そろそろ次に行こう
アセナの妹2人と執事1名が追加されて早1ヶ月が経過した。
何故そんなに一気に時間が過ぎたかと言うと、家の内装工事やら何やらで意外と時間を使ったからだ。
まず部屋が足りなくなったのでトヨヒメとヤタ、ヴィゾーヴニルに部屋を追加で製作する。
トヨヒメの部屋には鮫状態で入れる小さなプールも用意する事になる。泳ぐことはできなくとせめて水に浸かることぐらいはしたいとの要望があったから。
そしてヤタは日当たりのいい部屋を望んだ。そしてヴィゾーヴニルの要望は執事としてヤタの部屋の隣が良いと言われたので、そのように作った。
そして知ってしまった高級住宅の家具の数々、それを再現するために色々本当に頑張った。
実際に使った事のある俺とアセナで相談しながら改善を続け、ソファーとかテーブルとか色々作りまくったのである。
ちなみに材料は森で狩った魔物の皮や、木1本を切り倒して作った物だ。
流石に本職の人に比べればまだまだつたないだろうが、それでも材料の良さでどうにかなった。
そうしている間に皮をなめすやり方も覚えたし、変質による加工技術は大分向上したと思う。
とまぁこんな感じで生活環境の改善に力を注いでいたので真祖探しはしばらく中止していた。
そして意外だったヴィゾーヴニルの力、それは調理技術である。
執事として働きたいと言っていた彼に料理はできるか?っと聞いたら滅茶苦茶できた。
俺が持っていた様々な肉や草を簡単に食べれる物、香草かそうでない物を見分けてすぐに調理したのである。
その味はリゾートで食った味と何ら変わらない。極上の味と言って間違いない。
そして俺達はヴィゾーヴニルを崇めた。
これで美味い食事の発展が期待できる。
こうしてヴィゾーヴニルは執事兼料理人となった。
次にトヨタマヒメ。
彼女はとても穏やかな暮らしをしている。
アセナのように積極的に狩りには行かず、優雅にお茶を飲んでまったりとしている事が多い。
俺が前に買った小説などを呼んでいる事が多く、狩りに行く時は電撃であっさりと仕留めるので戦闘能力はやはりバカには出来ない。
それに比べてヤタガラスは子供らしさ全開。
ちょっと目を離した隙に外に飛び出して勝手に遊んでいる。家の中でじっとしているより、外で自然の中を駆け巡っている方が好きなようだ。
俺やアセナ、トヨヒメもたまに遊びに付き合っているが基本的にテンションが高い。
ヴィゾーヴニルが言うには、久しぶりの外だから多めに見て欲しいと言っている。
子供が外で元気に遊んでいるのは良い事なので止める気はない。
ただ一言だけ言わせてもらおう。泥遊びした後は風呂に直行しなさい!!
ラストに俺とアセナ。
俺が家の中を好き勝手に改造している間のアセナの生活は大分変った気がする。
何か行動する前に必ずトヨヒメとヤタに一言言ってから出かけたり、狩りに出向く様になった。
さらにこの家には娯楽品はろくにないので、何もない時は寝てばかりだったが今じゃ暇なときは姉妹のどちらかと一緒に居る事が多い。
トヨヒメと一緒にお茶を飲んだり、ヤタの遊び相手をしたりしている。
その様子は面倒見のいいお姉ちゃんと言う感じだ。
そして夜に関しては、回数は減ったがその分激しくなった。
俺は本気でなんでかと思った。
確かに改築中の時は構ってやれてないが、全く構っていない訳でもない。
なんでだろうと思って思い切って聞いてみたら、頬を赤くしながら答えてくれた。
「2人が戻ってきて思った。タツキと私の赤ちゃん欲しい」
これを聞いて俺はそうりゃ今まで以上に高ぶってしまいましたよ。
だってすんごく可愛かったし、目を逸らして頬を赤くする姿は愛おしいと言う感情が爆発しちゃったんだから。
なので各部屋の防音対策も付け加えておいた。
だってほら、実年齢分かんないけどトヨヒメとヤタに聞かれるのもね、何かダメじゃね?
