結婚しました
アセナが真祖であり。人の姿になった事に驚きつつも俺はアセナを連れて神殿に戻った。
アセナはキョロキョロと神殿の中を見渡す。
「ココって神殿?本当にここがタツキの家?」
「正確に言うと家として使ってるって言った方が正しいけどな。何故か転移先がここだった訳だし」
「転移?………………まさか異世界人?」
「え?異世界から人間が来るってこの世界じゃよくある事なの?」
まさかアセナからその言葉が出てくるとは思ってもみなかった。
その辺も説明しようと思ってたのに。
「よくある事ではない。人間が異世界の人間を召喚するには膨大な魔力が必要だし、具体的に言うと……大魔法使い数十人分ぐらい?」
「大魔法使いの基準も分かんないが……よくそんなんで召喚しようと思うな。あ、そこ石とかを加工した椅子だからそこ座って。今水汲んでくるから」
俺は湧水が出ているキッチンから石でできたコップに水を汲む。
できればお茶とか出したいが、アセナにお茶って飲ませて大丈夫なのか?
よく分からないがお茶の方がいいよな?普通は水道水を客に飲ませる家ってないだろうし。
俺は別腹からお茶っ葉を取り出しながらお湯を沸かす。
個人的に好きな温度は60度、1度沸騰したお湯を冷ます?面倒臭い。なら最初から温くてもいいじゃん。
俺猫舌だし。
「はいお茶」
「ありがと」
「悪いな。ここにあるの全部石を変質させて形だけ整えた石ばっかりだからさ、口当たりとか悪い気がするけど……」
「魔物にとっては取るに足らない事だから気にしなくていい。と言うかこれも魔石?」
「一応な。鑑定系スキルは『捕食』しないと判定できないからさ、実は何使ってるのかよく分かってない物もそれなりにある」
「……人間が見たら勿体無いって言いそうな食器。それでどうする?」
「どうするって?」
「結婚生活」
………………前向きに考えてよろしい?
「え~っと、マジで結婚してくれてもいいの?」
「私は構わない。それにあなたは強い。私達真祖ほどではないけれど、十分強いと思えるのだから構わない。弱い相手からだったら断ってた」
お、お~。
初めての恋愛は上々のようだ。
強い雄認定されたから求婚に答えてくれたって事でいいのかな?
そしてアセナは魅力的な微笑みをしながら見る。
「それにタツキって面白い」
「面白い?」
「だってこの世界の人間ならいきなり人の姿に化ける魔物に求婚なんてしない。でもあなたは求婚してきた。と言うか狼の姿でも嫌う事なかったからそれだけど十分面白い」
「どうも」
これって褒められてる?褒められてるって受け取っていいよね?
にしても面白い、ねぇ。
ちょっと俺に似てるかも。
俺は背筋を伸ばして改めて言う。
「これからの結婚生活、不満がある所は遠慮なく言ってくれ。改善できるよう頑張ります」
「別にそんな事しなくていい」
「え?」
あ、あれ?
こう言うのってお互いの嫌な部分を削り合っていくような物なんじゃないのか?
あれ?イメージ違った?
