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温泉と覚悟

「タツキ……怒ってる?」

「………………アセナ」

「な、何?」


 翌日。遅めの朝食と言うか、早めの昼食と言う感じで昼飯に焼き鳥屋で飯を食っていた。

 不安そうに聞き返してくるアセナに向かって俺は平たんな声で言う。


「1週間エロいの禁止」

「そんな!!」


 アセナは世界の終りの様な表情をするが当然の判断だと思う。

 昨日突然行われた24時間耐久レースにより俺は疲労困憊となってしまった。

 朝寝室から出てきたポールさんに慌てて水を持ってきてもらった程だ。精根尽きた様に見えたのだろう。

 だって本当に真っ白な灰にでもなったような気分だった。

 俺本当に死ぬかと思ったよ。


 そんな状況である事に俺の中の鮫も気付いていたのか、途中から俺の魔力を食べるのを止めていた気がする。

 ちなみにだが鮫は順調に育っている感じもする。

 俺の魔力量で大丈夫なのか不安ではあったが、意外と大丈夫だったようで一安心した。


 しばらくは鮫の方に魔力を食べさせないといけないと言うのに、体力まで搾り取られればそりゃ流石の俺も怒るって。

 なのでしばらくエロいのは禁止。


「あ、謝るから……謝るからせめて今夜だけエッチ禁止……」

「無理。文字通り全部搾り取られる様な感じで今回復中なんだよ、鮫もいるから余計エネルギー必要だし……あ、ポンジリ10本追加」

「はい!」


 そして今俺がフードファイター顔負けの勢いと量を一気に食べているので焼く側である店員さんにも大きな苦労を掛けてしまっている。

 最初こそ食べ放題の所で大量に食うか~とでも思っていたのだが、この美味そうな匂いにつられて入店してしまったのである。

 アセナは流石にやり過ぎた感があるせいか、少しずつしか食べていない。

 それでもまぁ俺と変わらない量を食べているのは間違っていないのだけれど。


「あれ、タツキ?どうしたんだ?やつれた顔をして」


 そんな風に声をかけてきたのは勇者だ。

 隣にはルフェイもいる。

 そういや会うのは俺が鮫を分捕りに行ったあの夜以来だな。


「お~ユウガか。今日は焼き鳥か」

「と言っても持ち帰り用で町を散策しながら食べるつもりだけどね。このおまかせコースのを2つ、持ち帰りで」


 直ぐに店員に注文する。

 俺はそんな様子を見ながら聞く。


「なんかあったか?ゆっくり飯を食わないなんて」

「……事情を知ってると思うから言うけど、女王の体調がよくなったってニュースに乗ってただろ?」

「あ~あれな、新聞見たよ。よかったじゃん」

「そうも言ってられないんだよ。ほら、その~あれの封印が解けちゃった事を意味するんだから」


 はいはい。鮫の真祖ね。

 俺が分捕ったんだから当然知ってますよ。

 だが俺は知らないふりをして言う。


「ん?俺はてっきり人魚姫の方に移ったんだとばっかり思ってた」

「それなら僕も焦ってない。この事を知ってるのはこの国の上層部しか知らない事だから言っちゃダメだからね!」


 最後の方は小声で言うので俺は頷くだけのしておいた。

 黙っている方が都合がいいのはお互いにそうだろう。

 そう思っているとルフェイの方が俺に厳しい目線を向けながら聞く。


「王妃様のニュースが告げられた日の夜、どこで何をしていましたか」

「ちょっとルフェイ」

「大事な事です。お答えいただけますか?」

「そりゃ昨日は朝から晩まで地獄の24時間耐久レースを……」

「聞き直します。一昨日の夜は何をしていましたか?」


 う~んこりゃ完全に疑われてるな。

 どこで疑われる要素あったけな……

 あ、そう言えば勇者達が来る前に通信機で俺と人魚家族との会話聞かれててもおかしくなくね?

