腕試し
さて始まりました、俺対生徒達のバトル!
まず初めに勝負を仕掛けてきたのはヒカル・コノエだ!
「たあぁぁぁ!!」
勢いよく跳んで上段からの攻撃のつもりだろうが、空中に居るから避けられたら終わりなんだよな。
俺は高速で動いてさっきまでヒカルが居た位置に移動する。
突然現れた他の生徒2人はとても驚いていた。スパーキングレオの応用移動だからな、多分光速だぜ!
流石に高速で動いた俺の事を見失ったヒカルは着地して当たりを見渡す。
「お~い、俺はこっちだぞ」
「な!?避けるなよ!」
「普通は避けるから。俺はただの的じゃないんだぞ~」
「うるっせぇ!!」
そう言って手から炎の塊を出す。でもデカいだけで大した威力はないな。
でも一応後ろにはほかの生徒達が居るし、受け止めておくか。
たいした火力もない、ただの炎など魔力を使って身を守る必要もない。素手で受け止める。
小さな爆発音はあったが、痛くもかゆくもない。
多分だがあいつに炎への適性はないんじゃないか?どうせぶっ放している理由はカッコいいからだろう。
「ヒカル!無理に炎に変えないでただの魔力弾にしなさい!」
「でもヒノ先生の炎は凄いんだから俺だって出来る様になるんだ!!」
そう言って今度は散弾式、ポ〇モンなら火の粉か。
1発1発は小さすぎるし威力も弱すぎる。これじゃ牽制にすらならない。
おそらくヒノ先生の炎に憧れがあるんだろうが……でもこれじゃぁな~
劣化版どころか再現率10%にすら届かないただの粗悪コピーだ。何の価値もない。
「俺の言葉はともかく、ヒノ先生のアドバイスぐらいは素直に聞いた方が身のためだぞ」
「うるさい!だああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「全く。まだまだ子供だな」
火の粉を止めて、剣に炎を纏わせた状態で再びヒカルは飛ぶ。
ホントその技好きだな。そして現実を教えてやろう。
俺はその剣を片手で掴み、思いっきり振った。
「わ!」
その勢いに負けてヒカルは剣から手を放し、グランドに転がった。
「ヒノ先生。これで俺の勝ちでいいですよね?」
「はい。タツキ先生の勝ちです」
「くっそ!」
悔しそうに地面を殴るヒカル。
本当に今まで負けなしだったのか?そう思えば納得できなくもないが……本当にこんなので?
もしこのぐらいで強いと言うのであればこの世界の人間は思っている以上に弱い。
いや、身体能力的な話であれば元の世界の人間とう変わらないのは当然だとしてもだ。この世界にはスキルがあるのだから、もっと強いのが当然だと思っていた。
だが実際の所はそうではないのかも知れない。
教会が推奨している異世界人の召喚。この世界の人間の弱さと関係があるのかも知れない。
俺が食ってきた魔物達は必ずスキルを有していた。獣と言う面が強いせいか、単調な物が多かったように思えるが、それでも命の危険を十分に感じられるほどの脅威だ。
それに対してこの世界の人間はあまりにも弱すぎる。
元の世界じゃ銃などの武器によって優位性を生み出していたが、どう見ても元の世界の物よりもこの世界の武器の方が優れている面が多い様に俺は感じる。
何もない所から炎や水を放ち、物理現象無視してない?と思える攻撃だって出来る。
だがそれでも足りない。
この世界の魔物に勝てるだけの武器を作り上げる事が出来ていないと感じる。
この差は何だ?何故魔物は強力なスキルを保有して生まれるのに、人間はこれほどまでに弱い。
知識や身体能力の差だけでは説明しきれない感じがする。
「おねがいします」
「ああよろしく」
そんな事を考えながらも次の試合だ。
次の相手はカエル・マクリーン。12歳と言うだけあって生徒達の中では1番背が高い。
彼は拳を構えて俺に突っ込んでくる。
しかもただの拳ではなく、魔力を纏わせた拳だ。この子はきちんと自分の力をコントロールできている感じがする。
「ふっはあ!」
