学校はどうする?
国際会議の後、家に帰ってきた俺はヒノ先生、アラドメレク、ヒカル、カエル、トキの5人に大切な話があると言っておいた。
話すのは飯を食って一服した後、のんびりとした空気の中で言う。
一応話の順序として俺が王様と言う立場になった事も伝えておく。
「みんな。今日の国際会議で俺はこの森の中心が俺の縄張りだと認められた。肩書は一応大国の王と同等の権力らしい」
「へ~。まぁ当然ね」
『私達も一応王みたいな感じだし、自然よね』
「えっと……おめでとうございます?」
「それって何か変わる?」
真祖であるウカ、スノー、アスクレピオス、トヨヒメは特に何と思っていない様子。ヴィゾーヴニルも変わらずお茶を淹れてるし当然だろうという雰囲気が強い。
そしてジャックは手を上げて言う。
「国王様!それでは今後の研究予算を下さい!!」
「却下。好き勝手にさせてるんだから別にいいだろ。それに一応今の研究機材はウェールズさんからの贈り物だから新しいのが欲しくても手に入れる方法とか全く知らん」
「全部先にやられた!!」
容赦なくジャックの要望を却下すると、俺は本題に入る。
今回の本題は、ヒカル達の復学についてだ。
一応ギルドマスターから休学扱いになっているからいつでもいいと言われているが、それでもヒノ先生の予定やヒカル達の意思だって関係する。俺の勝手で復学しろとは当然言えない。
なので5人そろった状態で言う。
「それでだ。今日ギルドマスターにヒノ先生達を学校に戻せないかっと聞いたらいつでも構わないと言われた。一応ヒカル達は休学扱いとしているらしいし、こちらが復学したいと言ったらいつでも協力してくれるらしい。どうだ?学校に戻りたいか?」
これでも言葉を選びながら言ったつもりだ。
俺の意思を押し付ける訳ではなく、本人達の意思を尊重するように言ったつもりだ。
それを聞いた5人は少し驚きながらもヒノ先生が言う。
「もう戻っても大丈夫なんですか」
「最低でも俺はそう判断してます。ジャッジと言う脅威は消え、精霊使いを狙う理由もなくなりました。法王セイヤや他の信者達は復興に力を注いでいるので手を出す暇もないと思います。それに俺の庇護下に居る者を攻撃するほど馬鹿な奴が居るとは思えません」
「そう言われるとそうですが……学園側は何と」
「その辺りまでは確認は取れていません。ですがあまり悪い感じはしないと思いますね。一応あの横暴な連中から学校を守ったりしましたから」
そういた事を考えて言うとヒノ先生は考える。
そこにアラドメレクが手を上げながら言う。
「私は正真正銘の悪魔だけどまた先生として働いていいの?」
「その辺りは俺が交渉する。いくら俺を狙う奴が激減したとはいえヒカル達を守る存在は多い方がいい。それに俺が強過ぎるせいでヒカル達を狙うバカが居ないとは限らない。お前だってヒカル達に情ぐらいあるだろ」
「それは状況によるけど。ま、その時はまたヒノの影にでも隠れておいてそっと助けるわよ」
そんな風に口約束をしてくれた。
さて、そうなると今度は子供たち自身の問題だ。
端的に言えば学校に戻りたいか、戻りたくないか。勉強と言う意味ではここで行なってきた。ヒノ先生と言う教師が居るので文字の読み書き、計算の仕方、この森の外にいる普通の魔物に対する知識など、冒険者として必要な知識を教えてきた。
だからぶっちゃけ勉強という観点から見れば学校に行く必要はない。
だが子供同士のコミュニケーションと言うか、社会性を学ぶにはやはりを学ぶには同世代の他の子供達と関係を築いていくしかない。
前の世界でよく母が日本の教育について、「総合とか道徳とか要らなくない?勉強しに行っているんだから体育とか必要ないでしょ」っと言っていた。
