電撃奪還作戦!!
東の道を進みながら俺達は途中で道を外れ、森の中に入った。
だがこのまま帰る訳ではない。当然カラスの真祖を取り返してから帰るつもりだ。
バカンス中、遊び疲れてゴロゴロするついでにスマホで出来る限り調べておいたのである。
カラスの真祖が封印されている場所はこの国の中心部に生える巨大な木のてっぺんだ。
そこに小さな社があるらしく、その中に魔術的な防御と物理的な防衛がされている。
と言っても封印してある社を壊せば簡単に取り出せるようなので、俺にとってはかなり楽勝である。
ただ問題と言えばそのてっぺんに行く方法だ。
てっぺんに行くには巨大な木の中の道を通る必要があり、マップ機能を使って最短距離で行ったとしても歩いて4時間はかかる距離だと断定された。
木の中は思っている以上に広く、上に向かえば向かう程複雑な迷路かつ、妨害のための罠が所狭しと配置されているらしい。
しかもマップの最短ルートはあくまでもそれらのトラップに妨害されなかった場合だ。
マップ機能は所詮道順と距離しか教えてくれなかった。
なら外から行けばいいじゃん。と言う発想にも待ったのだがこっちはこっちで厄介事が3つある。
1つ目は魔物である。自然となのかワザとなのかまでは知らないが、鳥系の魔物が巣を作っているのである。
2つ目はてっぺんには強力な結界が張っているのでこれを破壊するか解呪しなければならない。
3つ目はてっぺんに巣を作っている鶏型の魔物、ヴィゾーヴニルをどうにかしないといけない。倒す必要はないだろうが、こいつの目を盗んで真祖が封印されている物を奪う必要がある。
っとまぁこんな感じで外から行こうが中から行こうが面倒なのは変わらない。
ならば俺の場合はどうするか、簡単だ。
「タツキ、行ってらっしゃい」
「ああ、ちょっと行ってくる」
俺は鎧を着て外側から行く事にした。
鎧にはブースターが付いてる。それに翼部分を新しく付け加える事で飛行可能としよう。
あの森だと飛行能力持った魔物居なかったんだよな……だから良くてもコウモリの魔物ぐらいしか食った事がない。
なんかこう、重力操作とか飛行系スキルが欲しいな……
そう思いながら俺はブースターをふかしてエネルギーを集める。
魔力を燃料代わりにする事で手っ取り早くブースターを強化させた。
と言うかこれ使うの実は初なんだよな……やっぱ使う前の実験は必要だな。
エネルギーが溜まった後、爆音とともに真っ直ぐエルフの国のシンボルである木のてっぺんを目指して飛び出した。
戦闘機のエンジンの様な轟音を響かせながら速く、衝撃的だったが鎧に問題はない。
ヒビ1つ入らないのだから頑丈さは思っている以上に高いのかも知れない。
その勢いのまま結界を突き破れるかと思ったが、流石にそこまで簡単にはいかず正面衝突してしまった。
それにこの飛行は普通に鳥と同じように飛んでいるので常にバサバサとはばたく必要がある。
動かす感覚はコウモリと同じだからあまり楽に感じないな。
俺が『捕食』と『変質』で結界を破ろうとしていると、異常に気が付いた鳥型の魔物達が俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。
ただの物理攻撃をしてくる鳥には『捕食』で食いつくしていく。
その鳥の魔物達の中に丁度いい飛行能力を持つ存在達の力を『変質』で空中に適した状態に肉体を変える。
そうして攻撃していたからか、鳥達は自然と俺の事を脅威として見たらしく遠巻きに威嚇を繰り返すだけとなった。
そうしている間に結界を破る事が出来た!
俺はてっぺんに降り立ち、鶏と対峙した。
鶏は俺が思っていたよりも大きく、10mはあるだろうか?
その鶏はじっと俺を見ているだけで攻撃しようとはしない。
それなら都合がいいと、社を探すが……見当たらない?
