表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/170

国際会議参加

 俺は戦争が終わってから真剣に修業し直していた。

 理由は簡単。クソ神ジャッジにやられた時間停止中に良いように殺され続けたからだ。自己再生があるから何の問題もなく生き残ったが、そうでなかった場合俺はとっくに死んでいただろう。

 なのでせめて時間停止されても何の影響も出ないように肉体改造、知識、実践訓練を続けていた。


「う~ん。いまいちだな……相手が発動してまだ0.5秒ぐらい時間がかかってる。もっと0に近い感じにしないと戦闘じゃ使えない」

「あの~お言葉ですがタツキ様。我々悪魔から見ても十分だと思いますよ?たった1週間でこれほど早く対応できるようになったのですから」


 ルナはそう恐る恐る言う。

 時間停止空間を作っていたスノーが疲れた様に子猫の姿で地面に敷物の様にひらべったくなり、疲れた様子で言う。


『そうよそうよ。私の停止をたったの1日で動けるようになって、そして1週間でほぼ時間差なく行動できるようになったら十分でしょ』

「0.5秒あったらスノーだって100回ぐらい殺せるだろ。それじゃまだまだだろ」

『この戦闘狂~』


 あ、スノーの心が折れた。こうなるとしばらく無理だな。

 スノーの脇腹を突っつきながら大丈夫か確認していると、尻尾で叩かれた。生きている様なのでよし。

 そう思っているとヒノ先生が俺に手を振りながら呼ぶ。


「タツキさん。ゲンから連絡が来ましたよ」

「え?ギルドマスターから?」


 何かあったかな~っとスノーを抱き上げながらヒノ先生に聞く。


「それでどうしたの?」

「はい。何でもこの大陸の王族達全員が揃って会議をしているそうです。それでタツキさんにも参加してほしいと」

「俺も?この間国1つ滅ぼした奴によく会いたいなんて思ったな」

「自分達にその滅びの力が向かないようにしたいと思いますよ。ゲンもギルドマスターとしてタツキさんの動向を気に掛けているようですし」

「ま、強大な敵がどう動くのか気になるのは当然か。良いよ、それでいつごろ会いに行けばいいんだ?」

「出来るだけ早くって言ってました」

「そんじゃ明日行く。アナザ、メイド達全員連れて行く。一緒に来てくれ」

「承知しました」


 そう言うとアナザは静かに頭を下げる。

 あとは……アセナ達も付いて来るかどうか聞いておくか。

 俺達は家に帰りアセナ達に同じ事を聞くと、付いて来るのはアセナだけだった。


「真祖全員が付いていったら悪い噂つく。私だけでいい」


 後他のメンバーは元々興味がないと。

 こうして俺はアナザ達悪魔メイドと、アセナを連れて会議に出る事になった。


 ――


 翌日。アヴァロン本部で国際会議を行っている王達は本当に今日あのタツキが現れるのかと緊張していた。たった1つ気分を害しただけで簡単に国を滅ぼせる者が現れるのだ、緊張しない方がおかしい。

 そして朝10時の会議にゲン・シシゴウは言う。


「タツキは本日の午後より会議に参加する」


 その言葉にホッとした者が多数、午後に直接会わなければいけない事に緊張する者、タツキは一体どのような者か見定めようとする者に分かれた。

 午前中は全員でどのように先日の3番、王になってもらい国際条約を守ってもらえるよう上手く交渉するか相談する。

 その結果交渉役に選ばれたのはドン・セフィロになった。

 大国でありフシミの様にした手に出過ぎている訳でもない、顔も合わせた事があると言うので選ばれた。


 そして昼食を挟んだ午後の会議、最後にタツキが現れた。

 王達の印象は思っていたよりも普通の青年っと言うのが第一印象である。思っていたよりも人が多かったのか、少し眉を上げて驚いていたし、態度や仕草はどう見ても普通の青年だ。

 しかしすぐに王達は背筋が凍る。彼の後ろにいる恐ろしい程の狼の獣人の美女、そして何故かメイドの姿で現れた5人の悪魔から、今まで感じた事のない本能から逃げろと言う警報が鳴り響く。


