Story4 ブチ切れました。1
ジンと生前の名前と同じ名前をつけられてから一週間がたった。
一週間でこの家について分かった事は多い。
この家は奴隷館の上になっている事。そしてこの奴隷館は小さな村のある事。
そして――
「ねぇ、パパ。あそんでぇ」
家族構成だ。
まず目の前にいる、金髪金目の幼女。
この子はおっさんの娘だ。名前はミッシェル。
四歳にもかかわらずまだ0歳の俺の面倒を見ていて、意外としっかりしている。
親にはべったべったの甘えん坊なのは仕方が無い。
「ダメよー。パパはこれから仕事なんだから」
今ミッシェルの事を注意したのはおっさんの奥さん、ローレルさんだ。
薄いピンク色の瞳に、薄いピンク色の長い髪を後ろに垂れ流し、一つにまとめている。
比較的おっとりしていて、優しいが怒ると鬼の様になる。というか鬼だ。
「そうだぞ。パパはな、これから仕事なんだ。だから帰って来る時までお母さんのお手伝いちゃんとやってたら遊んでやるからな」
そしてミッシェルに優しく喋りかけているのがおっさん、名前は確かサムだ。
おっさんのくせにイケメンな名前だ。見た目はマッチョの金髪、金目。
恐らくミッシェルの髪と瞳はおっさんからの遺伝だろう。
「ぶー。……わかった。ちゃんとあそんでね?」
「はいよ」
ミッシェルに帰ったら遊ぶという約束をしたおっさんは俺の方を向きこちらに来る。
おお、どんどん来る。
「よーしよーし。パパ、仕事行って来るからな」
そう言いながら俺に頬ずりしてくる。
うう、やめろー。頼むからやめてくれー。
暫くの間俺に頬ずりした後ニコっと笑うと玄関に向かう。
「じゃあ、行って来る」
「はい、いってらっしゃい」
「いってらっしゃーい!!」
ここから玄関は見えないので、音声だけだがおっさんの事を送っているのだろう。
いいな、とても暖かい家族だ。
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……五歳になりました。
ごめんなさい、この五年間本当に何も無かったんです。
皆さんが楽しみにしてる『ステータス』も、十歳から見える様になるから特に無いし。
あ、因みにおっさんの言った通り四歳から修行してます。主に武術、筋トレぐらいだが結構きつい。
そして本当なら十歳までカットするんだけど。……だけどこの五歳の時に、ある事件が起きたんだ。
俺の姉のミッシェルが、村の同年代の男の子全員に苛められてたって事だ。
しかも苛めっ子の中には女の子もいて、ミッシェルの心をどんどん削っていた事だ。
何故俺が知っているかというと。五歳になった俺は村に出歩くことが許可され、ぶらぶら歩いている所で偶然見てしまったのだ。
ミッシェルが女の子に髪を引っ張られ、男の子にビンタをくらっていた現場を。
俺はその瞬間体が熱くなり頭痛がした。それは余りにもブチ切れたためになった事だった。
俺は直ぐにミッシェルの所に、全力で走りよった。
男の子の数は三人、女の子は二人。
まず俺はミッシェルにビンタをしていた男の子の顔を殴った。
突然の事に尻を地面についた男の子。
だけど相手は四歳年上の九歳だ、直ぐに立ち俺を睨みながら怒鳴る。
「おい! てめぇ何しやがる!! ……あ? 何だよ黒髪かよ。ちっ。おいコイツ等といると呪われるから行こうぜ」
そいつはミッシェルと俺を指差しながら他の奴らに、どこかに行こうと言う。
他の奴らはそれに頷くとどこかに行く。
「てめぇら、覚えておけよ」
捨て台詞を残して。
本当は逃がしたくなかったが、ミッシェルが心配なので苛めっ子がどこかに行くのを黙って見つめる。
「おい、大丈夫か?」
ミッシェルに近づき手で触れようとするがその手を叩かれる。
「あっち行って!! 誰のせいでこうなったと思ってるの!? 本当の家族じゃないくせに!」
そう俺は村の皆から黒髪と呼ばれている。
何だか格好良く聞こえるが、実際にはこの世界に黒髪がいないので薄気味がられているだけだ。
そして、ミッシェルが苛められてる理由もこれが……いや俺が関係しているのだろう。
「本当の家族じゃ無いのに……どうして……うぅっ」
そして更に血が繋がっていない家族だと言う事は俺が四歳の頃におっさんに聞かされている。
別に俺はその事にダメージを受けていない。記憶はあるからな。
でも四歳の俺にそんな事言うおっさんってどうよ……。
「ジン君なんて……ジン君なんて、いなくなっちゃえばいいのに!!」
そういってミッシェルは走り去っていった。
ふむ、じゃあ本当にいなくなっちゃうよ?
この世界の神様達に会いに行かなきゃならないしな。
『ステータス』はまだ見えないし、旅に出るのはまだまだ速いが今行くも、後から行くも同じだろう。
まぁでもそれはやる事をやってからだけど。