慌ててマップ機能使って確認すると、社はどうやらこの鶏の真下にあるようだ。
もしかしてこいつ牝鶏か?卵を温める感じで社を下敷きにしているようなイメージが持てる。
『すまないがそこをどいてもらえないか。真祖復活が私の目的だ』
そう言うと鶏は顔を近付けて何か確認するような目線を送る。
そして鶏はそっと立ち上がった。
取りの股の下には小さな社、と言うか祠が存在しその中に卵状の石の様な物が鎮座していた。
これがカラスの真祖を封じ込めた道具?何と言うか魔石で大きな卵を作ったようにも見える。
俺はその社から卵を取り出そうとしたが、予想通りここにも結界が張られている。
だが邪魔者が存在しないのだから先程より楽だ。
そう思っているとエルフ達がわらわらと現れ始めた。
何だか良さそうな鎧に身を包みながら武器を構えている。
そしてその中で鎧を着ていない偉そうな女エルフが大声で言う。
「何故そこで何もせぬ、ヴィゾーヴニルよ!!その者は貴様の宝を奪おうとする盗人ぞ!!」
こいつはこの真祖が封じ込められていた道具を守っていた?
ならばなぜ俺の前では大人しくこの祠を見せたのだろう?
「コッケエエエエエェェェェェ!!」
そう疑問に思っていると鶏はエルフ達に向かって鳴きだした。
と言ってもただの鳴き声ではない。鳴き声だけで周囲を吹き飛ばす衝撃波を口から発射させた。
エルフ達はその衝撃波に転がったり体勢を崩すが戦意だけは全く衰えていない。
どうやらこの鶏も真祖復活を望む存在の1体らしい。
ならばエルフはそちらに任せて俺は結界を破壊する事に専念しよう。
「おのれ……!今すぐあの魔物を殺せ!こうなってはあの魔物は不要だ!!」
偉そうな女エルフはそう言って騎士達に指示を出す。
鶏はそんな騎士達を相手にするために前へ出る。
鶏の目的はあくまでもこの真祖を守る事のようで、あまりその場から動かない。
衝撃波や風の魔法、自身の羽を飛ばして騎士達に突き刺すと言う長距離重視の戦い方だと感じた。
鶏が俺達を守ってくれているので結界を破る事に成功した。
俺は祠から卵を取り出し、別腹にしまってから言う。
『共に来るか!』
『ココ!』
そう言うと鶏は鳴いて身体を一気に小さくした。
そのサイズは先程とはまるで違い、普通の鶏と何ら変わらないサイズだ。
俺は鶏も別腹にしまってブースターを再びふかす。
エルフ達にとって異様な光景なのか、鶏と対峙していた時よりも怯えている。
「何をしている!あの逆賊を決して逃すな!!」
偉そうな女エルフは意外と強い風魔法で俺に攻撃するがこの鎧の前では無意味だ。
俺は先程と同様に爆発音を響かせながら上空へ1度移動した。
このままただ逃げては俺達の家がどこら辺なのか大体の予想がついてしまう。
なので上空から1度派手なだけの攻撃をしよう。
『バーニングサン』
女エルフに向かって魔法を放つ。
女エルフは風の魔法で防ごうとしている様だがその程度では無駄だ。
魔法は女の前で大きく肥大化、流石に木全体を包むほどの魔力は込めていないがてっぺんを覆うぐらいには十分な規模だ。
俺は目くらましのためにその燃える炎の中を突っ切った。
鎧のおかげで熱さは全く感じないし、ダメージもない。
他のエルフ達がどうなっているのかは分からないが、その炎は10秒ほどで消えた。
その10秒さえあれば俺は誰にも気付かれずにアセナの元に戻ってきた。
「おかえり。すっごく派手な帰ってきかた」
「仕方ないだろ?ああやって巨大な炎が国のシンボルに灯れば、国民全員が炎に注目して逃げられると思ったんだよ」
「それで?妹は?」
「ちゃんと助け出した。おまけも付いて来たけど」
「おまけ?」
そう言って卵と一緒に鶏も出てきた。
鶏は丁度卵に覆いかぶさるような大きさで卵の上に座っている。
正確に言うなら卵を温めていると言うべきなのかも知れないが。
その鶏を見てアセナは言う。
「あ、久しぶり。ヴィゾーヴニル」
「知り合いか?」
「ん。妹の執事」
カラスの執事が鶏?
何とも言えない感じだが気にするほどではないだろう。
俺は安全な我が家に向かって3体の魔物を連れ帰るのだった。




