アセナ
アームサウルスを食って軽く休んだ後、俺はアームサウルスの能力を使用してみた。
使う鉱物は俺の別腹の中に入れていた真っ黒な鉱物である。
よく分からないが神殿の下には鉱物が大量にあり、この真っ黒な鉱物だけが取れた。
真っ黒な石など黒曜石ぐらいしか思い付かなかったが……何となく違う気がする。
何はともあれこれは変質の能力を使って不純物0.1%まで徹底的に不純物を取り除いた一品である。
冬の間獲物も居なくて暇してた時、どこまで不純物を取り除けるのかやってみた。
不純物0%にはならなかったが……これでも十分固くなったんじゃないかな?
あ~でも鋼って鉄と炭素をくっつけたものだろ、不純物が少ないってそれだけでいい物かどうか分かんないな。
まぁその辺は専門家じゃないと分からない事だろうからもし専門家と知り合う様な事があればその時に聞こう。俺1人で考えても意味は無い。
この真っ黒な石を変質で加工、俺好みの鎧として形を整えれば……完成!真っ黒な鎧!!
防御性能不明、耐久精度不明のお手製鎧だ!
ん~これって俺に必要なのか?
俺の身体は変質で元々魔物と変わらない頑丈さだし、と言うか俺の制服だって自称神様お手製だ。防御力に関しては不明だが……きっと壊れないだけだろ。うん。
でもこれで人前でバカする時は顔ぐらいは隠せるか。
体格に関してはどうしようもないし、もっと鎧に厚みを持たせて誤魔化すか?どれだけの防御力かも分からないからもうちょっと厚くしとこ。
それに……何と言うかつまらないな。
こうデザインがシンプル過ぎるっていうか、強そうに見えないというか、地味と言うか、普通にその辺で買った鎧黒くしただけじゃね?みたいな。
そうだな……そんじゃ龍生だし、龍っぽい形に整えよう。
え~っと立って歩く訳だからドラゴンっぽくするとして……出来れば生物っぽい形の方がカッコいいよな……
とりあえず手足の指の部分は鋭く、腕、脚の部分全体として鱗みたいに重なり合うようにするのがいいか。
翼に関しては……要らないか。俺そんなのなくても飛べるし。
あ、でもその代わりにブースターみたいなのは用意しとこ。こっちの方がカッコいいんじゃね?
尻尾は……つけてみるか?でも俺にはない部分だからな~でも足を取られた時とか使えるか?一応付けておこう。
……よし!大雑把だけどこれでいいや!
真っ黒だからもうちょっと色を足してみたいけど黒一色って言うのもカッコいいか!!
なんかこう悪役っぽくて!
細かい部分は後々決めていこう。
後からこれが欲しいとかあるかも知れないし。
気が付くと狼は俺の事をじっと見ていた。
俺が色々している事に興味でもあったのかとにかくじ~っと見ている。
後は実際にこの鎧を着てどれだけ戦闘が出来るかどうかの実験をしたいが……これは明日に持ち越そう。
鎧を解除して寝る準備を始める。
こう言う時だけは狼は直ぐに俺の近くに来る。
俺が敷いたのはあの森で狩った魔物達の毛皮。なめしてなくても頑丈なのでこうして布団代わりに使っているのだ。
そして狼もこの毛皮を気に入っているのか寝る時だけは俺にべったりだ。
それにこの狼結構温かい。
食らうために魔物を襲った事はあっても、こうして触れ合う事は1度もなかった。
こうして触れ合うと普通の動物と何ら変わらない気がする。
温かくて、心臓が動いていて、生きるために力を使う。
他の動物達と何1つ変わらない気がするのは俺だけだろうか?
何だかんだで寝る時に狼の頭を撫でても狼は怒らない。
されるがままになっているだけな様な気もするが、意外とこいつは優しい性格をしているんだろうか?