そう思っているとアセナは茶を飲みながら普通に言う。
「今まで通りでいい。今まで通り普通に接し合いながらでいいでしょ?無理に気遣い合うとか面倒。だから旅をしている時と同じで私は構わない。タツキは嫌?」
「それは……正直助かる」
「ならそうする。お互いに気を遣わずにちょっと夫婦的な事をする。それでいい」
そう言ってアセナは思いっきり伸びをした。
その姿は狼の姿の時と変わらない。互いに気を使う事なくのびのびとしている姿だった。
どうやら俺は少し考え過ぎていたらしい。
所詮恋愛は小説や漫画の中でしか知らない。当然これが初恋である。
実在する女性と共に生きるというのであれば、マンガの中の知識よりその場の空気に身を任せる方がいいのだろう。
女心と言うものは分からないが、察する事が出来るぐらいには成長しておきたいな。
「それじゃ……よろしくお願いします。アセナ」
「こちらこそよろしく、タツキ」
そう言って俺はアセナをそっと抱き締めた。
アセナは俺の胸に顔をうずめて撫でられるがままになっている。
そしてアセナは困ったように顔を上げる。
「ところでタツキ。聞いてもいい?」
「どうしたアセナ?」
「夫婦らしい事って何?」
-
神殿に帰ってからは1週間。俺とアセナの新婚生活は上々……だと思う。
何せ前の世界では高校生、カップルは居ても既婚者は居ない。よって物差しになる相手も居ない。
唯一物差しになりそうな俺の両親は……とても仲が悪い。
それに比べれば大分いいとは思うが……子供の俺から見ても悪すぎる。本当に何で結婚したの?っと何度も本気で思った。
ちなみにその時の母の回答は「ごり押しに負けた」である。
新婚生活はイチャイチャしてるんだろ~っと思われるかも知れないが今の所健全なイチャイチャしかしていない。
なんだかんだでこの森で生きるには毎日獲物を狩る必要があるし、『変質』で暮らしやすい様に神殿を改造中。なんだかんだで忙しいのだ。
唯一イチャイチャできるのは飯食った後と、寝る前だけ。
とりあえず夫婦らしい事の一環として一緒に寝るを提案した結果だ。
旅をしている時やドワーフの国に居る時から一緒に寝ていたので、アセナに抵抗感がなかった事だけは幸い。
でも最近は人型のまま添い寝してくるので煩悩を抑えるのはちょっと大変だった。
アセナに聞いたところ、性に関する知識などは一切ないと言ってもおかしくない程に無知だ。
人間や他の動物達は繁殖と言う方法で絶滅せず子孫を残している事は流石に知っている。
しかし実際に性行為をしている所を見た事は当然なく、いつの間にか増えているという感じだそうだ。
そしてアセナには発情期は存在しない。
なんでもアセナ達真祖は神様の手によって直接作られた存在らしく、すでに1つの個として完璧であるが故に繁殖しようとする気は起きないそうだ。
そのため寿命もない。
不老不死なのかどうかまでは分からないそうだが、それに限りなく近いのは間違いないだろう。
と言う訳で思春期を暴走させてアセナを襲う訳にはいかないのですよ。
当然焦って嫌われたくないという感情もあるし、大切にしたいという感情もある。
ならばどうするか?
耐えるしかないのですよ。
流石に子供はそのうち欲しいとは思うが、流石に今は早い。早過ぎる。
もうちょっと2人でイチャイチャしていたいし、健全なイチャイチャでも十分心は満たされる。
でもたま~にエロい事したいな~っと思ってしまうだけである。
-
『やっほ~久しぶりだねタツキ!!僕だよ!!マコトだよ!!』
アセナと一緒に狩りをして帰って来たらマコトがいた。
「また急に出てきたな。なんかいい事でもあったか?前以上にテンション高いけど」
『だってね!!君が世界に対してとんでもない事をしでかしたからだよ!!掻き乱してとは言ったけど、ここまでの規模の嫌がらせを人類に行うとは思ってもみなかったよ!!』
自称神は幽霊みたいなものなので神殿の中を自由に飛び続ける。
俺は呆れているとアセナは俺の事を見て驚きながら聞いてきた。
「タツキ、もしかして創造神?」
「らしいぞって知ってるのかアセナ?」
「だって創造神が私達を創ったから」
………………え?
そんじゃこの軽いのが俺の義父?
初めて母親の気持ちが分かった。自分と反りの合わない義父義母はそりゃ気に入らないわ。
そう思いながらマコトを見る。
『しかも真祖の1体を妻として迎えて新婚生活を送ってるってどう言う事!?どういう状況??もしかしてそれが最初から目的だったの!!って感じなぐらい面白いよ!!やっぱり君をこの世界に呼んで大正解だった!!』
大笑いしながら話すマコトに俺はしびれを切らして頭を掴む。
「おい。出てきたって事は何か用事があんだろ?それともただからかいに来ただけか?」
『あはは……どっちでもあるって言うのがホント。僕創造神だから気紛れなんだよ。仕事はちゃんと終わらせるけどね。それより狼ちゃん、楽しんでる?』
「うん。タツキと一緒に楽しんでる」
『うんうん。それは良かった。それじゃ僕も安心だよ、長い時間人間の勝手で封じ込められていたからね』
その表情だけは優しげな顔に見えたのは気のせいか?
こんな俺以上にノリと勢いだけで生きているような奴にも親心みたいなものは存在するのか?
でもマコトが俺に向けるのは悪戯が大好きな子供のような笑みだけである。
『それじゃちょっとタツキ君にお願いがあって来たんだ。あ、それと結婚祝いもね』




