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侵入

「おや?もうこの国を出るのか」

「ああ。そろそろ太陽が恋しくなってきた」


 俺達は今日この国を出る。

 理由はほとんどの事は調べ終えたからだ。


「なる程な。気を付けて帰れよ」

「あざ~っす」


 そして久しぶりに出た外はとても眩しい。

 つい何度も瞬きをして少しでも光を目に入れない様にしてしまう。

 それはアセナも同じようで、何だが嫌そうにする。


 うん。これが終わったら二度とドワーフの国に行くの止めよ。

 体内時計がおかしくなる。


 俺達は鉱山を回り込む様に移動を始める。

 追手は……居るな。数は4、人間の中では十分手練れと言える類のようだ。

 俺とアセナは普通に歩いている状態から反転、追手に向かって攻撃した。


 俺はスパーキングレオの高速移動を利用して一気に2人を電撃による感電で気絶させる。

 残りの2人の内1人は既にアセナが仕留めてしまった。できれば殺してほしくなかったな。

 残った1人は退却する途中だったのか背を向けていたが既に遅い。

 俺はそいつの首元に触れて電撃を流した。

 最後の1人はビクンと反応した後気絶したので他の2人と纏めて縄で縛る。


 生け捕り3、死亡1。

 死亡したのは俺が『捕食』で綺麗に消すとして……そう言えば別腹って生きた生物を収納する事が可能なのか実験を開始する。

 もしこれでダメだったら、大きさの分からない真祖を俺の中にしまう事が出来ないので計画そのものがダメになる。

 なので追手で実験しようと思ったので生け捕りにしたんだが殺しちゃたんだよな、1人。

 アセナは満足そうにしているが面倒なんだよ片付けが。


 そう思いながらも『捕食』で死体をキレイさっぱり食らう。

 一応地面についた血も捕食したので証拠は残らないだろう。

 多分。


 そして気絶している間に実験を開始。

 普通に捕食するのではなく別腹に入れる感じで……あ、上手くいった。


 とりあえず3人の別腹移動は出来た。

 問題は真祖がどれだけの大きさであり、俺の別腹の中に入るのか不明であるという部分だが……こればかりは仕方ない。

 どこにあるのかは判明したが、その封印している箱の様な場所の中に潜入するのは難しいと判断したので中身がどれぐらいの大きさなのか知らないのだ。


 後は夜になるのを待つだけ。

 こういう時は夜中に盗むっているのが王道だと思う。

 なので夜まで飯を食いながら待つとしよう。


 -


 夜!


 しかも新月である。星の光はある程度あるけれど普段に比べれば大分暗い。

 天候まで予想していた訳ではないが丁度いい。

 ちなみに俺の別腹空間に居る3人は既に『捕食』した。

 生きた生物を別腹の中に収納できるかどうかという実験を終えれば不要だし、俺の顔が割れているかどうかも不明なので消しておいた方が安全という判断を下した。


 にしても人型の生物を『捕食』しても何にも感じなかったな。

 あった感情は食ってもやっぱり無駄か、と言うものだけ。

 ドワーフを食ったからと言っても特に強化されたと思われる感じがしなかったからだ。

 この感覚は今までも何度もあった。

 それか下級の魔物を食った時の何の能力もない動物と何ら変わらない魔物を食った時と同じ感覚だ。

 所詮は人型か。


 そして雰囲気づくりの一環として鎧を一応身に付けておく。

 真っ黒なこの鎧ならさらに目立たなくなるだろう。

 そして何よりカッコいいからな!!

 最後にアセナの冷たい目線が突き刺さる。

 女には分からないんだろうよ、このカッコよさが。


 では再びドワーフの国に密入国する。

 使うのは既に開いてある穴、旧坑道を利用した抜け穴を作っておいた。

 その時は追手もへたくそだったので簡単に撒く事が出来た。

 そのせいか後日よりレベルが上がっている感じがする4人組に変わり、思っていた以上に行動が出来なかったのはイラついた。


 穴は敢えてこの鉱山のてっぺんに空けてある。

 こう言うのはノリと勢い。カッコよさ優先で開けてみた。

『変質』を使って周囲の坑道の形を変え、埋めたり開けたるする事が可能とこの間知った。

 なのでこの穴は歩きやすく、綺麗な穴である。

 ちなみに帰りはまた『変質』を使って埋める予定なので証拠も消える。

 スキルってほんと便利。


 俺とアセナはその穴の中を通って目的地である10m四方の部屋を目指す。

 コウモリの超音波を利用して何度も調べたが、どうやらこの部屋の入り口も1つだけ。

 しかも魔法によるプロテクトがされているらしく、音波では調べきれなかった。

 面倒だとは思いながらも仕方ないので後は行き当たりばったりで行く事となる。


 その宣言にアセナは呆れてたけど。


 とにかく今の所は順調である。

 旧坑道から繋げたとはいえそれはこの穴を作る時だけ、後は完全オリジナルだ。

 山頂の穴も埋める予定なので問題なし。

 順調すぎるほど順調に進み、とうとう謎の10m四方の部屋の天井に着いた。


『変質』を使ってその天井部分に触れない様に土をどける。

 この天井と言うか部屋その物が特殊な魔石を多く利用された部屋のようで明らかに異常だ。

 天井部分だと言うのに気持ちの悪い文字がうごめく様に動いているのだから気持ち悪い。

 魔石を使った魔道具ってみんなこんな感じなのか?