これに対して俺の考えはあくまでも子供同士のコミュニケーションを与える場っと言うのが正しいのではないかと思う。
極論しか言えない俺にとっては、そんな事を言うなら最初から学校なんて通わずに塾にだけ行ってればいいだろっと思う。それなのにわざわざカリキュラムに組み込むという事は、体育などで身体を動かしながら他人を見て動いたり、道徳で他の誰かがどう感じるのかを知る機会と思っている。
あくまでもこれは日本の学校を元にした考えだが、俺は別にこれはこれで間違っていないと思う。
1人1人教える塾などでは塾の講師としか関係を築かない者は築かないだろうし、集団で教える塾だったとしても相手に興味を持つか、持たれない限り本当にただ勉強をしているだけだ。
勉強を学ぶだけならどこでだって出来る。小学校も中学校も高校も大学も要らない。知りたいという意欲があれば場所なんでどうでもいい。
しかしコミュニケーション能力を鍛えるには実戦しかない。実際に見ず知らずの他人と話してみて、そこから他人とのかかわり方、話し方を学ぶしかないと思う。
年下への態度、年上への態度など本当に勉強してきただけの誰かはうまくコミュニケーションが取れると思えない。
だからこそ俺は子供達に学校に行き、様々な関係を持って欲しいと思う。
まぁ結局のところ俺個人の考えであり、子供達がやる気がない限り意味ないけどな。
俺自身好き勝手してきたから人に対してあーだこ~だ言いたくないし。
そう思いながらもヒカルとカエル、トキは嬉しそうに言う。
「また学校行けるのか!?行っていいんだな!!」
「ここの生活も悪くないですけど、外で遊べませんでしたからね」
「学校に戻ったら、ケリーちゃんに、ソワンちゃんに自慢しよ!」
どうやら学校生活は悪くない物だったらしく、このままここに居たいと思う者はいないらしい。
ちょっと寂しい感じはあるが学校に行きたがるのは良い事だ。
俺は本当に学校に通っているだけで特にいい思い出はないけど。特に中学時代。
3人の様子を見て俺はヒノ先生に言う。
「この様子なら学校に通わせても大丈夫そうですね。いつ頃にします?」
「そうですね……私達も教師としての立場があるので1度校長先生の元にお伺いしましょう。校長先生も突然復学すると言われても大変でしょうし」
「そうですね。でもいつ頃がいいですかね?大雑把にでもこの辺りが良いと言うのはあるでしょうし」
「それも校長先生と話しながら決めましょう。子供達が望んでいますし」
子供達が学校に前向きと言うのは良い事だと俺も思う。
ではギルドマスターには校長先生と相談しながら決めると言おう。ついでに子供達もやる気だと言っておいた方がいいんだろうか?これは校長先生だけでいいか?
なんて思っていると子供達は、学校にまた通う事が出来たら何をするかを話していたと思ったらトキが俺に向かって満面の笑みで言う。
「タツキ先生も一緒に学校に行くんだよね!」
「え、俺は行かないと思うぞ」
そう言うと子供達のテンションが一気に落ちた。
あ、あれ?何で急にこんな雰囲気になんの?俺なんか悪い事言った?
そう思っているとトキが滅茶苦茶落ちたテンションで暗~い雰囲気を出しながら言う。
「先生が一緒じゃないならいいや。学校行かない」
「え、ええ!!」
俺はついそんな声を出してしまった。
ヒノ先生もアラドメレクも驚いた表情をし、この発言にはヒカルもカエルもちょっと驚きながら言う。
「トキ。確かにタツキ先生が一緒に来ないのは残念だけど、それだけで学校に行かないって言うのは……」
「さっきまで他のクラスの子に会えるって喜んでたじゃん!ここに居たら会えないぞ?」
「……いい。それよりタツキ先生と一緒が良い」
こ、これは本気だ。本気で言ってる。
どよんとした空気を出す時に対して俺は難題を目の前に考え込むしかないのだった。