新婚旅行計画
俺達は森から南下してエルフの国を目指す。
特に急ぐ必要はないのでのんびりと歩きながらだ。
家から持ってきた道具は俺の別腹の中に収納済みなので手ぶらと言っていい。
そしてアセナの尻尾はこれまでにない以上に大きく尻尾を振っていた。
「そんなに楽しみか?アセナ」
「うん!海も初めてだし、旅行も初めて!!」
そう。アセナが見つけた記事は人魚の国への旅行記事である。
後から詳しく調べたところ人魚の国は観光客によって経済をまわす、つまり観光都市と言う奴だ。
俺はてっきり海の上に居るのだから漁業が盛んなのだと考えていたのだがまるで違った。
もちろん漁業も盛んだがメインは観光客。観光地で浮かれた観光客から金をボッタクリという商法の様だ。
意外と人魚もしたたかだな。本当に。
観光都市で金がかかるのは目に見えているのでゆっくりと歩きながら獲物を綺麗に狩っている。
森の南側には昆虫系の魔物が多く存在しているので個人的に好きではない。
だがこの森の魔物は高値で取引されるだろうからちょっと多めの金が必要なのである。
初めての旅行ぐらい大盤振る舞いしても問題はないだろう。
だってこれは新婚旅行だからな!!
「タツキ!またクモ仕留めた!」
「お、お~。ありがとなアセナ」
アセナは新婚旅行と言う言葉を教えるとものすごく喜んだ。
結婚したばかりの夫婦が思いで作りに行く旅行……と言ったが合ってるよな?
間違いではなさそうだが合っていると言い切れない感じもする。
その旅行資金を少しでも稼ぐためこうして狩りをしながらエルフの国を目指しているという訳だ。
今狩った蜘蛛は俺の別腹内に収納。これで3匹目だ。
「ところでタツキ、この蜘蛛本当に売れるの?」
「それは……多分?まぁダメだった場合は他の骨でも売るから問題ないって」
一応俺が前に狩った魔物の皮なども別腹に収納している。
ダメだった時はそっちを売ればいい。
「それにしても……遠回りしてない?」
「仕方ないだろ、真っ直ぐ突っ込むとエルフの王城の裏に出ちまう。そうしたら疑われて警戒されたらカラスの真祖を助けるのに無駄な障害が増えちまう」
どういう訳かエルフの国の城はこの森との境にあり、まるで王城で魔物の侵入を食い止めている様な感じなのだ。
普通王城は最も安全な所に建てるイメージが強いが、エルフ達にとってそれは違うのか?
そういやドワーフの国の宝物庫にアセナの力が封印されていた訳だし、もしかしていざって時に森の方に追い出し易くするため?
そう言う事なら納得できなくもない。
そして今俺達が目指しているのは冒険者が使う道を目指している。
そこから入れば怪しまれる事もないだろう。
「目立たずに動くって面倒だよね」
「確かに俺達は今からとんでもない事をしでかそうとしているが無駄な犠牲を出すつもりもない」
「ドワーフ殺しまくってたのに?」
「……あれは力加減を間違えただけだ。殺す気はなかった」
言い訳でしかないが本当に殺す気はなかった。
これがあれなんだろうな、動物園で飼育員が動物に襲われて死ぬ事故。
動物に殺す気が合ったのか、無かったのかまでは流石に分からないが似たようなもんだ。
殺す気がなくても身体能力の差、のみで殺してしまう。
それだけの事なんだろう。
「そう。あ、見えてきた」
アセナが言うように道がようやく見えた。
ちらほらと人の姿も見えるし後は人の流れに沿って歩けば問題ないだろう。
獲物も出そうない雰囲気なので少し気を緩ませる。
するといつの間にかアセナが俺を腕を組んでいた。
「アセナ?」
「?間違えた?」
「え、何を?」
「新婚夫婦は腕を組むものって、すまほ?って言うので調べたら出てきた」
あ、そう言う事か。
納得しているとアセナはもう1度聞いてくる。
「間違えた?」
