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長期依頼

 どうにか宿を見付けて1晩泊まった翌日。

 今回は長期的な計画が必要と言う事で、例の教師の手伝いをする事にした。

 アヴァロン本部でボロボロの依頼状を取って依頼受理の受付に行くと、詳しい内容を話すと言う事でその学校に行く事となった。


 アヴァロン自由学園はこの国の東側の端に位置している。

 どうして端にあるかと言うと、実技練習などもあるため街に被害が出ないように配慮されたからだそうだ。

 その分校庭や校舎はかなり広く、多少のことぐらいでは問題無いと思う。


 俺は校門の警備員さんに依頼書を見せて学校に入る。

 生徒と思われる子供達は小学校ぐらいから高校生ぐらいまで意外と幅広い。

 もしかしたら年齢に関係ない大学のような形のなのかも知れない。本当に冒険者になりたい者が入る、と言う感じなのだろう。

 警備員さんから聞いた校舎内の受付で依頼書を再び見せ、応接室の様な所に通された。

 中は結構ソファーとかあってちょっと頑張ってる感じ。


 座って待っていると、昨日話しかけてくれた校長先生の他に女性の教師?みたいな人が来た。

 女性の見た目は16歳ぐらい?教師と言うには若い感じがするが……細かい動きや魔力量などを感じる限り見た目通りの年でもなさそうだ。

 校長と女教師は並んで座り、頭を下げた。

 俺も頭を下げて会話は始まる。


「まさか昨日会った方に依頼を受けていただけるとは思ってもみませんでした。改めまして私はアヴァロン自由学園校長、バーンズと申します。彼女はその教室の担任で」

「アオイ・ヒノと申します」


 アオイ・ヒノ?まさか日本人?

 何と言うか勇者の時も思ったが意外と日本人が多めに召喚されてるのか?

 と言ってもこの人もマコトに召喚されたとは限らないけど。


「タツキと申します。よろしくお願いします」


 頭を下げながら言うと、校長先生は資料を見ながら言う。


「タツキさんは……優れた冒険者のようですね。スパーキングレオ、ヘブンスパイダーなどとても強い魔物を倒せるほどの冒険者なのに、なぜこの依頼をお受けに?」

「私は今回キリエス教国に用事があったのですが……すぐに入れるような国ではないと知らず、少々困っていたのです。ですので長時間働ける依頼を探した際、この依頼にしようと思ったからです」

「そうですか。ちなみに用事とは?」

「私の知人が人を探してまして、その探している人がキリエスに居るかもしれない。っと言う話を耳にしたので来た次第です」

「そうですか。ではこの依頼について詳細にお話ししましょう」


 真面目な雰囲気を出すので俺は背筋を伸ばした。

 そして校長は言う。


「今回の依頼で頼みたいクラスはヒノ教諭のクラスです。そのクラスはとても特殊で3名しか児童はいません」

「3名だけですか?それで児童とはいくつぐらいです?」

「カエル・マクリーン12歳、トキ・クロサキ9歳、ヒカル・コノエ10歳です。彼らは召喚者です」

「召喚者?勇者と同じ?」

「はい。と言いましても勇者様とは全く同じとは言えません。彼らはもうすぐ亡くなってしまうのですから」


 …………………………は?


「召喚した異世界人が15歳未満だった場合ほとんど亡くなってしまうのです。召喚された方々達は、世界を渡る際に世界と世界の狭間にある純度の高い魔力を浴びていると考えられています。その影響でスキルとして顕現するのが一般的でしょう。他にも成長が途中で止まり、若々しい見た目を保つ方もいます。それがヒノ教諭です」

「ちょ、ちょっと待ってください!これから受け持つ子供達が死ぬ?しかももうすぐって!!」

「より正確に言いますと彼らが生きていられるのは約2年。未成熟な子供が召喚された場合、5年以内に体内の魔力が暴走、なくなってしまうのです」


 それって俺も下手すれば死んでた可能性があったんじゃねぇか!?

 俺が召喚に応じたのは17の時、あと3年早かったら死んでたのかマコト!!

 いや、でもあれはマコトがほとんど寿命や事故で死んだって言ってたな。年齢は言ってなかったけど……適性年齢は超えてたんだよな?