その辺気を遣うべきじゃね?
ちなみに当然だがトヨヒメとヤタに手は出していない。
大切な妻の妹達に手を出して昼ドラ展開になどしてたまるか。
ハーレム作るとしてもアセナに許可をもらってから作りますよ。
それに今のところトヨヒメとヤタをそう言う恋愛的な感情では見ていない。
やはり妻の妹、と言う印象が強いせいか手を出そうとすら思わない。
異世界転生と言ったらハーレムでしょ!っと言う感情がないわけではないが、アセナと夫婦になれたのだから満足している。
大切な存在なのは認めるが、それでもやっぱり妹と言う感覚が消えないのだ。
っとまぁ現状はこんな感じだ。
家族と言う意識はあるが恋愛対象として見ていない。
家の改築も済んできたし、そろそろ次の姉妹を助けに行きたいところだ。
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「ん、ふ、ぷはぁ」
何か濡れる様な感じがしながら目が覚めた。
なんだろうと視線を動かすとアセナが俺に甘えていた。
「……物足りなかったか?」
「んん、そんな事ない。ただこうして起こしてみたかった」
そう言ってアセナは俺にキスをしてくれる。
完全に目が覚めたと思うとアセナは微笑みながら言う。
「おはよ、タツキ」
「おはよ、アセナ。今何時ぐらいだ?」
「いつもの時間。ご飯食べに行く」
そう言ってアセナは起き上がって服を着る。
と言っても以前言ったように自身の体毛を変化させたものなので一瞬で終わりだ。
しかし俺はマコトからもらった服を普通に着る必要があるので少し時間がかかる。
こう言う時って女の方が時間がかかる物じゃないのか?
そう思いながらも広くなったリビングへ集まる。
「おはようヴィゾーヴニル」
「おはよう」
「おはようございますタツキ様、アセナ様。すぐにご朝食は出来上がりますので少々お待ちください」
出来上がるというが既にヴィゾーヴニルはさらに盛り付けるだけと言う所だった。
俺達は自分の席に座ると、少し遅れてトヨヒメとヤタが現れた。
「ヤタお姉さま、朝ご飯です」
「ん~、おはよ~」
トヨヒメは既にいつもの服装になっているが、ヤタは可愛らしいパジャマのままだ。
多分この家の中で1番服装に気を遣っているのヤタではないだろうか?
基本的に服装は変わり映えしないし、寝る時にいたっては全員バラバラだ。
俺は下着だけ、アセナは全裸、ヴィゾーヴニルとトヨヒメは寝る時だけ小型化した本来の姿に戻る。
だがヤタだけは人型のまま気分で服装を変えるし、寝る時にいたっては今の様にパジャマに変える。
人としては間違っていないのだが……この特殊過ぎる家庭の中では結構希少な存在だ。
そんなヤタは目をこすりながら席に座る。
欠伸もしているし、子供っぽい。
子供らしい見た目なのでむしろしっくりくる。
こうして朝食を全員で食べ始めた。
朝食の席には当然ヴィゾーヴニルも一緒に食べる。
ヴィゾーヴニルは全員が食べた後に食べると言っていたが、それを俺は却下。全員で食べる事にした。
最初こそ落ち着かなさそうだったが今では慣れて一緒に食べるのが日常となった。
全員がいる間に俺はみんなに言う。
「みんな、そろそろ蛇の真祖を助けに行こうと思う」
「みんなで行くの?」
「いや、今回は俺1人で行こうかと考えてる」
そう言うと俺以外の全員が驚いた。
特にアセナは強く言う。
「それは絶対にダメ。あそこには人間達がたくさんいる。1人は危険」
「そうだよお兄ちゃん!!何でよりにもよって1番危険な所に1人で行くって言うの!?」
「私もお姉さま達と同様に反対。攻めてアセナお姉さまぐらい連れて行ったら?」
「お1人だけはやめておいた方が賢明だと思われますが……」
当然全員から反対が出た。
でもこれには理由があるし、仕方がない事だと俺は思う。