「間違ってない。好きなだけどうぞ」
そう言うとアセナはさっきよりも強く腕を組む。
幸せそうに腕に顔を擦り付ける姿はとても可愛い。
気軽に撫でられないのは少し残念だがこれはこれで幸せだ。
周囲の冒険者から今にも襲われそうな殺気が飛んで来るが無視しよう。
そして俺達は正式な道を通ってエルフの国に入国した。
アセナには普通の獣人としてもらった後、俺の冒険者カードを見せて夫婦だといったらあっさりと入る事が出来たのはちょっと意外だ。
それに入国時の理由も丁度良かったのかも知れない。
新婚旅行で人魚の国に行くため、と言ったら笑顔で見送られた。
人魚の国へ行くには1度エルフの国で旅行会社の様な場所で予約を取る必要がある。
1ヶ月後にやって来るウミガメの背に乗るにはエルフの国で1回審査を通り、そして人魚の国でもう1度審査を通る事で入国する事が出来るのだ。
なので俺達は早速その旅行会社に行ったのだが……
「予約が満杯?」
「はい。申し訳ございませんが来月の一般のコースではすでに予約を取る事が出来ない状態になっております。今もキャンセル待ちをしている状態でして、その場合先に予約しに来た方達を優先していますのでお客様の場合は……27名のお客様がキャンセルした場合に入国する事が出来ます」
「ちなみに……次っていつです?」
「次回は4ヶ月後となります。すでに今回予約できなかったお客様、余裕をもって予約したいお客様は既にこちらで予約しております」
4ヶ月後……長いな。
4ヶ月も待つぐらいなら他の国で真祖の解放した方がまだマシだ。
でもな……出来れば新婚旅行もしたいしな……
「タツキ……どうする?次のにする?」
「う~ん。他に空いてるのはないんですか?」
「一般コースでない物で空いているのは……プラチナコースですね。ですがこちらは最上級のコース内容でして、お値段の方も高くなってしまいますが……1か月の旅で1名様大金貨5枚、2名様で白亜金貨1枚となっております」
「あ、ならそれで。コース内容はどんな感じですか?」
「え?あ、はい。コース内容はまずお食事は朝食ではビュッフェ形式、お夕食はコース料理となっており、世界各国で集められた食材をふんだんに使われた内容となっております。お昼に関しましては11時~15時までに島内の店舗でお召し上がりください。こちらは昼食代もいただいておりますのでお支払いする必要はございません。それからミュージカル会場のフリーパス、ミュージカル会場では時間ごとに演劇、クラシック、ミュージカルをお楽しみいただく事が出来ます。それからアクティビティーの無料体験、プールの無料パス、女性の方にはエステの無料パス、バーでの飲み放題――」
「え~っとつまり一般コースでは有料の物が全て食べ放題、飲み放題になるって事ですか?」
大量の情報が入ってきてちょっと混乱中。
アセナの顔も心なしか無になっている様な……
「端的に言いますとそうなります。本来一般コースではバーの利用やアクティビティーの1部が有料となっておりますが、そう言った物を全て先払いするような感じですね。お昼もいくらお替りしても問題ありません。それから島内のショッピングに関しましてはサービス券が付きます。お買い物の際そちらをご利用になりますと何割か値引きされます」
「あ~うん。詳しい事はパンフレットとかあります?それ読んで確認しますので」
「それではプラチナコースでのご予約という事でよろしいでしょうか?」
「お願いします」
超豪華内容になったみたいだが……まぁいっか。新婚旅行だし。
一応アセナにもこれはいいか、あれはいいかと聞いたがほぼ上の空だった。
で、今回は超豪華リゾートで1ヶ月の旅と言うとんでもない内容となったのだった。
まぁいつ使うか分からない金を消費できたのは良かったか。