 真祖が1体、悪魔が5体と言う危機的な状況に王達はギルドマスターが何を考えているのか!!と問いただしたい気持ちをぐっと抑え込む。

 この王達の中でもっと不憫ふびんなのはタツキの隣に座る事になってしまった小国の王だろう。

 タツキの席は議長の真正面に座る席なので長方形の席であれば、隣に誰かが座るなどと言う事はなかっただろう。だがここは各王は平等であると示すための円卓だ。必ず誰かはタツキの隣に座らなければならない。

 2人の王は拳を強く握り、気絶しない様に耐えるのが精いっぱいである。


 タツキはそんな周囲の様子など一切気に掛けず、黒い髪の悪魔に席を引いてもらい、腰を掛けると早速ゲン・シシゴウに気軽に聞いた。


「随分と人が居るな。本当にこの大陸の王族全員集合してるんだ。へ~」


 何とも気の抜けた感想である。ここには他国を好きなように出来る兵力を持った大国だっていると言うのに、感想は何とも言えない物だった。

 それを聞いたゲン・シシゴウは苦笑いをしながら言う。


「そう伝えてもらうように言ったのだが……貴殿にはあまり関係ないか」

「だってこれから俺はこの人達と同等の存在になるんだろ?いいよ、俺達にちょっかい出さないならその国際条約?だか何だかのルール守るよ」


 どう説得しようかと各王達は悩んでいたと言うのに、あっさりと向こう側から承諾すると言うのだからとても驚きだ。

 王達は小声で「これほどまであっさりと決める物なのか?」「何か策が?」「話を聞く限り策を練る者とはあまり思えないが……」っと相談し始める。


「ただし」


 そうタツキが声を出すと相談をしていた王達はぴたりと話すをやめた。

 まさか条件に無理難題を押し付けて来るのではないかと、ビクビクと心の中で震えながら王達は一語一句聞き逃してなる物かと耳を傾ける。


「俺達に喧嘩を売って来たら堂々と宣戦布告をして滅ぼさせてもらう。それぐらいは覚悟の上だよな?」


 強大な力を持っているからこそこの言葉はとても重い。各人間の王達は「当然だな」「それは当然の権利でしょう」っと一応合わせておく。

 タツキはその言葉を聞いてい満足したのかこれ以上何かを言おうとはしない。

 そして元々タツキに質問する者として選ばれたドン・セフィロがタツキに聞く。


「それではタツキ殿、まずは久しいな」

「ええ、お久しぶりですね。ドン・セフィロ・トータス。ってもうため口で言っても良いか?」

「そうだな。その方が話し易いのであればそれでいい」

「そっか。それじゃ早速ため口で話させてもらう」


 各国の王達に再び緊張が走る。いきなり新国である若い王が大国に対してため口で話す事を許可させたのだから影響力は高い。

 それだけでタツキは大国と同等であると決定付けさせたと言える。タツキは全くそんな気はないが。

 最初から打ち合わせていたのかどうか、そうタツキが話を切り出すと深い青色の髪をした人魚族の様な悪魔がドン・セフィロに近付き、漆塗りの箱をドン・セフィロの従者に渡した。

 タツキは言う。


「それはトヨヒメ、鮫の真祖からの詫びの品だ。彼女自身の歯などを使って作った魔道具だ。今までしてきた事に対しては小さ過ぎるが、仲直りの印にっと渡すように頼まれた。トヨヒメの呪いから加護に変えたつもりだが、お守りとして持っていただけると俺もありがたい」