 うわ~しくじったー。


「一昨日の夜は素直に寝たとしか言いようがねぇよ。重たい話聞いた後だから遊ぶような気分にはならなかったし、本館で晩飯食った後ずっと家に居たよ。証拠はない」

「では証人できる方は?」

「出来るとすれば……ポールさんかな?コンシェルジュで世話になってる」

「分かりました。ポールと言うコンシェルジュが証人と、分かりました」


 相手に言葉を出す時は本当と嘘を良い塩梅に混ぜる事でより疑われなくなる。

 と言うか俺が言った事は嘘ではない。

 王妃の病状よりもどうやったら鮫の真祖を取り出せるのかで悩んで遊びに行ってないし、ポールさんも帰ったであろう時間帯までずっと家に居たのも本当だ。

 これは前の世界で学んだ技術だ。嘘100%では見破れる奴には見破れるからな。


「ルフェイ、失礼だよ。何も疑うように入らなくてもいいじゃないか。焼き鳥も手に入ったし次の場所に行こう」


 勇者は紙袋を両手に持ってルフェイに言う。

 こいつは本当に性善説で生きているような男だな。相手は基本的に善人だと思っている様な感じだ。

 ルフェイは渋々と言う感じで下がる。

 そして俺は心のない言葉を言う。


「頑張れよ、犯人捜し」

「ありがとう、タツキ」


 そう言って去って行く勇者を見送って、追加した焼き鳥を食う。

 そしてアセナは心配するように言う。


「あんな事言っていいの?頑張れって」

「どうせ半端な隠し方しか出来てないし、遅かれ早かれバレるだろうよ。ま、どのタイミングなのかは当然不明だが」


 何人前分の焼き鳥を食ったのか分からないが、余った串の山が出ているのでそろそろ帰るか。

 今日は本当におとなしくして体力回復させておきたい。

 プラチナカードを見せてポータルの所まで行こうとすると、アセナが俺の服の端っこを摘まむ。

 エロい事しないと言ったから少し遠慮気味なんだろうか?

 俺は小さくため息をついてからアセナの手を握った。


「エロい事をしないって言っただけでイチャイチャは歓迎してるぞ」


 そう言うとアセナは俺の腕に思いっきり抱き付いてきた。

 やはり少し遠慮していたようだ。

 こう言うイチャイチャだけなら良いんだけどな……流石に昨日のはな……激し過ぎるんだよな……

 とりあえず今夜は飯と風呂を楽しみますか。


 -


 少し早めに動いて温泉街。何故か日本風。

 情緒はあるけどなぜ日本風?

 細かい所は無視してきたが、どっから出て来たんだろう?

 しかもこの辺歩いてるの全員浴衣だし、と言うか俺もアセナも家で浴衣に着替えてから来たし、ポールさんによろしければ~なんて言われたがこの方が楽だわ。


 と言う事で今回のアセナは浴衣美人。

 うん。アセナは日本人っぽい体型だからスゲーよく似合う。

 手には巾着だし洋物のは周りの客だけだな。

 周りは結構カラフルと言うか、髪と目の色のバリエーションが豊かなんだよな。流石異世界。

 むしろ日本人みたいに黒髪と黒目である人の方が圧倒的に少ない感じもするし。


 そして今日の飯はポールさんが予約してくれていた温泉と同じ施設だった。

 泊まりはダメだが食事と温泉に入るのは可能と言う日帰り温泉施設って感じだ。

 この世界に来てから初の温泉。ウミガメの背の上と言う矛盾はあるが、楽しんだ者の勝ちだろう。

 深い事はろくに考えず、飯を食いに行く。


 まずは料理。

 日本で見た旅館の飯って感じがして大変よろしい。

 米に刺身や肉、鍋に副菜などのフルコースが一気に置かれている様なあの感じ。滅茶苦茶いい。

 米も米びつに入っている分は食べ放題なのでこれもまたよろしい。

 この世界米文化広まってないみたいなんだよね……基本的に主食はパンだし、前の焼き肉屋ではライスがないから焼いた肉で米を巻いて食うという事が出来なかった……


「タツキ……助けて」


 そう言うのはアセナだ。

 日本風と思っていたら箸まで出て来たので俺はそっちを使っていたのだが、アセナは箸を使った事がないらしく大苦戦していた。


「だから無理して箸にしなくてもよかったのに」

「だって……これ全部フォークとかじゃ食べにくいし……」


 そう言われるとそうかも知れない。

 箸で魚の骨を取ったり、ところてん?と思われる半透明な麺状の物、土鍋に煮込まれた肉や野菜、多くの種類があってそれをフォークやナイフなどを使って食べるのは結構困難かも知れない。

 仕方がないと思いながら俺はアセナに近寄る。

 そしてアセナに肉一切れ取って持ち上げた。


「あ~んしな、あ~ん」

「あ~~ん」


 ふむ。やっぱり箸とかは普段から使っているかどうかが肝心だよな……やっぱり慣れが必要だし、いきなり箸を使って食えと言われても難しいか。

 そう言えばこの店、温泉とかには居る客は多いが飯を食う客は少ない。

 恐らくアセナの様に箸を苦手とする人が多いからだろうな。

 アセナには今回俺がいるから問題ないが、何も知らない人から見ればどうやって食うんだ?って思うわ。


 でも味とかは日本風で気に入った。

 醤油と言うより魚醤ぎょしょうかな?っと思う部分もあるが美味いのだから問題ない。

 今度は昼にでも来るか。ゆっくりするのにも丁度いいし。


 飯を食った後は風呂である。

 予約したっ風呂はいわゆる家族風呂って奴で温泉の種類は少ないがプライバシーはきっちり守られている。


 しかしこの温泉、ちょっと不満がある。

 理由は公共の温泉の場合水着の着用が必須だからである。

 ここは家族風呂だから裸でも問題ないが、それ以外は水着着用。日本人としていかがなものかと思う。

 と言うか身体洗いに来ている場所で水着着ろっておかしくね?


