無関係に瞳を閉じて。
「ねえ、キス、していい?」
唐突に彼はそう言った。
私の右手の爪を優しく擦りながら。
だから私は頬にキスをした。
次の日、彼は私の唇にそっとキスをした。
その次の日、私は彼の唇にそっとキスをした。
そのまた次の日、私と彼はセックスをした。
いつまで続くのだろう。
いつまで続くのだろうか。
この関係が。
何を変わらない、変わることのない'無関係'が。
そんなことを考えては私はため息をつく。
彼が揺らすベットの上で。
彼の揺れる柔らかい前髪。
彼の冷たい手。
彼の細めたひと目。
彼のパンみたいな匂い。
その全てが愛おしくて。
その全てが愛おしすぎて。
そんなことを考えては私はため息をつく。
次の日、彼に彼女ができた。
彼女には涙袋があった。
彼にも涙袋があった。
私には涙袋は無かった。
たとえ、彼に彼女ができたとしてもこの'無関係'は続いた。
私達の関係がばれないよう、いつも二人で歩いた帰り道を一人で歩いて、彼の家に向かう。
彼は私を愛してくれていた。
セックス中は愛してくれていた。
セックス中は私の名前を呼んでくれた。下の名で。
彼は私の名前を呼んでは、私の胸に顔をうずめた。
「好きだよ」そう言って。
次の日、彼は「好きだよ」そう言わなくなった。
その次の日、彼は私の名前を呼ばなくなった。
そのまた次の日、彼はセックス中、瞳を閉じた。
好きだよ、そう言って。
私の名前を、ただ言って。
私の瞳を、ただ見つめ返して。
私は瞳を閉じた彼にそう問いかける。
そう言って。
ただそう言って。
ただ私を見つめて。
そう言って私は、瞳を閉じた。
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