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新たな家族

 念のためはっきりと言っておこう。

 俺はハーレムなんて面倒臭そうな事はしたくない!!

 と言うか確か狼って一夫一妻制だよな?トキに手を出すって言うのも個人的に無理だし、年齢を考えてくれ。7つか8つは年離れてるんだぞ。

 いや、成人した人達からすれば大きな差ではないのかも知れないが……ついこの間まで学生やっていた身としてはそれなりに離れているのではないかと俺は思います。


 そんな感じのにらみ合いが続く中、アナザから連絡が入った。

 何でも戦力強化に丁度いい相手がもう見付かったと言うのだ。

 思っていた以上に素早い行動なので国王にどこか広い場所を貸してほしいと言ったらこの間までスノーの本体があった中庭でなら構わないと言われた。

 ただし悪魔を召喚するという事で同伴する事が条件として出されたが、別に見せてはいけないものでもないのあっさりとOKを出す。


 そしてこの場には国王の近衛騎士団にヒノ先生と子供達、勇者パーティーにアセナ達と勢揃いしている。

 ちなみにアラドメレクはアナザを見た瞬間、ヒノ先生を盾にしてそっとこちらを伺っていた。なんでもアラドメレクが言うにはアナザが魔王と同格であると言うのだ。

 魔王と同格なのに魔王と呼ばれる悪魔が1体だけと言うのもおかしな話だが、まぁ悪魔にもそれなりの事情があるのだろう。


「にしてもだアナザ」

「なんでしょうタツキ様」

「彼らに与える肉体と魔力もお前に与えた時と同じ物でいいのか?俺の肉体と魔力だけで?」

「我々悪魔にとってこれ以上の対価はないでしょう。そしてこれから先も仕える事も想定していますので何らかの役割をいただけると幸いです」

「役割……今すぐじゃなくてもいいよな?」

「マスターのご自由にお使いください」


 そう言ってアナザは俺の後ろに従者として待機する。

 その行為に驚いているのはアラドメレクだけだがそんなに驚くような事をしただろうか?


 とりあえず俺は今までろくに使っていない魔力と例のクローンもどきの肉体を用意する。

 これから召喚するの悪魔の数は4体。何でもアナザの古くからの友人だそうで、暇そうにしているから家で働かないかと勧誘したそうだ。

 永遠の時を生きる悪魔にとって最大の敵は暇らしい。

 アナザは俺の事を伝えて面白そうだと思ってとりあえず来たという感じだそうだが……既にここに呼んだ悪魔達は俺に対して大きな興味を持っているとか。


 なんでだろうな~っと思いながらアナザにあげた時同様に魔力と肉体を用意して、俺の指先を無銘で軽く切った血で円を4つ描く。

 そしてクローンもどきを円の中に放り込んで準備は完了。

 後は適当に許可を出せばいいだけだ。


「準備完了っと。そんじゃ普通の人達はちょっと下がって下さいね、アナザと同じようになるならちょっとグロいかもしれないんで。あ、ヒノ先生とアラドメレクは子供達の眼を塞いどいてくださいね!グロくなったらすぐ目を塞げるように!」


 そう言うとヒノ先生は不思議そうにしている。アラドメレクは渋々ヒノ先生の後ろから出てきてスタンバイ完了!

