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転移した場所

 転移した先はどこかの神殿の様な場所だった。

 岩を掘ったか削った様な浅い洞窟のようでもあり、すぐ外に出られる。

 よく分からないがここを住処として利用して問題ないんだよな?どこかの部族が奉っている様な感じでないといいのだが。


 とりあえず外に出ると、なかなかきれいな景色が広がっていた。

 見渡す限りの森、遠くには湖も見え自然の美しさと言うものがバカな俺にもよく分かる。

 ただこの山は岩山のようで雑草1本すら生えていない。そこにちょっとした残念な感じがしないでもないが、それは仕方ないだろう。


 1度神殿に戻り、スキルの確認をすると『捕食』『変質』『身体強化』『自己再生』の4つがある。

 最後の『自己再生』に関しては何故あるのかよく分からないが……あの自称神がいつの間にかくれたんだろう。役に立ちそうだから別にいいか。


 それからスキルの確認をしてみよう。

 まずは『捕食』だが……とりあえず近くの石を口に入れてみた。

 ………………うん。不味い。

 捕食によって食べることは出来るのかどうかはよく分からないが……これカロリーには絶対ならないよな?

 それに食べる事で発動するかと思っていた『変質』も変化なし。どういう条件で発動するのかよく分からない。


『身体強化』と『自己再生』に関しては直ぐに分かりそうだが……どんなもんなんだろ?

 とにかく神殿を出て森の中に入って行く事にした。これだけ生い茂った森なら数多くの動物が住んでいる事だろう。その中から食べれそうな動物を捕食していけば良い。


 それで早速獲物を求めて歩いているのだが……まるで見つからない。

 まぁそりゃ当然か。前の世界じゃただの学生だし、親が狩りをするような人でもない。

 つまり俺は完全に素人と言う訳だ。

 よくテレビとかじゃ足跡を追って~っと聞くが、素人では足跡を見付けるだけでも難しい。

 たまに足跡の様な物は見付けるのだが……何の足跡なのかさっぱり分からない。


 そうしていると腹が鳴る。

『捕食』と言うスキルがありながら餓死するのはごめんだ。

 いざとなったら葉っぱでも食べるか?


 そう思っていると何かの音を聞いた。

 何かが草を踏んだ音。そしてその音に集中していると何かが俺に視線を送っているのが分かる。

 警戒していると俺の方に黒い何かが突っ込んできた!!


 俺は慌てて横に飛んで避けると、黒い何かは木にぶち当たりその木をへし折った!?

 気が倒れる音を聞きながらその動物を確認していると、その正体は牛だ。

 乳牛の様なずんぐりむっくりではなく、しっかりと筋肉が付いたたくましい牛だ!


 牛は直ぐに俺に振り向き、脚で土をかき上げる。

 その眼は完全に敵対しているものの視線だ。俺が縄張りに入った事に怒っているんだろうか?それともまさかこいつ肉食じゃないよな?


「ブモオオオオォォォォォ!!」


 牛は雄叫びを上げながら再び俺に突っ込んでくる!

 俺は何度も横に飛んで転がりながら避けているが、ちょっと体力の方が厳しいかも……

 ここで運動してこなかった事があだになるとは!!


 それに俺には決め手がない。

 手に入れたばかりのスキルで何が出来るのかよく分からないが、とりあえず『身体強化』では意味が無い。

 無意識のうちにこのスキルを使ってはいたのだが、それで避けるのが精一杯。

 あと戦闘に使えそうなのは『捕食』だけなのだが……動き回っている牛相手にどうやって口付ければいいんだよ!それに俺の歯は生肉を食い千切る程の力がある訳ねぇ!!しかも牛の皮膚は分厚そうだしな!!


 ゴロゴロと転げまわりながら避けていると、運悪く木の隙間がない場所に入ってしまった!

 やっべ!っと思っていると牛は今までよりも速く、突進してくる!

 仕方がないので俺は木に背を任せて牛の角を受け止めた!


 だが当然背中にはとても重たい鈍痛が響き渡る。

 俺の背骨は今ので壊れてもおかしくないんじゃないか?っと思う程の攻撃に意識がとびかける。

 だが確かに俺は牛の角を掴んだし、受け止める事には成功した!

 牛は驚いている様ですぐに俺を振り払おうと激しく首を振る。

 だが俺は手を決して離さず、強く思った。


 こいつを食ってやる。

 こいつは俺を殺そうとしたのだから、俺がこいつを殺してもいいはずだ。

 俺は生きるために、こいつを喰いたい!!


 そう強く思うと急に牛の頭が消えた。

 ふと消えたせいで俺は残った牛の胴体を押し倒す様な感じになってしまったが、何故急に牛の頭が消えてしまったんだろう?

 よく分からず牛の首があったとこを見ると、奇妙な傷口が見えた。

 それはまるで巨大な噛み後。まるでこの牛よりも大きな動物が牛の頭を食ったような歯形が付いているからだ。


 もしかして、これが『捕食』の効果なのか?

 もしそうなのだとしたら思いっ切り戦闘系スキルじゃないか。

 俺はてっきり何でも食べられるから『捕食』と言う名前なのだと思っていたが、これが正しい使い方なのか?


 そう思いながらも俺は慌てて牛を担いだ。

 何か来ている。今の俺には勝てないかにかがこちらに来ている。

 そう思ったので俺は慌てて神殿に逃げ帰るのだった。


 -


 牛を回収して無事神殿に戻ってこれたのはいいが……どうすればいいんだ?これ

 今も牛から血は流れているが、ある程度血抜きをしなければ美味しくないと聞く。だが俺には当然そんな技術はないし、知識もない。

 それにこの皮を引ん剝くだけでも大変そうな作業だ。どうすればいいのかさっぱり分からない。


「…………いただきます」


 もう全く分からないのそのままいただく事にした。

 神殿はあるものの都合よくキッチンなど生活するのに必要な施設がかなり半端だ。

 テーブルやらベッドやらは堅そうではあるが使えそう。キッチンはないが水浴び場はあった。風呂でないのは正直残念。

 だがこんな状況で必死に生きていくには仕方ない事だろう。

 世の中諦めも肝心だ。


 で、よく分からないが牛の腹に噛み付いてみたら意外とあっさり食う事が出来た。

 皮の部分だからあまり味も良くないが、それでもその奥には肉がある!

 とにかくただの獣の様に腹に顔を突っ込み、顔中を牛の血で真っ赤にしながら食事を続けた。

 途中牛の腸があったのだが、流石にそこだけは無遠慮に食い付くのは避けた。

 そこだけはきちんと引き千切り、腸の中身を絞り出す様に押し出してから洗って喰う。


 そうやって食っている間に牛はいつの間にか骨だけになっていた。

 血の跡は付いているが、結構綺麗に食べただろう。


「ごちそうさまでした」


 手を合わせて牛に感謝。

 この生活を続けてたらマンガみたいに出来ないかな?食い物に感謝してほぼ無限のエネルギーを得る技。まぁできればだけどね。


 だがここまで充実した満腹感は初めてだ。

 スキルの力を借りてだが、初めて自分で狩りをしてその相手を食う。原始的で素晴らしい感情の様な気がする。

 とにかく俺はしばらくこうやって生きていくしかない。

 この辺に人間はいない可能性の方が高いし、居たとしてもこの神殿のある山を登るとは限らない。

 ならば俺1人で生きていくしかない。

 弱肉強食と言う言葉でしか表せられない大自然の中で。

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