 ドンの従者が箱をどうするか視線で相談し、その場で開けた。

 そこにあったのは2つのネックレス。中心に鮫の歯を加工して純度100%の魔石が組み込まれ、真珠と黒真珠、美しい貝が多く使われたネックレスである。

 もう1つは指輪。白銀に輝くリングの上に精密なウミガメの形をしたもの。ただしウミガメの甲羅こうらは魔石で作られている。

 ただ2つのアクセサリーには1つの疑問があった。

 それは魔石の色。本来魔石は黒いのだがこの魔石はただの黒ではなく深海の色の様な青が混じっている。

 それを不思議に思ったドンは聞く。


「この魔石は?私も知らない物だ」

「それは最初からトヨヒメがドン達にっと自分で作った魔石だ。最近の内の研究だと真祖が1から作った魔石だとちょっと色変わるって事が分かった。トヨヒメの色は青だからな、青い魔石が出来た」


 何て事もないように、とんでもない内容が伝えられた。

 現在の人口魔石と言う物は1度魔石として使い果たした魔石に、もう1度魔力を注ぐ事で作られる。口で説明するのは簡単だが、この技術はドワーフ達の技術であり、他国には一切教えていないので独占している。

 それが真祖が1から作った人口魔石となればその価値はどれほどの物か分からない。

 それ以前に魔石を人工的に1から作り出すなどドワーフであっても無理だ。

 それは技術的な部分よりも注ぐ魔力の量が少ないのが原因である。砂粒程度の人口魔石を1つ作るのに1カ月の時間がかかる。しかも純度の低い物ならそれでいいが、純度の高い物となると100年で純度50%程度のできにしかならない。

 しかし今ドンの手元にある魔石はどう見ても純度100%、ドワーフ王はその技術についタツキを見てしまう。


「そちらから見れば今さらだし、恨んでる相手からの贈り物かも知れないけどさ、出来ればもらってくれないかね?」


 タツキは自信なさげに言うが、あのアクセサリーに値を付ければどれ程の価値になるか分からない程の品だ。真祖が作った魔石だけではなく、真珠や貝殻もとても価値のある魔物の1部から作った物だろう。

 ドンはその価値をきちんと理解している様で箱を閉じながら言う。


「確かに受け取った。ネックレスは妻と娘用だろうか?」

「そのつもりで作ったって言ってた。あとで娘さんに渡しといて」


 受け取ってもらえたことを素直に喜ぶタツキ。だが周囲はその技術と財力に既に驚かされている。

 ドンは従者にアクセサリーの入った箱を渡し、話を詰める。

 それは国際条約に関する注意であるし、気に入らないと言う理由で勝手に攻め込んだりしない様にするためにくぎを刺しているとも言う。

 あまりこう言った事には慣れていないのか、タツキは後ろにいる黒髪の悪魔と時折り相談しながら、疑問を確認しながら話を進める。

 そしてタツキは自身の土地に関してこういう。


「みなさんが言う俺の土地と言うのはあの森全体の事の様だが……こんなに要らん。中心にある山があるだろ、そことその周辺にある土地だけでいいよ」

「ん?土地をもっとよこせではなく、要らないと?」

「ああ。とりあえず今の所はいらねぇな。この森全体を支配する気はないし、そうした場合他の冒険者達にも悪いだろ。だから普通の冒険者が手を出さないSランクの魔物が出るところまででいい。アセナもいいよな?」

「ん。1番美味しいところ以外は別にいい」


 狼の真祖に確認しながらタツキは言う。

 確かにその問題は懸念されていた。あの森全体がタツキの物だと認めた場合、冒険者達の多くが仕事を失ってしまうだろうと。

 一応ではあるがタツキが欲しいと言ったSランクの魔物達が蔓延る場所もできれば渡したくないと思うが、現状あのSランクの魔物達に勝てるのはギルドマスターかSランクの冒険者達だけだ。

 だが彼らも安全第一なので滅多に入らないので失ってもあまり痛くもない。


「分かった。ではそのようにタツキの領土を決めよう」

「あ、でも1つ良いかな?」

「なんだ」


 ドンはそう聞くとタツキは言う。


「その領地内の空も地面の下も俺の物ってちゃんと書いといてね」

「む?分かった」


 その後も意外なほどに会議は穏やかに進行する。

 緊張していた各国の王達も緊張が解けた。そしてドンが最後の確認を取り、タツキの正式な王として認められた。

 それをタツキはにたりと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