攻撃方法は主に上半身のみ。足はすり足のように動かして動きは遅いが堅牢な守備の方が目立つ。
俺は正直手加減が苦手だ。今まで魔物を相手にしてきたのだから常に殺す攻撃しかしてきていない。なのに突然死なない様に手加減するのはまだまだ不得意である。
だがこのままかわすだけでは試合にならない。
俺はカエルの拳を掴んで投げた。地面に叩き付ける様にではなく、遠くに飛ばす様な感じで。
これで終わればと思ったが、カエルはゴロゴロと転がって衝撃を逃す様に動く。
俺は追撃せずその場で立っていたのでカエルはゆっくりと起き上がった。
もう少し強くしてもいいかもしれない。
「ヒノ先生。もう少し強くしてもいいですか?」
「はい。大丈夫です」
一応許可も貰えたので今度は俺の方から動く。
真正面から拳を引き、カエルの胸部分を狙った。
カエルは慌てて腕を交差させて守る。が、勢いが強かったせいか随分と身体が浮いて1m程飛んだ。
また続けるか俺はじっと見ていると、カエルは自分の手や腕を確認するようなしぐさをした後、ヒノ先生と俺に向かって言った。
「参りました。引くのも大事な事、ですよね先生?」
「ええ。でもちゃんと学んだ?」
「はい。タツキ先生は強いです。今の僕じゃ勝てません」
そう言って棄権した。
ヒカルはさらに悔しそうな表情をする。
堅実なのはいいが……もうちょっと根性的な物を見せて欲しかったな。
そして最後、トキ・クロサキ。
典型的な日本人の女の子って感じだ。瞳も髪も黒く、将来美人になりそうだな~って感じ。
その手には本を持っているが……魔法系か?
「アクアジェル!」
お、確かこれは人魚姫も使っていた水の檻だな。
制御は……まだまだ甘い感じがするが、年相応とも言えると思う。
だが残念。トヨヒメに卵の殻を食ってから水系の魔法は効かないのだよ。
俺は何て事無く出てきた。ただ全身が濡れてちょっと嫌な感じだ。
「え?何で?」
困惑するトキに向かってゆっくり歩く。
まぁ普通だったらあれで終わりだろうな。触れれば大怪我じゃ済まない結構えげつない魔法だし。
困惑していたトキだが、俺が向かってくるのを見て様々な魔法を使う。
地面を底なし沼の様にする魔法だったり、切り刻む風の壁だったり、氷の槍だったり、まぁとにかく様々な魔法を俺にぶつけてきた。
大人しい様に見せてえげつないなこの子。この世界の女の子は確実に殺す事を重視しているのか?
そしてその魔法を全部受けた上で正面突破すると、既にトキの目の前に居た。
時は怯えている感じだが俺はしゃがんでポンとトキの頭に手を置いた。
「俺の勝ちでいいか?」
「う、うん」
これで全勝だな。
時は俺から逃げる様に離れてヒノ先生の方に行った。分かっていた事とは言えあそこまで拒絶されると凹むな~。
そして彼らのちぐはぐさもよく分かった。
最後に時に触れた際、軽く体内の魔力量を探ってみたのだが……本当にただ魔力が溜まっているだけと言う感じがした。
おそらく召喚された際にスキルなるはずのエネルギーが、そのまま体内で魔力としてとどまっている感じがする。だと言うのに普段からの呼吸などによって自然と入ってくる魔力のせいで余計に魔力が増えている感じか。
確かにこれでは戦闘だけで消費するのは無理。
何らかの方法で制御してもらえる存在を用意しないといけない事はよく分かった。
となると蛇の真祖をどうやって助け出すかだが……
「おいタツキ!もう1回勝負だ!!」
「え?まだやるのか?」
「勝つまでやってやる!!」
そう言って剣を構えるヒカル。
どうするべきかヒノ先生を見ると、付き合ってあげてくださいっと言っている様な気がした。
「分かった。それより言葉使いがなってないな~先生って認めてくれないのならしない」
「うぐ。分かったよ……タツキ先生」
「それでよし。そんじゃそっちから来な」
手招きしながら俺はヒカルの相手をする。
さて、蛇の真祖を助けるまで色々面倒見ておきますか。