 近衛騎士の人達は念のために国王の前に立ち、盾を構えている。

 まぁ悪魔の召喚って普通は警戒する物だろうしね。ヴァロンランドじゃそれが普通だし。


 そして俺はスノーの体毛を取り込む事で悪魔達の姿をうっすらと捉える事が出来ている。

 その姿は色の付いた霧か煙と言うべきか。山羊の様な頭でなければ動物の様な特徴は一切なく、かと言ってクトゥルー神話の様な名状しがたき気持ち悪い姿でもない。

 ただ人ぐらいの大きさの煙が集まっている様にしか見えない。


「なぁアナザ。本当にあの煙みたいなのが悪魔なのか?」

「その通りですタツキ様。本来我々悪魔に性別がない事はお伝えしていますが、その理由が()()です。元々悪魔とは概念でしかなく、決まった形状は存在しないのです」

「精神的には女に近いからアナザは女性の姿なんだっけ?」

「男性の方がよろしいのでしたらそのように」

「いや、もうその姿に見慣れちゃったからな。俺に取ってアナザはその女性の姿かスライムの姿が俺の知るアナザだよ」


 そう言うとオーラだけで喜んでいるがよく分かる。

 表情も隠す事なく満面の笑みなのでとても分かりやすい。

 本当に悪魔がこんなんでいいのかな……


 なんて思っていると黄色い悪魔が俺のクローンもどきに手を出そうとすると、白い悪魔が止めた。

 そのまま2体の悪魔は何だかごちゃ混ぜになるが……2つの煙の色が混じっている様にしか見えないんだよな……

 もうちょっとなかったのかね?霧でもスライムでもないもっといい姿が。


「お~いそこ2人、今から契約するから喧嘩は止めてくれ。お預けしてた分魔力多めにあげるから機嫌直せ」


 そう言うとピタリと2体の悪魔は喧嘩?を止めてそれぞれの肉体の前に待機する。

 もう2体もお預け食らっている犬の様な感じすらするのでさっさと契約してしまうとしよう。


「それじゃお前達4体の悪魔と契約する。対価はそこにある肉体と俺の持つ魔力。これでどうだ」


 そう言うと悪魔達はそれぞれの肉体に食らいつくような勢いで霧が俺のクローンもどきの肉体の中に侵入していく。

 そして想像通りと言うか、全ての肉体は圧縮するかのように肉が潰れる音と骨が砕ける音が響く。

 子供達はこのグロいのを見ていないか後ろを向くと、ちゃんとヒノ先生とアラドメレクがガードしていた。そしてアラドメレクの表情が青ざめている。ホントどうした?


