「先生大人げない」

「はっはっは。まだまだお子ちゃまであるお前達に負ける訳にはいかないのだよ」

「はいみんな、ちゃんと汗を拭いて。体冷やしちゃうわよ」


 そう言ってヒノ先生が注意を促す。

 疲れている状態と言っても全く動けないほど厳しくしごいたわけじゃないし、みな足取りはしっかりとしている。

 そして1人、カエルが俺の側で小さな声で聞いてきた。


「先生。俺達、本当に大人になれるんですか」


 …………………………


 重い。正直にそう思った。

 当然の事だと思うが普通の人生を送ってきた俺にとって難病にかかった子供とか、生まれつき体が弱い子供と言うものはテレビやニュースでしか知らない。

 普段ヒカルを筆頭に生徒達は元気に遊んで勉強している姿を見ていると、そのうち死んでしまうとはとても思えない。

 だがこのまま何もしなければ死んでしまうのは確実。不安に思うのは当然だろう。


 だからと言って同情的に声をかけるのが正解だと思っていない。

 所詮俺は彼らと同じでないし、重い病気にかかった事などない。

 そんな俺が彼らの何を知って、何を語れると言うのだろうか?俺は何も語れるはずがない。

 所詮俺は健康な人間。生活習慣だとか後天的に病にかかった者ならともかく、最初っから体に時限爆弾を抱えて生きてきた訳ではない。


 なら何を言えばいいのか。

 俺が今している事だけだ。


「もうすぐ手伝ってくれそうな人に会えそうだ。その人が来たら忙しくなるぞ」


 スマホである程度召喚について真面目に調べてみた。

 悪魔に関しては召喚条件はゆるかったが、天使と精霊に関して少し厳しい。


 天使はどこぞの神殿で召喚する必要があるのだが、その召喚される天使に関してはその神殿で祀られている神様の天使しか召喚出来ない。

 つまり五穀豊穣の神様の天使を召喚するとすれば自然とその属性の天使しか召喚出来ない。


 精霊は自然の豊かな環境で召喚すればどうにかなる。

 ただし俺が今回召喚したい上位精霊を召喚出来るかは、生徒達の運と実力次第。


 最後に悪魔は召喚が緩いと言ったが、それは対価に見合うものを用意出来ればの話だ。

 悪魔達にとってまず()は価値のない物とされている。理由は精神生命体である彼らに衣類だの武器だのを与えた所で触れる事すら出来ないのだから当然だ。

 最も喜ばれるのは依り代。手っ取り早く言えば人間の死体などを用意出来ればいいのだが、今回は生徒達の魔力を安定させる事のなのだから意味がない。

 それに彼らの思考は分かりやすいほど悪と言えるものなので避けるべきだとマコトにも言われた。


 なので今はその自然豊かな場所を探している。

 俺の家でもいいのだが……流石に助けるために普通の人間達から恐れられている場所に行くのはどうかと思う。

 それで他の場所を探してみた結果。南西にある国、ユーラニアと言う国がいいのではないかと考えた。

 ユーラニアは精霊信仰と言う精霊を信仰する宗教が盛んの様だし、事情を説明すれば精霊を召喚するのを手伝ってくれるかもしれないと言う思惑もある。


 と言ってもまぁ全て始めるには蛇の真祖を助け出してからになるのだが。


「見つかりそうなんですか?」

「ああ。もうすぐ会わせるからもうちょっとだけ待ってろ」

「………………はい」

「おーいカエル!何話してるんだ~?」


 短い話をしている間にヒカルが声をかけてきた。

 カエルは何事もなかったかのようにいつも通りの態度でヒカルに駆け寄る。

 ヒカル、カエル、トキ。この3人とヒノ先生がいるこの光景を決して乱してはいけないのだと思う。

 例え普通とは言えなかったとしても、幸せそうだと言えるこの光景を壊しはいけない。


 さてと、そろそろ教会に喧嘩売りに行きますか。

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