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旅行終了まであと3日

 思っていたよりも鮫の真祖の成長が早い。

 この旅行もあと3日で終わりを告げるのだが、鮫の真祖の方は復活に近いと何となく分かる。

 別腹内部に意識を集中すると卵の中に居る真祖は大分大きくなっていた。

 俺の魔力を食う量も少なくなってきているし、そろそろだな。と言う感覚だけは確かだと思う。


「タツキは泳がないの?」


 プールの中からアセナが出てくる。

 もうすぐ旅行も終わりと言う事で無理のない程度に遊んでいた。


 にしてもアセナの肌が眩しい。

 エルフの国もうすぐ着くからか、最近のウミガメは海面を泳いでいる事の方が多くなり日の光が直接届く。

 アセナの肌に水滴がついているだけなのに、なぜかいつもより色気が増している様な気がする。

 アセナは歩き方も綺麗だからどうしても足とかに目が行っちまうんだよな。


 そんなアセナに見惚れているのは俺だけではなく、周囲の客達も同様だった。

 しかもほとんどが家族連れか俺達の様にカップルが多いせいか、見惚れている男に奥さんか彼女さんに頬をつねられたりする男性達が多い。

 そんな被害を減らすためと、アセナにそんなエロ目線をさせないために俺はアセナにタオルをかけて身体を拭く。


「今は新聞読んでるからいいよ。それにしてもやっぱ良い事と悪い事って言うのは重なるもんだ」

「悪い事?」

「この記事。勇者パーティーに人魚姫も正式に参戦だってさ」


 アセナの身体を拭き終え、再び椅子に座るとアセナはいつもの様に俺の上で寝っ転がる。

 その様子を見ていた独り身と思われる男性客が膝から崩れ落ちた。

 これだけは本当に見ていて優越感を感じない訳がない。


 新聞の内容によると、王妃の体調は順調に回復し、今では杖さえあれば城内を自由に歩けるぐらいには回復したそうだ。

 そして俺の話題。正確に言うとドワーフの国で現れた黒い鎧がこの国でも現れたので、その黒い鎧に対して世界共通の敵として見る事を決定したらしい。

 さらに今回の事件で真祖とは書かれていないが、大昔に封印された魔物の封印を解く事が目的であると新聞に載っていた。

 世界共通の敵として共に戦うと言う意志表示のために、人魚姫とその護衛達が旅立つのだという。


 これに関して国内では賛否両論、意見が真っ二つに分かれた。

 1つは人魚姫を国外に連れて行かせたくない人達だ。

 いくら強いと言ってもまだ子供、護衛を付けると言っても心配、姫様を戦いの場に行かせるなど論外!!などと言っている。

 その反対派はそろそろ他国の様子を見せた方がいいのではないだろうか?見分を広げるのなら丁度いい機会、勇者もいるし大丈夫じゃない?と言う2つの意見で分かれていた。

 だが人魚姫は「黒い鎧に聞きださないといけない事があります」と言っていく気満々だったので反対派はしぶしぶ了承したらしい。


 はて?俺に聞きだす事って一体何だ?

 やっぱり真祖の事か?でもすでに復活しかけてるし、もう1度封印するために見つけないといけないって感じでいいのかな?


 それにドワーフの方も黒い鎧対策に乗り気の様だし、こりゃ即行で決めに行かないとまずいか?

 この旅行が終わったらカラスの真祖を解放して1度家に帰るべきか?それともまた次の機会を狙って少し大人しくするか……


 うん。面倒臭いからカラスの真祖もさっさと解放しよう。

 そうすればあと半分になるし、西の蛇の真祖を解放したらある程度楽になるはず。

 本当にヤバくなりそうならアセナだけじゃなくて開放した真祖たちにも協力してもらおう。

 どうせドワーフやエルフは長命だし、後手に回る方が悪手か?守りを固められるのは面倒だし。

 問題はエルフ達と勇者が協力するかどうかって所だな……


「………………」


 新聞を読みながら考えているとアセナが何故か俺に強く抱き付く。

 タオルで拭いたとはいえまだアセナの肌は冷たく、肌と肌がくっつきやすい。

 それに人前だって言うのに足や腕を俺に絡ませようとするんじゃねぇよ。

 俺は新聞をテーブルに置いて聞く。


「人前でこういう事はするなよ。腹でも減ったか?」

「……新聞ばっかりじゃなくて私にも構え。か~ま~え~」

「分かった分かった。ったく、俺独占欲強いからあんまりそう言う事人前でしてほしくないんだけどな」


 そう言いながら頭を撫でる。

 それに今はお互い水着なので肌と肌が触れ合う面積が非常に多い。

 人前でするのは気恥しいが妻のご機嫌取りも夫の仕事か。

 俺はアセナの頭を優しく撫でながら抱き締めると、アセナの尻尾は心地よさそうに振る。

 機嫌も少し治ったのか、腕の力を弱める。


「……羨ましいな……美人な奥さん」


 そんな声が聞こえたので見上げてみると、そこには勇者が居た。

 トランクスタイプの水着にパーカーを羽織っている。


「お~ユウガ。今日は……ルフェイは居ないのか?」

「うん。例の黒い鎧に探しで協力したいって言っててさ、この国から出られるとは思えないから全員がこの国を出る際に自分も調べたいってさ」

「仕事熱心だな。で、その大昔の魔物ってどんな魔物なんだ?」

「詳しい内容は知らない。ただかなり大きな魚としか聞いてないよ」


 嘘を言っている感じはないな。

 教会の連中はもしかしたら肝心な事は勇者に伝えてないんじゃないか?

