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会議後

 俺は会議を終えて帰ろうと席を立ちあがるとフシミとガロウから声をかけられた。


「タツキ様、ご機嫌ごきげん(うるわ)しゅう」

「お前のその声は媚びへつらい過ぎだ。お久しぶりです、タツキ様。本日は王となった喜ばしい日ですな」


 相変わらずな2人に俺は笑いながら言う。


「ああ久しぶり。そっちも元気そうでよかった。ウカも元気にしてる」

「左様ですか、それは喜ばしい事。して、少々お話をしたいのですが、よろしいですか?」

「良いよ。でも今日は普通に帰るから短めにね」


 そう言ってからアセナ達を連れて別の会議室の様な所に行く。

 その会議室はアヴァロン内の別な会議室の様で、それなりに広い。たださっきの会議室と違ってさらにイスやテーブルの質は上がっており、ドラマで見る悪い大人達が会議するような薄暗さがある。

 そんな会議室に居たのはドン・セフィロ、法王セイヤ、ノーマ国王、ゲン・シシゴウ、そしてユウガたち勇者パーティー。

 座っているのはドンとセイヤだけだが、ユウガ達は一応セイヤの護衛と言う感じなのだろうか?


「タツキ殿、どうぞお座りください」

「は、はぁ。それにしてもどう言う事だ?この世界の代表者だけが揃っている様な状態じゃん」


 戦争に負けたからか、セイヤが席から立ち上がり下手に出る様に俺に1人用のソファーに座るよう促す。

 俺は気の抜けた返事で返しながら座ると、アセナは狼の姿になって俺の膝の上に乗る。

 そういや悪役のボスって良い椅子に座って膝の上に動物居るよな~っと関係のない事を考える。

 フシミとガロウもそれぞれソファーに座って話をする体制を作った。

 ノーマ国王が言う。


「タツキ殿には今後の事に関して相談したいと思ってこの場を設けさせていただきました。突然の事で申し訳ない」

「それは別に構いませんよ、ノーマ国王。それで話とは?」


 そう改めて聞くとギルドマスターが俺に聞く。


「まだ真祖封印を諦めていないドワーフ王とエルフの女王に対してどうするか聞きたい」


 なるほど、確かにそれは人間にとって重大な問題だろうな。

 ドワーフ王とエルフの女王から感じた視線はまだ敵意があった。より正確に言うと敵意があったのはエルフの女王であり、ドワーフ王はただチャンスを待っているっと言う感じか。

 その事を思い出しながら何て事のないように言う。


「別に、放っておくさ」

「これはまたあっさりとした返答。眼中にないと言う事ですか?」


 フシミがそう聞くので俺は頷く。


「だってあいつら滅ぼしたからってな~んのメリットもないもん。安易に俺と敵対する事の意味はジャッジのバカで分かったはずだ。それなのに喧嘩売るバカ居るの?」

「居るだろうな。最低でもエルフの女王は未だに諦めておらん。奴は偉業などと言う言葉に興味はもたないが、昔カラスの真祖に恨みがあると言っていた。それにあのエルフは我々の中でも特に長命、昔カラスの真祖に何かされたのだろう」


 ふむ……昔ヤタに何かされた、ね。

 その辺の話はヤタじゃなくてヴィゾーヴニルに聞こうっと。


「それで、俺にあいつらと喧嘩するなって事でいいのか?」

「むろんそれもある。だがそれとは別に今後の交流に関してもどうするか話しておきたいのだ」


 そうドンが言う。

 交流……と言うとやっぱり外交とか輸出入に関係する事だろうか?ぶっちゃけ俺と真祖であるアセナ達、そしてアナザ達悪魔しかいないので国とは言えない。

 それに輸出入と簡単に言っても特産らしい特産なんてない。森に居るSランクの魔物でも他国に卸せばいいのか?それとも魔石?ドワーフの所には魔石が丁度いいだろうけど、具体的にどれぐらい魔石が埋まっているのかとか採掘量とか調べた事ないからな……

 俺は少し考えてから聞く。


「交流ってやっぱり輸出入なんかも含まれるよな?」

「当然だ。何か特産になりそうなものはないか」

「と言われてもな……パっと思いつくのはSランクの魔物を売るぐらいか。それって特産って言えんの?」

「価値は十分にあるでしょう。しかも安定して卸していただけるのであればこれ以上ない価値と思われます。ただ……魔物だけでは時期など他の問題も生まれるでしょうから、他に安定した物が好ましいですね」

「だよね……元々俺達の家として土地権をもらったような感じだし、無理に国として機能させる必要もないか?」


 フシミの言葉を聞いて俺はソファーに寄り掛かりながら言う。

 突然大国の王様と同じだけの権力をもらってもどう使うか考えたことはない。他の国の人達はあくまでも俺を国際ルールに縛り付けるのが目的だろうし、俺だって身内を危険にさらされたっとなれば正当に他国を法で攻める事が出来る。