「まぁまずは聞いてくれ。これから向かう教国、キリエス教国は人間至上主義の国であり、人間以外の人類を認めていない点がある。魔物絶対殺す国としても有名だ。そんな国に魔物であるお前達を連れて行くのはリスクが大き過ぎる」
「でも私達は強い。強いと言っても所詮人間基準の話」
「それは分かってるよ。でもスマホで調べた結果いや~な雰囲気がビシビシ漂ってくるんだよ」
「嫌な雰囲気?どんなのどんなの?」
「試験的に天使と人間を混ぜる実験をしてるらしい」
そう言うと全員がとても驚いた。
天使、文字通り天の使いと言う意味である。
マコトの奴が他の神を創り出したように、それぞれの神が自身の手足として生み出した存在が天使である。
調べてみた結果、例の教国にはそんな天使達を利用した人体実験が行われていた。
俺の様にスキルで別々な存在を1つに纏めたりしている訳ではなく、魔法や投薬によって行っているのでどう考えても俺自身の身体をスキルで『変質』させている物とはで出来が全く違う。
そのほとんどは孤児を利用したものらしく、生存率はとても低い。
だが机上の空論ではこれにより人間を超越した人工勇者とでもいうべき存在が生まれるかもしれないとの事だ。
個人的には人間至上主義の癖に、別な存在と混ぜ合わせようとしている時点で大きな矛盾を抱えている気がするのだが、これはどうなんだろう?
それとも人間をやめて天使となり、神に使える事が教義なのかも知れない。
この辺は胸糞悪いし、当事者たちにでもそのうち聞いてみよう。
それを聞いて全員難しい表情をする。
「天使が相手か……ちょっとめんどくさそう」
「復活したての私達では微妙な所ですね」
「それに教会本部に居る天使、おそらく正義の神であるジャッジが創り出した天使となりますと、確かに魔物である我々には厳しいでしょうね」
「私は行く。ジャッジだって食い殺せる」
1人強気にアセナが言うが、その神様の力をよく知らない俺にとってはどれだけの脅威なのかよく分からない。
勝てるかどうか分からない相手をしている暇はない。
なので1人で行って、さっさと帰ってくるつもりだ。
「大丈夫だアセナ。別に神様相手に喧嘩売りに行くわけじゃない。それに神様が出向くってんならとっくに出向いててもおかしくないだろ?」
「それは……そうかも」
「だからアセナとヴィゾーヴニルにはここでトヨヒメとヤタを守ってほしい。頼む」
「それは執事として当然の事です。お任せください」
「………………分かった」
「頼むぞ、2人とも」
そう言いながらアセナの頭を撫でる。
でもアセナの表情は不安げだ。
「ちょっと待ってて!!」
そう言って急にヤタが席を立った。
どうしたんだろうと思っていると、手に何か黒い欠片を持っている。
「これ、『捕食』して!ヤタの殻!」
ああ、これヤタが復活した時の卵の殻か。
そして『捕食』と言う事はこれを食べてトヨヒメと同じようにしろと言う事か。
「あのね、私も不安だけど、お兄ちゃんに付いて行くと邪魔になっちゃいそうだから、これ食べて強くなって!ね?」
「ありがとヤタ。それじゃ早速」
俺はヤタの殻を『捕食』すると体内にとても熱い力を感じる。
それだけではなく強い光すら感じるが、それはとても穏やかで、心地いい陽だまりの様な暖かい感じだ。
そっと手足の感覚などを確かめるが、特に違和感がない。
トヨヒメの時はしびれるような感じがあったのに、こちらはすんなりと身体に馴染んだ様だ。
「ヤタとお兄ちゃんの相性よかったみたいだね。安心した~」
そう言ってヤタは俺の腹の所で頭を埋めながらぐりぐりと動かす。
そんなヤタの頭を撫でながら礼を言う。
「ありがとヤタ。これでまた強くなれた」
「えへへ~」
だが完全に使いこなすには少し実験してからの方がいいか。
蛇を助けに行くのは決めたがすぐに行くと言うつもりでもない。
少し確かめてから行くとしよう。