「……質問良いですか」

「どうぞ」


 1度深呼吸をしてから聞く。

 少し落ち着いたがそれでも手が震える。


「俺がそのクラスの副担任になったとしてどうすればいいんですか?その子達を救う方法を探せと?」

「それは彼女がします。彼女が彼らを助ける術を見つけ出す間あなたが担任を務めて欲しいのです。2ヶ月ほど一緒に授業を受け持ってもらい、その後彼女が良いと思えば彼女が彼らを救う方法を探しに行きます」


 なるほど。

 つまり俺はヒノさんが旅をする間彼らの先生を代ってほしいと。

 大体の内容は分かった。


「確認します。つまり俺は彼女の代わりに彼らの教師をするために依頼をされた、と取っていいんですか?」

「はい。実は彼女には助けられるかも知れない方法があると言っております。しかしきちんと知っているのではなく、誰かに聞きに行く必要があるそうなのです」

「なるほど。ではヒノ先生に質問します。その誰かに聞くと言うのはどれぐらい時間がかかるのでしょうか」

「1年かかるかどうかっと言う所です。でも必ず聞き出してきます」


 聞き出すと言う所に不安を感じる。

 何だか不穏な感じだ。


「その1年とは往復でですか、それとも片道ですか」

「……遠いので片道です。ですので早くいかないと彼らを見殺しにしてしまう事になります。どうかご依頼を受けていただけないでしょうか」


 ヒノ先生は真摯に頭を下げた。

 この人は本気で子供達を助けたいと思っているのだろう。

 でも片道1年と聞きだすと言う言葉に不安しかない。

 俺はよく考えてから口に出す。


「その依頼は受けます」

「なんと!」

「ありがとうございます」

「ですが少し条件を変えさせていただきたい」

「条件とは?」


 校長が恐る恐る聞いて来る。

 俺はそんな恐ろしい条件を付ける様な人相の悪さだろうか?


「条件と言うのは俺も彼らを救う手助けをさせていただきたいと言う事です。これでも顔の広さだけはありますので俺も知人に聞いてみようと思います。それから俺が受けるのはあくまでも副担任です。担任であるヒノ先生には旅に出ないようお願いします」

「な!?」

「……それはつまり私の旅は無駄だと」

「無駄とは思いませんがあまりにも時間がかかり過ぎます。ですのでここは俺に任せてください。知識だけはあるお調子者を知ってますから」


 そう言うと2人は考え込む。

 たいした時間は経ってないように感じるが、俺にとっては長い時間待ったように感じた。

 ヒノ先生が聞く。


「本当に彼らを救う方法が見つかりますか?」

「見付けます。流石に目の前で助けを求める子供の手をはじくほど冷酷にはなれませんよ」

「………………校長先生。おそらく彼なら大丈夫かと」

「ほ、本当かね?そんなに都合よく見つかるものだろうか?」

「見つけ出します。何なら子供達を救うまでが依頼の達成でも構いません。やらせていただけませんか」


 そう言いながら俺は頭を下げた。

 どうやら俺は意外と誰かのために頑張るのは嫌いじゃなかったらしい。

 見ず知らずの他人、しかも余命2年の子供を救うと言うとんでもない内容だ。

 前の世界では絶対に首を突っ込む事すらしなかっただろう。無理だと決めつけて関わる事すらしなかっただろう。

 でも、今では子供むしろ助けさせてくださいと頭を下げている俺が居る。

 いつの間に俺はこんなお人好しになってしまったのだろう?

 いつからそんな無責任な事を言えるようになったのだろう?


「あ、頭を上げてくださいタツキさん!その内容はむしろ願ったり叶ったりです!しかし本当にその内容で依頼を受理してしまってよろしいのですか?」


 校長先生が改めて聞く。


「お願いします」

「分かりました。ではタツキさんはヒノ教諭の副担任として働いていただきます。そして依頼内容は子供達を救う事。でよろしいでしょうか」

「はい」

「ヒノ教諭もよろしいですか?」

「手伝っていただけるのなら助かります」

「では教諭として働いていただく月給などをお話しさせていただきます」

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