やっと外に出ました
神殿を出て早1週間。現在の俺は今どの辺に居るのか全く分からない!
つまりこの巨大な森で迷子、いや遭難しています!!
あ~笑えねぇ~!!笑えねぇけど笑ってないとやってらんねぇ~!!
この森の中で暮らしている間にある程度方角は勘や木々の配置などで分かるようになったつもりだったのだが……現実はそう甘くはないらしい。
ただかなり森の外には向かっているはず、それは歩いている感覚で何となく分かる。
ただ問題はどれぐらい進んだのか分からないって所なんだよな……
と言うかこの森広過ぎない?もう1週間は歩いてるのに森の外にすら出れないってどう言う事?確かに途中獲物を捕まえて飯にしたりしたけどさ、全く違う方向に進んでいる気もしないんだけどな?
それに取れる獲物も大分変った。神殿の近くに居た連中とは弱すぎるぐらいの動物達が数多く存在する。
ただ人間と同じぐらいデカいだけの猪、3mぐらいの熊、その角で木々の間本当に通れるの?ってぐらい立派な角をした鹿などちょっとデカいだけの動物が存在する。
いや~神殿近くの動物に比べたら本当に雑魚だな。
雷纏った感じで襲ってくるライオン、アシュラみたいに腕が6本もある熊、口からとんでもない量の水を吐き出すワニなどなど、狩りゲーか!!っとツッコみたくなる様な動物達が生存しているのだから。
異世界マジ半端ね~。ま、そのおかげでそいつらのおもしろ能力全部習得済みだけどな。
ただスキルとして発現する事はなく、『食物連鎖』に組み込まれている様なので自分でも判別できないぐらいの能力を得ているはずなんだが……
「…………!……はぁ!」
ふと何かの音が聞こえた気がした。
よく耳を澄ませてみると金属音が聞こえる。
金属音?この森の中でそんな音聞いた事ないんだが……
「この!はぁ!!」
「…………さん!早く、逃げ!!」
まさか、人がいるのか!?そしてこの音は何かと戦っている?
そう思うと俺は慌てて走り出した。聞こえてくる声色から何か焦っている様な感じがしたので何らかのピンチなのではないかと思う。
身体強化を利用して走りだすと、すぐ現場に到着した。
西洋の鎧を着ている金髪のショートカットの女の子が猪に向けて剣を向けている。
その後ろには同じような鎧を着た茶髪の女の子と、彼女が抱きかかえている鎧姿の男性が腹部から血を流していた。
これは大変だと思い、俺は声を掛けた。
「おいあんた等!!大丈夫か!?」
そう言うと抱きかかえている方の女の子だけが俺に振り返る。金髪の娘の方は猪を警戒していてちらりと俺の方に目線を動かしただけだ。
「な、何で人がここに。それより逃げて下さい!!ビックボアです!!」
「いや、むしろあんた等の方が逃げるべき状況でしょ?ちょっと待ってな!今血止めを――」
「逃げて下さい!!」
金髪の女の子がそう大声を上げた。どうやら猪が俺の方に向かって突進してきた様だ。
だがその程度で動じる俺ではない。
俺は猪を真っ直ぐ見据えてその鼻に思いっきり拳をぶつけた。
「人命救助の邪魔だ!!」
「プギィィィ!!」
猪は大きくぶっ飛び、木に激突した。猪も脳震盪を起こすのか、木にぶつかってから動く気配はない。呼吸音は聞こえるから死んではいないと思うが。
それよりも血を流している人の処置の方が先だ。
俺は男性に近付く。
「こりゃ……ギリギリって所だな」
「あ、あの。い、今ビックボアを」
「そんな事よりこっちの方が優先。治癒魔法って使えるのか?」
「つ、使えません。でもこのままじゃ……」
現在女の子は布を傷口に当てて止血しようとしているが、その前に出血多量で死ぬ可能性の方が高いな。
俺は別腹から取り出した血止めの草を男性の傷に押し当てる。男性は少し苦しそうな声を上げたがこれで血は止まるはずだ。
「その草は」
「血止めの草だ。こうやって押さえておけば血は止まる。でも傷を治す物ではないから治癒魔法か自力で回復するのを待つしかねぇんだよ」
「そうなんですか。ありがとうございます」
「別に、お礼はこの人が生き残ったらの話だ」
「後はお任せください」
振り向くと金髪の女の子が立っていた。どうやら猪にとどめを刺した様だ。血の匂いがする。
金髪の女の子は俺が血止めに使っている草の上から布で巻き、彼を動かそうとする。
「ちょっと待て、俺が運ぶ」
「しかし彼は私の仲間です。こういう時は私が動かないと」
「それでも鎧を着た男1人を抱えて動けるのか?俺がおぶっていくから道案内頼む」
「ですがこれ以上お世話になる訳には――」
「ジャンヌさん。ここはお力を借りましょう。あたしかジャンヌさんがジョージさんを抱えては戦えません。確かに私達は騎士ですが、こういう時は素直にお力を借りましょう」
「……そうですね、それが最善と言えます。もう少しお力を借りてもよろしいですか?」
「いいよ。その代わり道案内よろしく」
こうして俺は騎士の男性を負ぶって移動する事にした。
彼の剣は現在俺が持っている。本当はこういう使い方をしてはいけないんだろうが、負ぶっている彼の尻の下だ。簡易的な腰掛けとして使わせてもらう。
そして2人の女性騎士を先頭に俺達は森の外を目指す。
「そう言えば自己紹介がまだでしたね。あたしはマルダ。教会騎士見習いです」
そう茶髪の娘は言った。
結構明るい感じと言うか、ムードメーカーな感じがする。女の子らしく小柄で、ちょっと幼く見える。
「私はジャンヌです。教会騎士です」
金髪の娘は周囲を警戒しながら言う。
何だか堅苦しい感じがするな。生真面目と言うか、真面目な委員長タイプと言うか。
「俺はタツキ、この辺で迷子になってた」
「え!この森で迷子ですか!?よく生き残りましたね……」
「運だけは自信があるからな。そして俺達は今どこに向かっているんだ?」
「今は1番近くのイングリッドに向かっています。そこには治癒魔法の使い手も居ますので」
ジャンヌは周囲を警戒しているからか、話に参加してこないな。
今はマルダと話すか。
「やっぱり治癒魔法って難しいの?」
「そりゃそうですよ。神への祈りで起こせる奇跡の1つですから。流石に部位欠損に関してはどうしようもありませんが、ジョージさんの様な大怪我でも治せるんですよ!」
「そりゃスゲーな。所で教会騎士って人達以外には使えないのか?」
「聞いた事はありませんね……ああ、でも伝説の聖女様の話なら聞いた事がありますよ。神様に見初められた女の子が使ったのが治癒魔法の始まりだとか」
「なんだ。伝説の中の話か、残念。そうなると俺に治癒魔法は使えなさそうだ」
残念だな~っと思っているとマルダがクスクス笑っている。
そんなに変な顔になっていただろうか?
「マルダ、失礼ですよ」
「でもジャンヌさん。ここまで分かりやすく表情を変える方は滅多に居ませんよ。子供みたい」
「マルダ!」
「あ~特に気にしてないのでそんな強く言わなくていいですよ」
「しかし不快に思いませんでしたか?この娘は笑い易過ぎてちょっと困っているんです」
「そう思ってはいませんよ。明るい方が俺も楽しいです」
そんな話をしながら俺達は森の外に向かうのだった。