 その場合この部屋その物が巨大な魔道具であるとも言える。


 その場合面倒そうだな……

 そう思いつつもアセナに聞く。


「準備いいか?」


 そう言うとアセナは頷いた。

 手っ取り早く終わらせるため俺は天井に触れた瞬間『変質』で天井に2人分の穴をあけた。

 そのまま重力に任せて着地、そして俺はその部屋の全貌を見た。


「………………嘘だろ」


 この部屋は外れのようだ。

 部屋の中には宝物庫、とでも言うべきよく分からない美術品?や宝箱、宝石などと思われるもので溢れかえっていたからだ。

 そしてすぐさまに鳴り響く警報音。

 俺はアセナに言う。


「逃げるぞアセナ!!アセナ?」


 だがアセナは何故か宝物庫の奥の方に走り出してしまった。

 俺は何故そんな行動をしたのか分からなかったが時間稼ぎの一環として扉に触れて、『変質』で扉を1枚の巨大な板に変えた。

 これでノブは回せないし、ドアが開く事も出来ない。

 今の内にアセナの後を追う。


 アセナの後を追うとアセナは何かを食い千切ろうとしていた。

 それは4本の鎖であり、その鎖でぐるぐる巻きになっているのは……何だこれ?棒?

 鎖でぐるぐる巻きになっている棒状の物を食い千切るのは魔物とは言え無理じゃない?

 俺はアセナを止める。


「ちょっと待ってな」


 俺は鎖が繋がっている壁と鎖を『捕食』で壊した後、『変質』で壊れた個所を埋める。

 にしてもアセナは何でこんな棒を持ち出そうとしたんだ?

 よく分からないがこれを持って逃げるとしよう。

 泥棒の基本は引き際をちゃんと見極める事らしい。


 俺達は侵入した穴の下に戻り、アセナを穴に向かって投げる。

 グルグル巻きの何かはアセナが咥えながらうまく穴の中に着地した。

 次は俺の番っと飛び出す寸前に扉だったものが破壊された。

 ものすごい衝撃が宝物庫を襲う。


 わらわらと出てきたのはおそらくドワーフの兵士達。

 槍を構えて俺に対して向けている中、最後に5人の強そうな気配を纏った者が現れた。

 恐らく全員ドワーフ何だろうが……真ん中のドワーフが1番強そうだな。


 無骨な鎧に身を包んだドワーフの中では大男と言っても良いのではないかと思われる180cmのドワーフ。

 顔にマスクは付けていないので表情は分かる。

 その男が俺に聞いてくる。


「我が宝物庫に何ようかな?盗人よ」


 俺はそれに対して答えない。

 答えてやる義理はないし、ここに目的の物は無かったのだから言った所でどうしろと言うのだ。


「だんまりか。それでは捕らえて後でゆっくり聞くとしよう!!」


 そう言って周りの兵士達が槍を手に俺に突っ込んでくるが、俺は鎧の尻尾部分で全員弾きとば……死んじゃった。

 兵士達の腹の部分が衝撃によって引き千切られたように宝物庫の中が赤く染まる。

 あっれ?俺軽く尻尾でぶっ飛ばすぐらいのつもりでやったんだけどな?


「王よ!これは危険です!!ここは我々にお任せを!!」


 そう言ってそれなりに強そうな4人が前に出る。

 と言うか王様がここに居ていいの?本当に危ないよ。


 そう思っている間にも年老いた婆さんが魔法を唱えて他の3人を強化する。

 後方支援は1人であと3人は前衛か。

 悪くない構成なのかも知れないが、それは普通の人間にとっての話である。

 俺はさっきより弱く尾を動かして再び弾く。弾かれた3人は直ぐ体勢を整えて着地するがもう詰んでいる。


 俺はこの部屋その物を変質させて底なし沼のように変質させた。

 結果この部屋の中に居た俺以外のドワーフ達は全員足を床と一体化させて動けなくした。

 これで俺の勝ち。のんびりと帰らせてもらおう。


「貴様!戦わずして逃げる気か!!」


 そう言うのは俺に攻撃した3人の内の1人だ。

 戦う必要性が感じられないな。逃げ勝ちできるのなら逃げ勝ちの方が断然いいだろ。

 そう思って天井に跳ぼうと思ったその時、王様が剣で床を破壊して俺の前に立った。

 マジか~。床を破壊できるとは思ってなかった。

 もしかして最初に扉を破壊したのは王様なのか?

 まさかボスが1番強いとか魔物の群れか野生動物の群れだけだと思ってた。


 そして王様は俺に向かって剣を振り下ろす。

 その扉を破壊したであろう()()()()()()を片手で掴んだ。


「むっ!くっ!!」


 王様は剣を動かそうとするが力が足りない。

 俺は空いている方の手で王様の腹部に掌底を食らわせてぶっ飛ばした。

 王様は口から血を吐き出していたが死ぬような事はないだろう。

 俺は天井の穴に戻り、塞いだ後アセナと一緒逃げるのだった。

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