 そんな可能性すら出てきている様な感じがする。


「本当にそれしか聞いてないのか?そんなんじゃ対策の取りようがなくね?」

「あはは、だってタツキを巻き込む訳には行かないだろ?これ全部話したら強制的にお仲間になるしかなくなるけど話していい?」

「そう言う事なら仕方がない」


 俺は起き上がりながら体勢を直すがアセナは抱き付いたままだ。

 正直苦しくないか気になるがアセナ本人は幸せそうだから何も言わない。

 そして世間話として勇者に聞いてみる。


「にしても彼女欲しい的な事を言ってたが勇者様なら簡単に彼女ぐらい作れるんじゃないの?」

「作れたとしてもどうせ勇者としての僕の事しか知ろうとしないし、認めないと思うよ?流石に自由にできる時は僕だってダラダラしたいしね」

「それじゃ……王道に魔王を倒したらお姫様と結婚的な話はないのか?」

「一応ない訳じゃないけど……ちょっと怖い」

「怖い?」


 怖いという表現に引っ掛かった俺はつい聞き直してしまう。

 そして勇者は少しずつ小さくなりながら、震えながら言う。


「彼女僕を召喚した法王の孫で聖女って言われてるんだけどさ、可愛いし、美人だし、修業と言って料理とか色々できるから器量はいいんだ。でもね、たまに黒いんだ。僕に対して怖い目線を送る様な事はしないんだけど、僕の周りに居る女の子達にその怖い目線を送るんだ。それに時々聞こえるか聞こえないか微妙な声で呪文みたいなの唱えてるし、オーラだって不機嫌な時は真っ黒なオーラを出すんだ」

「なんだそのヤンデレみたいな聖女。と言うかよくそんな子がリゾート地に行くの反対しなかったな」

「大反対してたよ。せめて僕が行くなら私も行くって言ってたんだけど、その後ハイライトが消えた目で僕の事を閉じ込めておくとか、私が全ての交渉をするから大丈夫ですって言うんだ……あの眼怖い。ハイライトの消えた目で閉じ込めるとか言わないで欲しい…………」


 これマジのヤンデレじゃないか?

 二次元だけの存在かと思っていた存在に会えるだなんて、不幸としか言いようがない。

 何と声をかけるべきか迷っていると、アセナが珍しく勇者に声をかけた。


「その子はきっと不安なだけ。ちゃんと愛してあげてる?」

「え?愛す?」

「ん。愛されているって実感わかないからその子は不安なだけ。ちゃんと愛してあげれば怖い事言わない」


 アセナは確信を持ったように言う。

 と言うか何でそんな事分かんの?


「愛するって具体的には?」


 って勇者もアセナにアドバイスを求めるな。

 アセナは結構直接触れ合う様な事しか言わないぞ。

 だが聞かれたアセナは答える。


「抱き締めたり、キスしたり、エッチな事したり」

「エッチって!結婚もしてないのにそんな事出来ないよ!!」

「ってそれはそれで固すぎねぇか?ユウガって俺と同じ年代から来たんだよな?」

「それは間違ってないけど……だって相手は法王の孫娘だよ?付き合うのは構わないけど誠実なお付き合いをしろって言われてるんだから……」

「勇者はその聖女と付き合う事嫌じゃない?」

「嫌……ではないけど……ちょっと怖くって」

「だから愛す。その子は不安なだけ、私もタツキに愛されなかったら不安」


 そう言ってアセナは強めに俺に身体をくっつける。

 あ~アセナの身体は本当に柔らかくて気持ちいい。

 そんな様子を見て勇者は何か考える。


「そう言えば……最初はともかく今は避けてばっかりだったな……」

「ちゃんとスキンシップ取る。じゃないともっと不安になる」

「うん。そうだね、そうしてみようかな。ありがとうアセナさん」

「ん」


 恋愛相談が終わり、帰るかと思っていたが勇者は思い出したように言う。


「そう言えば旅行の最終日のパーティーは当然出席するんだよね?」

「当然だろ。最後まで楽しむつもりだ」


 2日後の夜、この日の夜はプラチナコースの人間だけを集めて王城でパーティーが行われる。

 これはプラン内に最初から組み込まれていた事とはいえ、よく黒い鎧()が目の前に現れたのに実行する気になったもんだ。

 それともそう言う事があっても屈しないというアピールなんだろうか?


 そして3日後の昼にエルフの国に戻ってきてツアーは終了と言う事になる。

 様々な形で楽しんでいたからかあっと言う間だったな。最初は長すぎるかな~なんて思ってたのに。


「それは良かった。最後まで楽しみたいもんね、それじゃ」


 そう言って勇者は去って行った。

 それじゃ俺達も腹が減ってきたし、飯でも食いに行きますか。

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