 子供達はこの音で大体の事が想像できているのか、大人しく目を塞がれている。

 むしろ直視していた近衛兵の人達の方が体調を崩したかのように膝を付いたりしている。悪魔達が彼らをつまみ食いしている訳ではないので大丈夫だろう。


 それよりも大変なのは俺の魔力の方だ。

 流石に結構強い悪魔4体を同時に魔力を与えるのは結構消費するし、遠慮なく持っていっているので疲労感が俺を襲う。

 そして俺の隣ではアナザが不機嫌な気配を放っている。多分俺の魔力を容赦なく分捕っていった事が不満なんだろう。

 でもやっぱり最初ぐらい多めに渡すぐらいの器は必要だと思うんだよ。うん。


 そして4体の悪魔達はアナザの様にスライムの姿になった。

 だがアナザと違うのはその色。俺が霧の状態で見た色と同じ色のスライムになった。

 青いスライム、緑のスライム、黄色いスライム、白いスライムの4色である。

 何か色に個性の様な物があるのかどうかは分からないが、こうして並んでいる所を見るとちょっとやりたい事がある。


「アナザ、1回スライムの姿になって彼らの真ん中に居て」

「承知しました」


 そう言ってアナザは黒いスライムの姿になって真ん中に並ぶ。

 合計5色のスライムの訳だが……うん。やっぱ可愛い。

 俺は5体のスライムをまとめて抱き上げてからアセナに言った。


「アセナ。やっぱアナザ達ペットとして飼っちゃダメ?」

「……タツキがいいなら構わない。でも……」

「でも?」

「本当にもったいない事してる」


 そのアセナの言葉に真祖組は全員頷いた。

 え~でもやっぱり異世界転移でスライムをペットにするのは王道だと思うのだよ。ほとんどほのぼの系だけど。

 そして気真面目なスノーが言う。


「と言うかまた本当にとんでもない事したわね。その悪魔達全員魔王と同格なんだから覚えておきなさいよ。その悪魔達1体で国なんて簡単に滅ぼせるんだから」


 ふ~ん。まぁそのぐらいあっても当然だろうな。

 アナザがそれぐらいの力を持っている事を知っているから同格の悪魔を連れてきて欲しいと頼んだのだ。

 それに俺は気に入った連中とだけ一緒にいれればいいわけだし、少数精鋭ってカッコいいよね。


 俺はアナザ達を下ろして本格的な契約に入る。

 アナザは俺に抱きかかえられる形でまだスライム状態でいる。


「まずは俺の求めに応えてくれて礼を言う。俺の名はタツキ、一応今の所は真祖開放を目標している」


 自己紹介から始めると悪魔達はさらに面白そうなものを感じたかのように身体を震わせる。

 プルプル動く姿も可愛い。


「それで現在それを阻止しようとしている人間と敵対している訳だが……おっと、ここに居る人間を殺そうとするのは止めてくれ。この人間達は身の程をわきまえている。俺達に敵対する意思はない」


 黄色い悪魔は好戦的なのか、早速魔法を発動しようとしたので止めた。

 気が早いというか何と言うか……それを見ていた白い悪魔が触手の様な物を伸ばしてベチンと黄色い悪魔を叩いた。

 また黄色いとの白いのが喧嘩を始めるが、気にしてたら話が進まなくなりそうなのでこのまま続けよう。


「俺が主に敵と決めたのはジャッジと言う神を信仰する組織の過激派だ。今直ぐと言う訳ではないが彼らを絶滅するために協力してほしい。俺が渡した肉体と魔力で対価は十分か?」


 そう聞くと青いスライムと緑のスライムが人の姿になった。

 青いスライムは人魚に近い姿で空の様な爽やかな青い髪を持った美女、服はドレスっぽい水着と言うべきか?パレオと言う水着に似ておりここでは寒そうに感じる。

 緑のスライムはエルフっぽい見た目で深緑の様な短い髪をしており、服も動きやすさ重視なのかノースリーブに短パンと言う格好だ。こちらもここでは寒そうに見える。

 どちらも落ち着きのある美女なのは確かだが、気配のせいか人類ではないという事はよく分かる。


 それは周囲に居る近衛騎士達の怯えきって震える事で、鎧が音を鳴らしているのだからよく分かるだろう。


「我々にお任せ下さい。タツキ様と敵対する人類を絶滅して見せましょう」

迅速じんそくに、最速でお望みの結果を」


 そう名乗りを上げると黄色い悪魔と白い悪魔が出遅れた!とでもいう感じで人型に変化した。

 黄色いスライムは普通の人型に近い金髪の美女。だが好戦的という部分が服にも表れているのか軍服で現れた。カッコいい女性とは彼女の事を言うのかも知れない。

 白いスライムはこのホワイトフォレストに住む貴族の女性の様な暖かそうなコートを着ている。彼女だけは他の悪魔とは違い白い髪ではあるが瞳の色は紅い。全身もこもこの毛皮を着ているせいか、綺麗と言うよりはかわいい感じがする。なんかウサギっぽい。


「戦闘でしたらおまかせください!戦略級魔法は得意です!」

「それでは無関係の者まで巻き込んでしまうでしょう。主よ、わたくしは戦術級魔法が得意です。選んで殺すと言うのでしたらぜひ、わたくしめに」


 う~ん。見事に全員ぶっ飛んでる感じがするな。

 そう言う戦力を期待していた訳だし、別に困る内容ではないけど。


「よろしく頼む。でも今すぐではないから、そう急がなくていいよ。そして――」


 俺は新たに仲間になった4人の悪魔を抱きしめる。


「お前達は俺の新しい家族だ。遠慮はいらないし、無理もしちゃダメだからな。それから名前は青い悪魔がスピカ、緑の悪魔がランティ、黄色い悪魔がルナ、そして白い悪魔がポラリスだ」


 そう言うと4人から幸せそうな気配がしたので、気に入ってくれたようで何よりだ。

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