とある少年と朝
朝日がようやく顔を出し、鳥がさせずる朝。
「ぶえ…っ、ぐしょい!!」
…お世辞にも素敵とは言えないくしゃみをしたこの少年。名は、ラルフ。少し伸び始めて好き放題暴走し始めている焦げ茶の髪が気になり始めた年頃だ。
「あー、ん? まだ6時かよ…」
予定時刻より早く起きてしまったため眉根を寄せる。そして二度寝すべく布団に再び潜るも、あまりの寒さに眠りにつけず15分経過。
「………あーっ!! もう寝れねえ。起きるか…」
本当なら今日は学校も休みで、少なくとも7時頃まで寝ることが出来たはずであった。その事に少々苛立ちつつも、彼は思い切って布団を跳ね除けた。
「つってもなあ…何すっか」
普段この時間は学校の準備のために真っ先に下へ降りている時間だ。…ただし、今日は学校が無い。
「玉には行ってみるか…」
そんなわけで彼は、郵便物を取りに行くついでに家から10分の場所にあるシルバリスタ教の聖地_ベーテンシュロスに向かうことにした。…とは言っても彼はここ最近聖地へのお祈りに対してそこまで意欲がない。反対に、彼の5つ下の妹であるユリアは積極的に聖地へのお祈り(週3回でいいのに毎日行っている)、聖書の黙読(ラルフからすると義務だが、ユリアはこれも常に読んでいる)などなどをすすんでしているのだ。
『郵便とるついでにお祈り行ってきます。
ラルフ』
そう紙に残して、誰も起きていない家を出た。
「…さぶっ」
セーターと長ズボンに着替えて紺色のコートとお揃いのマフラーを装備したが、尚凍てつくように寒い。
「あー、やめときゃ良かったか…」
そう言いつつももう、半分は進んでいる。今更戻る気など、彼には起きなかった。
そうこうしているうちに、神聖な雰囲気漂う建物が見えてきた。祈りの城_ベーテンシュロスだ。
「いつ来てもやたら縦長…まあいいや、早く終わらせよう」
そう言ってベーテンシュロスへと歩き出す。
_ただ、その時彼は知らなかった。
この時のこの選択が、自らを思いもよらぬ方向へと引っ張ることになるなんて…




