教師生活始まりました?
準備期間が終わり俺は副担任として初めて授業に参加する。
ヒノ先生と共にその教室に向かう。
「タツキ先生、覚悟はよろしいですか?」
「どんな覚悟です?」
「最近のあの子達は死が近いと考えているので少々……」
「まぁ……その時はどうにかしますよ」
暗い雰囲気なんだろうか?
お通夜みたいな雰囲気だったら嫌だな……参加した事ないけど。
ヒノ先生の後を歩いて行くと1つの教室の前で止まった。
聞こえてくる声は確かに3人分、情報にあった通り男の子の声が2つ、女の子の声が1つする。
「タツキ先生は少し待っていてください。私が軽く紹介してから入って下さい」
「分かりました」
ヒノ先生は扉に手をかけて呼吸を整えると扉を開いた。
俺は廊下で少し待つとする。
「はーい、ちゅうも~く。みんな席に座って。今日から先生のお手伝いをしてくれる先生を紹介します」
「どんな人ですか!」
「俺が見極めてやる!」
「どんな人?」
あれ?教室から漏れ出てくる声からは元気な声。
とても余命を告げられた声には聞こえない。
むしろ元気良過ぎる感じがするのは気のせいか?
「これから呼ぶのはタツキ先生です。あんまり困らせない様にしてね」
「「「はーい」」」
「それではタツキ先生、お願いします」
う~ん。
普通の小学校ぐらいの感じにしか感じない。
病気みたいに少しずつむしばんでいくような類じゃないって事か?
まぁとにかく呼ばれたのだから教室に入る事にしよう。
教育実習生の人達ってこんな気分なのかな~なんて想像してみたり。
扉を開けると男の子が剣を片手に跳んでいた。ヒノ先生は止めようと動いているがもう遅いな。
にしても体内にある魔力の1部を使って身体能力をあげてるのか?それなのに魔力が暴走してそのうち死にますって何か矛盾してない?
なんて思いながら俺は彼の剣を指で挟んで止めた。
彼は驚きながら剣に捕まったままぶら下がる。
「随分元気だな~。しんみりした空気よりよっぽどマシだ。うんうん、元気が1番」
そう言ってから俺はそっと下した。
剣を放すと彼は直ぐに後ろに下がって剣を構え直す。
「お、お前誰だ!?」
「誰ってさっきヒノ先生が紹介してくれただろ?俺はタツキ、今日からこのクラスの副担任をする事になった。よろしく」
何てことなく普通に挨拶をした。
プロの剣ならともかく、軽くてただ振り下ろしただけの子供の剣にビビる俺ではない。大人と子供の差をこれ以上ないぐらい徹底的に教え込んでやろうか?
「こらヒカル!いきなりそう言う事はするなって前に言ったよね!!」
「だって先生!この人本当に強いのかどうか知らないから確かめただけだ!」
「それはこの前話したでしょ?全くやんちゃなんだから……」
こいつがヒカルか。小生意気な感じのする男の子だ。
となると俺の事をじっと見ている男の子がカエル・マクリーン、本を持っている女の子がトキ・クロサキか。
普通の子供みたいにはしゃいだりしないのかね?
「先生の方は大丈夫ですか?」
「魔物の攻撃に比べれば軽いもんですよ。それじゃ……改めて自己紹介でいいですかね?」
「はい。お願いします」
教壇からそれたヒノ先生に変わって教壇に立ち、自己紹介をする。
「俺はタツキ。今日からお前らを救う手伝いをする事になった。ちゃんと助けるまでは面倒見るんでそこだけは安心しな。以上!」
教師としてのやり方なんて分からない俺にはこんなもんである。
子供達……いや、生徒達は不審者を見るような目で俺を見るが気にしない。
だって俺はこいつ等を助ければ後はこの学校に任せておけばいいだけなのだから。
「タツキ先生には今日から実技演習の方で手伝ってもらいます。それ以外は私の細かい所をサポートしてもらうだけだから授業は変わらないからね」
「体育の先生程度に思ってくれればいいから。それじゃ早速グランドに移動するぞ~」
俺がそう言うと渋々と言う感じで生徒達は動き出した。
その間に確認をしておく。
「それで俺がするのは組み手だけで本当にいいんですか?」
「はい。剣や魔法に関しては私の方で指導していますので、複数の方に教えられると逆に混乱してしまうかも知れませんから」
それは確かに。
色んな人からアドバイスをもらうと言うのは間違いではないと思うが、師匠は1人だけで十分だろう。
色んなやり方だけ教えてもらっても、実際に使えるかどうかは分からないからな。
そんな事を思いながらグランドに移動する。
体操着に着替えるのかな~っと思っていたが制服のままだ。
「あれ?あのままでいいですか?」
「むしろあの方が安全なんです。魔物の素材と混ぜて作られた制服ですから、普通の服に比べると制服のままの方が安全なんです」
「なる程」
俺がマコトに作ってもらった服とそう変わらないか。
俺は軽く気合いを入れるが生徒達はそうでもないらしい。
ゲーム性を高めた方がやる気が上がると思うが、どうするかな?
「不満そうだな。何が不満だ」
分からない事は直接聞く。
分からないままにしているよりはマシかな~っと言う判断で聞いてみる。
聞いてみるとヒカルが答えた。
「だっておじさん、本当に強いの?」
「それなりにな」
ってあれ?俺もうおっさんに見える?まだ18なんだけど?
「ヒカル!タツキ先生にそんな言い方はないでしょ!」
「でもヒノ先生より強い奴なんて見た事ないじゃん。本当にヒノ先生より強いの?」
それに同意するように残りの2人もじっと俺の事を見る。
よく分からないがヒノ先生より強いかどうか不審に思っているみたいだ。
特別誰かと比べた事はないが……ヒノ先生は結構強いと俺は思っている。
確かに彼女に比べればどうか分からないな。
「さぁ?でも最低でもお前らよりは強い。それだけは確かだな」
そう言うと生徒達はムッとした態度を取る。
どうやら自分達は強いと勘違いしているみたいだ。
ならまずは俺の実力を教えてやるか。
「ヒノ先生。彼らと賭けをしてみてもいいですかね?」
「賭けですか?」
「はい。俺が勝ったら……先生として認めてもらう。俺が負けたら……何がいいよ?」
そう生徒達に聞いてみたら顔を合わせて相談する。
「どうする?」
「私、新しい本が欲しい」
「そう言うのはヒノ先生が許さないだろ。物じゃない方がいいんじゃないか?」
「ならあいつに出て行ってもらうってのはどうだ?あの嘘吐きに」
「でもあれでもヒノ先生が認めたんじゃ?その条件を呑むかな?」
「その時は適当にからかってやればいいんだよ!所詮ヒノ先生より弱いって」
好き勝手言ってくれるな~チビ共。
こそこそ話しているつもりかもしれないが、丸聞こえだぞ。
「そろそろまとまったか~」
「おう!俺達が勝ったらお前はこの学校から出て行ってもらうぞ!!」
「何言ってるの!?タツキ先生は――」
「別にいいぞ」
「タツキ先生!?」
ヒノ先生は驚きながら俺の顔を見る。
「大丈夫ですって、勝てばいいだけの話です」
「ですが……子供でも彼らは強い方です。油断していると……」
「なら油断はしません。そんじゃ試合形式は1対1でいいのか?俺対お前ら全員でも構わねぇぞ」
何て言うと分かりやすく怒る。
やっぱり子供は素直でいいね~
「俺が最初に決めてやる!!」
そう言ったのはもはやおなじみ、ヒカル君である。
さて、適当に遊んでやりますか。