 やっぱ無理に国として機能させる必要はないんじゃないかな……あの森を抜けて輸入できる人っているの?俺今のところユウガ達しか知らないんだけど。


「う~ん。田舎に住んでるから輸出入は難しいし、やっぱ無理に交流しなくてもいいんじゃない?そりゃ印象は出来るだけ良くしたいけどさ」

「そう言われてみると確かに、あの森を突破できる者はそう多く居ませんから。フシミ、無理に国交などを繋げる必要はないのではないか」

「ですがせっかく参加していただいたのだから関係を見せつけておきたい。さすれば獣人だからと不当な扱いを受ける事も少なくなる」


 なるほど、化物の威を借りる獣と言う所か。人間とそうでない者の差別はそう簡単になくなるものじゃないし、仕方ないのかね……

 あ、そうだ。


「それなら俺がキリエスの復興を手伝おうか?これなら印象悪くないんじゃない」


 そう考えて言ってみると他の王達は深く考え込んで口に出す。


「確かにそうすればキリエスの事を許したと思う者は思うでしょう。しかし……」

「友好と言うよりも恐れられる可能性が高い……それにあまりにも早過ぎる。いずれは友好的な関係になったと伝えるべきだろうが、今ではないのでは?」

「それに現在残った温厚派や中立派のキリエス教徒たちが復興を頑張っている。彼らにとってタツキ殿はまさに恐怖の象徴。私は早いと思います」


 なんて感じで話していると、法王セイヤがそっと手を上げてから俺に言う。


「タツキ殿。そのお言葉はありがたく頂戴いたします。しかし復興に関しては私達の手で行わせていただきたい」

「そうか?でもかなり広範囲だぞ。そりゃ馬とか牛とか、いろんな動物とかも使って復興するんだろうけど時間掛かると思うぞ。俺かウカなら簡単に――」

「簡単に行ってはいけないのです。我々は本当の意味で自立しなければならないのですから」


 そう言う法王の目は、若々しい熱意溢れる眼の色をしていた。

 それに本当の意味での自立と言う言葉も気になったので少し背筋を伸ばしてから聞く。


「本当の自立って何だ」

「本当の自立とは人の足で立ち上がる事です。温厚派、中立派の者達もジャッジ様の消滅に涙する者は多く居ました。ある者は私が神の死を招いたと言いますが、その通りです。私達は神にすがり、いつの間にか自分達の足だけでこの大地を踏みしめる事が出来なくなっていたのでしょう。ですが、なら今度こそ自分自身の足で立ち上がり、神のお力に頼るのでなく、人の手でもう1度キリエスと言う国と宗教を復活させるべきなのではないかと思いました」


 それが自立か……

 俺は膝の上に居るアセナの頭をそっと撫でながら真剣に聞く。


「いいのか。ジャッジの力ではないがウカの力を使えばあの真っ白になった大地を元に戻すのは簡単だ。いくら表面だけと言ってもとても広い。いいんだな、手伝わなくて」

「自分達の手でさせてください。もう既にタツキ殿は私が戦争で起こした罪を半分背負っていただいています。これ以上は私に背負わせていただきたい」


 そう返した法王セイヤに「そっか」っとだけ言った。

 俺は真剣な雰囲気を壊すためにあえて言う。


「となるとその内俺を超すかもな。俺は困った事があればアセナ達に頼ってるから。な、アセナ」

『構わない』


 俺にとってアセナは家族と言う枠組みで見ているが、他の連中から見ればそうじゃない。その事を自覚しながらもそう言った。

 そして俺は続けてゲン・シシゴウに言う。


「それからギルドマスター。ヒノ先生とアラドメレク、ヒカルにカエル、トキの再入学をさせて欲しい。もうそろそろ学校に戻しても大丈夫だろ」

「分かった。それは先生もそうしたいと言ってるのだろうな」

「ヒノ先生とアラドメレクにはとっくに確認取ってる。子供達にはまだだが説得するさ。あの子達に化物の世界は早過ぎる」


 俺はあの森で強くならざる負えない状況だったから強くなったが、人にはそれぞれの成長速度と言う物がある。

 あの子達にあの森は早過ぎた。確かにあの森で必要最低限の事は教えたが、主に逃げる事と周囲に危険がないか察する力、そして逃げる体力と、森の中の場合どう走るのが良いか教えただけ。戦う事に関してはヒノ先生が組み手で教えていただけだ。

 最初こそ精霊の力で倒せるなら倒してみろっと言う感じでやっていたが、やはりまずはちゃんと食べて寝て、身体を作る所から始めないとダメだと強く感じていた。

 だからその後は逃げの一手と相手を注意深く観察する方法しか教えていない。あとは俺が魔物と戦う所を見せてどこが弱点か教えたぐらいか。


「分かった。彼らは休学と言う扱いをしているからいつ戻って来ても大丈夫な様にしている。そちらの都合で動ける」

「分かった。子供達にも伝えておく」


 俺にとって1番話したかった事、ヒカル達の復学が出来る事に素直に喜んだ。

 きっと子供達もまた学校に通えると喜ぶ事だろう。

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