言葉を交わした訳じゃない。意思疎通が出来ているとも思えない。
でもこいつは俺にとって優しい。
「………………そう言えばお前の名前、決めてなかったな」
撫でながら言うと狼はピクリと耳を動かして俺を見た。
「名前……優しい名前……アセナって名前はどうだ?」
そう言うと狼はじっと俺の顔を見る。
まるでどういう意味かと聞いているかのようだ。
「アセナって名前は優しい狼の名前なんだよ。確か伝説じゃ赤ん坊を助けたとかそんな伝説の狼。特徴は空みたいな色をした、たてがみらしいって興味を失ったみたいにそっぽ向くなって」
特徴の事を言ったら急にそっぽ向きやがった。
でも俺は途中なので言う。
「その狼雌らしいぞ。お前も雌なんだから丁度いいと思ったんだけどな。俺から見てだがお前はなんだかんだで優しいし」
そう言うと狼は軽く尻尾を振った。
俺は狼を抱き寄せながら勝手に決める。
「お前の事は勝手にアセナって呼ぶからな。それだけは覚えておいてくれよ」
そう言ってアセナを抱きしめながら目を閉じた。
-
人間か魔物かよく分からない奴があれこれやっている。
この人間?はスキルの力で食った魔物の力を次々と取り込んでいるらしい。
その行為がどれだけおぞましい行為なのかこの人間はまるで分かっていない。
今はあのトカゲの力を利用して石で身を守る鎧と言う奴を作っている。
この辺は暗いと言っても私の目にははっきりと見える。
石がスライムの様に形を変える様は見ていて気持ち悪い。何も知らない者が見ればスライムに襲われている様に見えるだろう。
そして人間はようやく形を決めたかと思えばまた更に形を変える。
一体何がしたいのか理解しがたい。
欠伸をしながら私はその人間が納得するまで鎧を動かすのを眺めた。
最終的に人間はマルでドラゴンのような形の鎧にしたようだ。
どうやらこの人間もドラゴンの力にあやかりたいという感情があったらしい。
全く、なぜあんな堕落した者を選びたがるのか私には理解できない。
あれ程怠惰な者はそうない。
あんな者より私の方がカッコいいぞ。
私に似た鎧を作りたくなったらいくらでも相手をしてやろう。
その代わり出来栄えに関しては厳しくさせてもらう。
ようやく納得したのか鎧をどこかにしまい、毛皮を敷いた。
ああ、この獅子の毛皮はとても良い。
あの気に入らない者を殺して毛皮にしている様な感じがしてとても気分がいい。
だがこの毛の良さは少し気に入らないな。
悪いとは言わないが……私の方が毛の艶はいいはずだ。
そしてこの人間はとても変わっている。
私が寄っても嫌な顔1つしない。むしろ抱き寄せてくる。
どうしてこの人間がその様な事をするのか分からない。
だが……とても温い。
このように抱き締められるのは初めての経験だ。
本当に、初めてだ。
「………………そう言えばお前の名前、決めてなかったな」
む?名前?
そう言えば……人間は我々の事を匂いや音だけで判別する事が出来ないのだったな。
「名前……優しい名前……アセナって名前はどうだ?」
優しい?
それは私の事か?
「アセナって名前は優しい狼の名前なんだよ。確か伝説じゃ赤ん坊を助けたとかそんな伝説の狼。特徴は空みたいな色をした、たてがみらしいって興味を失ったみたいにそっぽ向くなって」
そんなはずはない。
私はただ死を与えるだけの存在。
そんな私に優しいなど――
「その狼雌らしいぞ。お前も雌なんだから丁度いいと思ったんだけどな。俺から見てだがお前はなんだかんだで優しいし」
私が……優しい……
そう反芻していると人間は勝手に抱き寄せて言う。
「お前の事は勝手にアセナって呼ぶからな。それだけは覚えておいてくれよ」
本当になんて勝手だ。
だが……名前、か。
勝手にそう呼ぶのなら覚えておく。
私は……アセナ。




