まずは誰を助ける?
色々と暴走してしまった翌日、俺とアセナは朝食を取っていた。
ちょっと気まずいな~っと思っているのは俺だけなのだろうか?アセナに気まずいような気配はない。
むしろすっきりした様に見えるのは何でだろうか?
「ごちそうさま」
「おそまつさま」
そう言った後アセナは俺の隣に来て、俺の肩に頭を預ける。
何と言うか……アセナのスキンシップが少し多くなった気がする。
今までは一緒に居るだけって感じだったが、今だと軽く触れあったり今みたいによりくっ付いて来る事が多くなった。
そして俺がアセナを包むように手をまわすと、耳がピクピク動くし尻尾も大きく振る。
うん。誇り高い狼から一気に愛玩犬になった感じだ。
まぁこれはこれでイチャイチャできて俺的にはとても喜ばしい。
「………………今まではこんな安心する事なかった」
「ん?」
「創造神から与えられた役目を果たそうとするだけで、こういう安心できる場所みたいなの作ろうとしてこなかった。ただ役目を果たして後は寝るだけ。だから……知らなかった」
「そう……か」
「だからありがと、タツキ。安心できる場所をくれて、安心できる心を教えてくれて」
「別に大した事じゃない。ちょっと探せば誰にだって手に入れるものだ」
多分そうだと思う。
俺じゃなくてもアセナの姉妹とか、親である創造神とか、どこかしらには安心できる場所と言うものは存在するだろう。
ただそれに気付けたのがこの間のタイミングだったというだけだ。
だがアセナは首を横に振って否定する。
「これはタツキと出会えたから手に入った物。タツキと出会えなかったらこの安心すると言うものを知らずに過ごしてた。断言できる」
「そうか」
何と言うか……気恥しい。
そりゃそう思ってもらえる事そのものは嬉しいし誇らしい。
でも正面からそう言われるのは慣れていない。
そしてアセナは興味深そうに言う。
「タツキは恥ずかしがると口数が減る。ちょっとかわいい」
「いや、恥ずかしがったら口数が減るのはみんなそうだと信じたいのだが……」
「でもタツキは分かりやすい。エッチの時は夢中って感じだったけど」
「それはお互いだろ!!お前だって何だあの顔!とろけきってたじゃねぇか!!」
「うん。初めての感覚に流されっぱなしだった。でも、幸せで気持ちいい」
「その感想に対してはどう返答すればよろしいのでしょうね!!」
「毎日……する?」
「それは止めよう。俺ばっかり動いてたからかどうか分かんねぇが、お前体力あり過ぎ。普通の人間だったらとっくに疲れ切ってるぞ」
「……ちょっと残念。なら……どれぐらいにする?」
「2日に1回でお願いします」
「お願いされた」
なんだかんだで思春期男子、エロい事に興味はあるので積極的である。
まぁその辺はいい加減置いておいて、だ。
俺はマコトに魔改造してもらったスマホをいじってニュースアプリを開く。
少し確認したい事があるので丁度ニュースアプリを使ってみようと思ったのだ。
アセナもスマホに興味あるのか俺の手元を覗き込んでいる。
「何してるの?」
「ドワーフ王国でのニュースが載ってないかな~っと思ってさ、今調べて……あ、この記事か?」
俺達がアセナの力を封じた球を盗みだした後、王国ではどうなっているのか確認したかったのだ。
無理に危険を冒してドワーフ王国に行くわけにもいかず、どうなったのかな~っとずっと考えていた。
1週間ほど前なので記事が残っているかどうか気になっていたが見つかった。
記事によると、黒い鎧の何かがドワーフ王国の宝物殿に侵入したが素早く動いた王国兵士により宝は守られる。しかし黒い鎧は逃走時に兵士を殺害。現在もまだ発見に至っていない。
犯人は鎧から察するに大柄な男。ドラゴンのような形の鎧であった。
思い当たる人物を見かけた場合情報を求める。
簡単に言うとこんな感じだ。
だがアセナの力を盗んだ事に関しては記事に乗ってないな。
単に極秘事項だから載っていないだけか、はたまた俺に殺された兵士達に華を持たせただけか、詳しくは不明だがそう簡単に表ざたには出来ないだろう。
アセナの事についてどれだけ知っているのかは後でさらに調べるとして、真祖の力を封じていた物が盗まれたとなれば大問題だろう。
確かにこれはマコトの言うようにとんでもない事と言える。
そしてニュースの日にちを変えて今日のニュースを読んでみると、黒い鎧に関して情報をまだ集めている。
想像以上にお怒りを買ったみたいだな。
人類存亡の危機だから当然と言った方が正しいのかな?
そう思っているとアセナが急に俺の膝の上に座った。
「アセナ?」
「狩りに行こう」
「あれ?もうそんなに食材なくなってたっけ?」
「いいから行く」
「ちょっと待て!それならせめて皿洗ってから行かせてくれ!」
そう言われて俺はテーブルにスマホを置いて狩りに出かける事となった。
-
狩りから帰ってきた後俺はアセナに聞きたい事があったので聞いてみる事にした。
「アセナ。ところでお前の姉妹を助ける順番ってどうする?」
「順番?」
「ああ。一応全員助けるって言ってもある程度方針は決めた方がいいだろ?だからせめて助ける順番を決めた方がいいんじゃないかと思ってさ」
仮にこれと言った順番がないのであれば、東に居る狐の真祖を助けてその後鮫、カラス、蛇、猫の真祖と言う順番で回りたいと思っている。
それに対して何か意見があるかどうか確認しておきたかった。
「猫と狐は後でいい」
「そうなのか?それじゃ鮫の真祖を助けてカラス、蛇、猫、狐の順でいいか?」
「うん。それならいい」
なんだろう。今不機嫌な感じがした。
もしかして猫と狐の真祖の事が嫌いなんだろうか?
