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 1週間後、久しぶりにユウガが来た。

 ユウガを家に入れてリビングで話をする。


「お~久しぶり、復興どうよ?」

「みんなで色々頑張ってる。タツキは王様に大出世だね」

「アセナ達を見れるのが俺しかないからだろ。今日はどうした」

「勇者のお仕事。ギルドからの依頼でこれを届けてほしいって」


 そう言って渡しに来たのは封筒である。その封筒には自由学園からの書類であると書いてあった。

 封筒を開けて中身を見てみると、そこには子供達の復学手続きにヒノ先生とアラドメレクの教員として雇用する手続きが完了したと言う書類だ。

 これできちんと5人は元の生活に戻れる事に満足しながら、そしてやっぱり俺はダメだったと少し残念に思いながら見た。


「よし。とりあえず最低限はクリアだな。これで子供達は元の生活に戻せる」

「ずっと思ってたんだけど……僕はてっきりタツキは子供達とずっと一緒にいるんだと思ってたよ。だから保護したんじゃないの?」

「そりゃ1回関係を築いて情やらなんやらはあるよ、でもこの森にずっといさせるつもりもない。あの子達は子供だからな、未来をつぶすような真似はしたくないだけだ」


 俺は書類をアナザに手渡して子供達とヒノ先生に渡すように言う。

 アナザが持って行った後に続ける。


「当然俺は好きで元の世界からこの世界にやってきたから帰るつもりはない。でもあの子たちはこの世界の連中の身勝手で拉致られてきたようなもんだ、もし将来的に元の世界に帰るために色々旅をしたいと考えるのであればそうすればいいし、この世界で生きていくというのであればそれでいい。俺自身好き勝手やってるから俺もその邪魔をしたくないだけだ」


 そういうとユウガは納得したように頷く。


「確かに僕達は好きでこの世界に来たからね、僕もある意味好き勝手してきたかも。ところでタツキはどんな理由でこっちに来たの?」

「あれ?言わなかったっけ?」

「僕が来た理由は言ったけど、タツキが来た理由は聞いてない」


 そうだったっけか?っと思いながら俺がこの世界に来た理由を思い出す。


「別に大した理由じゃない。ただ暇だったからだ」

「暇?でも確かあの場所で転移組として呼び出された条件は……」


 本気で自殺しようとしている人間か、元の世界に興味が全くないかの2択だ。

 ユウガは俺が自殺するような人間だと思わないだろうが、暇と言う理由で後者になったとも思い辛いんだろう。

 悲観的な表情ではないが、どうしてそうなったんだろうと言う疑問が表情に現れていた。


「まぁ俺も暇って理由で転移したのは意外だとは思うけどね。でも元の世界じゃ本当に何もなかったんだ。やりたい事があった訳じゃない、夢や希望があった訳でもない、だからと言って普通の人間として社会に流されるだけも出来そうになかった。やりたい事もない、だからと言って自分の足だけで立ち上がる勇気もない、これだけは自信を持って言える才能もない。だから俺は思春期真っただ中の中二病的な考えで後先考えず、この世界に来たって感じだな」


 そう言うとユウガは意外そうな物を見るようにする。


「てっきり元の世界でも自由気ままに生きてたんだと思ってた」

「いや、流石に向こうの世界じゃ暇ではあったが犯罪を犯したりしないぞ。ただやる気も何にもなかっただけで、本当にただ無意味に生きてたってだけの話だし。むしろ犯罪を犯す連中って逆に言えば犯罪を犯してでも何かしたいって強く思わないと、そう簡単に罪を犯す様な事はしないと思うぞ」

「それは……確かに」

「だろ?まぁユウガの場合は本気で正義の味方になりたいと思っていた訳だから、俺とは全く違うけど」


 そう言うとユウガは確かめるように聞く。

 どこか愉快そうな表情をしながら。


「それで、この世界で何か目的は出来た?」

「色々できたな。子供達の世話、アナザ達が暴れない様に見張る、アセナと将来的に子供欲しい」

「最後のはそう時間をかけなくても出来そうな気がするけど」

「なんかよく分からないけど出生率は低いんじゃないか?頂点捕食者と言えるアセナがポンポン子供産んだら世話じゃなくて世界が大変だろ」

「確かに、そうなったらこの世界完全に終わるね」


 そうユウガは笑いながらもう1つの封筒を取り出した。

 先程の封筒よりも厚く、本でも入っているのではないかと言う厚さだ。


「これは?」

「タツキの分だよ。見れば分かる」


 そう言われるがままに受け取って封を開ける。

 中身は大量の書類と分厚い辞書のような本。薄い書類の方にはヒノ先生達と同じく、自由学園に正式な教員として雇うと言う内容だった。

 俺はこれに驚きながらユウガを見る。


「ユウガ、これ!」

「一応僕もその事について聞いてる、説明係としてね。タツキが面接を受けた次の日に世界会議をまた行ったらしい。その時にこの森の中心で何しているのか分からないよりも、誰かの目に届くところにおいて監視する方がいいのではないかっと言う内容で落ち着いたらしい。その理由として自由学園で先生として働くと言う形で拘束しようと考えたんだって」

「なるほど……職場を与える事で行動の1部を拘束するっと言う形にしたわけか。納得」


 書類に目を通しながら流し読みすると、詳しい勤務時間や他の職員との違いなどがか書かれている。

 まず違いは寮に俺は住めない事。

 他の職員たちは家族連れで社宅の様な場所に住んでいるらしいが、流石に真祖達をそこに住まわせる訳にはいかないので住まわせる事が出来ないと言う事。その代わり帰宅用に勤務時間は他の教員よりも短く設定されている。

 次に俺は特定のクラスを受け持つのではなく、中学や高校の様に1つの授業を行う教員として雇うと言う内容。

 本来は年齢や才能ごとに分けられたクラスの担任か、副担任として配属されるらしいが、俺は1つの授業を学年問わず行なって欲しいとの事。専門は実戦演習と言う物であり、直接子供達に戦い方を学ばせる授業を担当する。

 その際必要な物は自ら用意して欲しいとも書かれている。特殊な訓練用道具を使いたいのであれば自分で用意して欲しいそうだ。


 大きな違いに関してはこのぐらいか。

 他の違いに関しては細かいのであまり気にしない。ただヒカル達のクラスを特別扱いとかしない様にッと書かれているぐらいか。

 それから授業は俺の他にそのクラス担任か副担任が一緒に授業を行うが、メインはあくまでも俺であると言う内容だ。あくまでも他の教員が居るのはストッパーとして本当に授業のレベルが合っているかどうか見守ると言う。

 当然レベルに合っていない、危険だと判断した場合は止めに入る。


「この条件なら別にいいな。ここから学校まで通うのは構わないが、一々城門手続きとか面倒だな……せめて近くにポータル的な物を配置させてくれないかね?」

「それは……要相談じゃないかな。確かに便利だけど、その分危険性も上がる訳だし、タツキや他の真祖達が闘うためにそれを利用すると考えられちゃうんじゃないかな?」

「あ~。そう考えると普通に飛んでいく方がいいのかな……もしくは転移系の魔法を使うのどっちかか。せめて飛行機の発着所みたいな所だけは用意してもらおう」

「それって素直に校庭とかでも良さそうだよね」


 何て話しながら俺は無事に就職する事が決まったのである。

 就職と言う言葉であっているのかどうかは不明だけど。

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