 ちょっとした不満はあるがアセナと一緒に広い風呂につかる事は至福である。

 俺とアセナは一緒に風呂に入る。


「へ~これが温泉なんだ。木の匂いがする」


 家族風呂は巨大なヒノキ風呂でした。

 1種類しかないが家族風呂なのだから仕方がない。

 広さだけで言えば5~6人は余裕で入れるか?とにかく俺たち2人で使用するのだから十分な広さだ。


「ヒノキ風呂……懐かしい」

「タツキの前の世界じゃこれが普通?」

「普通ではないかな?木でできてるから手入れとか色々大変らしい。でも温泉の定番って言ったらこのイメージは強いな」

「へ~それじゃ早速」

「まずは身体を洗ってから。俺の居た世界じゃそうだった」

「それじゃイチャイチャする。タツキが私の身体洗って」


 そう言って近くの風呂場用の椅子に座る。

 これもヒノキ製なのか程よい香りがほんのりする。


 まぁそれよりも目に行くのはアセナの背中なんだけどね。

 いつもと違ってしっとりとした髪、真っ白できめ細かい肌。普段のエロい事する目的で見る肌とはなんか違う気がする。

 といいつつも今朝エロいの禁止と自分で言ったので行為には及ばない。

 その辺はしっかりと自制できてます。


 と言ってもこの世界は石鹸とかあまり発達してない。

 簡単な魔法で身体を清潔に保つ魔法があるみたいだし、化学が発展していないのだからある意味当然といえば当然なのかも知れない。

 高貴な方々はどこの時代だよ?っと言いたくなるような悪臭にはそれを上回る匂いを付ければいい的な考えがあるらしいしので、石鹸買って洗うより香水付ければいいじゃない。って考えの方が強い様子。


 でも俺は身体を魔改造しているため、強過ぎる匂いは正直好きじゃない。

 石鹸の匂いが付いている程度なら問題ないのだが、悪臭に別の匂いで対抗している様な感じの奴は本当に嫌い。

 と言ってもこの世界の石鹸でどれぐらい汚れが落とせているのか不明だけどね。


 柔らかくて肌触りの良い肌を撫でながらアセナの身体を洗っていく。

 本当にアセナの身体は不思議だ。

 黄金比によって男の欲望と女の憧れを上手く合わさったような姿なのだから本当に不思議だ。

 そしてそんなアセナが俺と結婚して一緒に居てくれる。これが最も嬉しい。


 だから俺がアセナ達を守らないといけない。

 俺の勝手で真祖たちはこれから封印を解かれ、外に出現する。

 それをよく思わない者の方が多いのは目に見えている。

 だから俺の勝手で叩き起こしたのだから俺が最後まで責任を持たないといけない。


 自己中で、身勝手で、面白い事にしか関わろうとしない俺だが、俺が仕出かした事はきちんと自分で始末する。

 誰かに尻を拭ってもらおうなんて思わない。

 俺が始めたのだから俺が最後まで責任を取って見せる。


「アセナ、次頭洗うぞ。目、閉じな」

「は~い」


 俺はまだそれなりにだが力を得た。

 それなりだから自信を持って強くなったと言えるまでさらに強くならないといけない。

 前の世界じゃ俺は弱者だった。

 弱者だから自由に動けなかったし、自由な選択など出来なかった。

 でも今はそれなりに強い。

 ならそれなりの選択肢があるはずだ。


 俺にとって良い選択肢を選び続けてやる。

 俺が幸せだと感じるために、俺にとって最高の選択を選び続けてやる。

 俺は幸せと感じるためにアセナは必須だ。

 アセナが居ない幸せなどありはしない。


 ならどうするか?簡単だ。

 アセナを守れるほどに強くなればいい。

 アセナの姉妹を守れるほど強くなればいい。

 バカな俺に権力とかは分からないが、武力なら無知な俺でも努力すれば手に入る事が出来る。

 アセナとその姉妹を守れるほどの力を手に入れる事が出来た後に考えよう。

 でもこれが通過点である事を忘れてはいけない。


 武力、知力、財力、権力。


 バカな俺にも分かる力はこの4つぐらい。

 この4つの力を手に入れて俺は、アセナ達を守る。

 人類も神様も関係ない。


 俺の幸せのためにぶっ潰してやる。

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