そりゃ姉妹と言っても仲の良い悪いは当然あるだろうし、優先順位もあるだろう。
だが今のはとにかく嫌いっと言う感じがしたので俺は特にツッコミを入れずにおく。
時に避ける事も重要なのだ。
「ところで何で鮫から?カラスの方が近いのに」
「どうせ海に出るにはエルフの国周辺に行くのは間違いないし、しばらく滞在する事になるだろうから出来るだけ後に回しておきたいんだよ。カラス助けて、鮫となると休まる時間は全くなさそうだからな。人魚族ってのがどこに住んでるか大体調べる事はできるだろうが……水の中でどれだけ活動できるかは分かんねぇしな~」
正直言ってそこが最大の難関かも知れない。
人魚の里だか国だかが竜宮城の様に水中に住んでいるとすれば厄介さはさらに増す。
それに俺の変質は食べた魔物によって変化する。残念ながら現在水中行動に適していると思われる魔物はワニしか食ってない。
淡水海水の差はどれほどなのか、それによって泳ぎ方などはどれぐらい変わるのか検証した事がない。
となるとやっぱり海に潜るのなら海の魔物を食べて変質するのが最も確実な方法だろう。
となるとやっぱりしばらくはエルフの国に滞在しながら人魚族の国を探す。
恐らくマップ機能を使えば簡単に見つかるだろうが、ずっとスマホを見ている訳にもいかないからな……
とにかく事前準備はしっかりとさせてもらおう。
今回ばかりは『変質』で抜け道作るとか、そう言う手は通用しない可能性が高い。
なんせ周りは海水だからな。
「アセナは水の中どれぐらい行動できる?」
「難しい。犬掻きでしか泳いだ事ない」
当然の返答だと俺は思う。
それではどんな場所に隠されているのか手早く調べますか。
テーブルの上に置いていたスマホを持って操作する。
アセナも情報を確認しておきたいのか、俺の膝の上に座って一緒にスマホを見る。
まずはマップ機能を利用して鮫の真祖を封じた場所を検索する。
すると簡単に見つかった。
エルフの国よりずいぶんと南側、小さな島が数多く存在するガラド諸島と表示された。
マップを拡大し、より詳しい位置を把握しようとすると……何だか妙だ。
動き回ってる?
まさかどこかの超巨大な魔物の腹の中って事はないよな?
もしくはファンタジーあるあるで人魚の国が超巨大な魔物の腹の中って事だったり……
真祖の封印を解くためとはいえそうだったら嫌だな~っと思いながらスマホで詳しく調べると……マジか。
超巨大な魔物の腹の中ではなかったが、超巨大な魔物の背の上に国作ってやがった。
この超巨大な魔物の正体はウミガメ、甲王セフィロ・トータス。
魔物の中では珍しく温厚な性格で甲羅の上や内部に生物を住まわせる事がある。なんて書いてあった。
「マジか~天然の移動する国とかファンタジー過ぎてやってらんね~」
さらに調べると甲羅の上で人魚達は暮らしている様だ。
その巨大亀の背の上で暮らしているとなると侵入すら難しいかも知れない。
ドワーフの国の時みたいにうまく行けるかな……
じっと見ていたアセナが俺に言う。
「面倒なら食べる?」
「いや、それは無理だろ。こんなバカデカいウミガメどうやって食い切れと?殺すなら全部食うぞ。と言うか亀って食った事ないんだけど?すっぽんと同じ感覚で食っていいのか?」
京都料理とかでたま~に見るが、当然実際に食った事など1度もない。
精々生き血の日本酒割りって生臭そうだな~っと思ったぐらいである。
そういや鮫ってウミガメを好んで捕食するんじゃなかったか?サーファーがサメに襲われる理由の1つだってテレビで聞いた事ある。
そのウミガメの背の上で鮫の真祖を封印してるとか大丈夫なのか?
いや、これから俺達が封印解きに行くわけだけど。
「すっぽんは……美味しい?」
「いや、食った事ない。基本的に食ってるのはワニとかもっとデカくて食いごたえのある奴ばっかりだからな……」
と言うかカメもすっぽんと同じように調理していい物なのか?
と言うか確かにそのウミガメも捕食してその力を手に入れておきたいところだが、いつの間にか食う事を前提として考えてしまっている。
国1つ背負って泳ぐウミガメなんて食い切れるはずがない。
「とりあえず食うのは置いておこう。問題はこの国に入る方法と真祖を封じ込めている場所と物を探し出す事だ。いつだって食えるって事はないが今回は真祖の復活を優先する」
「それは構わない。でも……」
「でも?」
「もうちょっと新婚の雰囲気が欲しい……」
耳を頭にくっ付けながら言うのは止めてくれ、何か罪悪感が出てくるから。
だがアセナが言いたい事も分かる。俺だってアセナともっとイチャイチャしたい。
焦る必要はないだろうが、俺はノリとタイミングで生きる男。ノリがいい内に1つでも多くの真祖を解放しておきたい。
でもせっかくの新婚生活、もう少し2人っきりで居たいなっと言う気持ちもある。
どうすりゃいんだろうと考えているとアセナが「あ」っと呟いた。
「どうかしたか?」
「これ!これが1番都合がいい!!これで行こう!!」
アセナが興奮したように言うのはとても珍しい。
都合がいいという部分にも疑問を持ったが、アセナが指を指す記事を見てとても納得した。
「アセナ、準備するぞ」
「うん!」
俺達は慌ててエルフの国に行く準備を始めたのだった。




