Story32 百年前です。2
「百年前、王都付近で突如現れた巨大な龍。王都の大半は壊滅、当時の冒険者も殆ど全滅。被害を出したその龍の名は『峰山龍』。姿は山一つ分以上、能力はモンスターや魔物を従え、従えているモンスターや魔物の能力を最大限上げると推定されている。『峰山龍』の討伐は他の龍と同じで、弱点の固い逆鱗を壊す事で、一時的に討伐が出きるが、百年後にまた復活する。ほぼ不死身の種族……龍。だが、『峰山龍』の攻撃は唐突に終わった。圧倒的な力で、百年前に『峰山龍』を討伐したのがこの国の英雄『グラリア』だ」
英雄『グラリア』?
グラリアって、この王都の名前じゃなかったっけ?
英雄の名前がこの王都の名前の元になったのかな?
それに山一つ分かー、それって『光聖龍』よりでかいんだよな……果たして、この国の奴等は『峰山龍』を倒せるのかな?
……今回ばっかしは倒せる気がしないので、他人事で良いですか?
だって、『光聖龍』よりでかいんでしょ? しかも、モンスターや魔物も強くなって攻撃してくるんだろ?
無理な気がする……。
『峰山龍』とは戦いたくないなと思っていると、イレイラが思い出したように口を開く。
「……そういえば、八年前とある村に光属性の龍『光聖龍』が現れたが、その『光聖龍』はその日の内に討伐されたと報告を受けた気がする。報告を受けた時には信じられなかったが、今は兎に角その報告を信じて討伐をした人物に何とか力を貸してもらえないか……」
お? 雲行きが怪しいぞ?
「『光聖龍』って白くて、大きい龍の事ぉ? それなら、ジン君に協力して貰えば?」
「ジンに?」
姉さん頼むそれ以上は……!!
姉さんにアイコンタクトで伝える。
そして姉さんは分かってくれたのか、一回頷く。
良かった、分かってくれたか。
「だって『光聖龍』を倒したのはジン君だからねぇ」
あ、言いやがった。全然伝わってなかったよ……。
だが、イレイラは笑い出す。
「ははは、ジンがか? 確かにジンは強いがそれは無いだろう、それにジンは十五歳だろう? 八年前だったら七歳じゃないか。そんなの到底無理に決まっている」
あっぶねー、これでとりあえず『峰山龍』とは戦わなくて良いかな?
しかし、信じて貰えなかった姉さんは頬をぷっくりと膨らまし、講義する。
「嘘じゃないよぉ! それだったら、証拠を見せて上げる」
「「証拠?」」
姉さんの言葉に二人が聞き返す。
そして姉さんは俺を見る。つられるように、二人も俺を見る。
証拠ねー。はっきり言って、今出したら『峰山龍』と戦う事になりそうだけど……姉さんが怒ってるのは俺のためって事もありそうだからな。
はぁー、仕方ない。
そう思って『無限倉庫』から『光聖龍』の鱗を何枚か取り出す。
『黒蝶』の強化に『光聖龍』の素材を使ったが、殆ど素材を使った時にいきなり頭の中に『これ以上『光聖龍』の素材では強化できません』ってできたんだ。
だが、ゴブリンの素材では強化はできた。
もしかしたら、一つのモンスターや魔物の素材での強化は容量があるのかもしれない。
「はい、これが証拠」
「それは……?」
「『光聖龍』の鱗だよ」
「なっ……!! そんな事ありえない! 龍の鱗や牙等は討伐した時に、光となって消えるじゃないか!」
確かに、倒したら光になって消えたな。
「俺の固有スキルだよ」
「主は一体いくつ、固有スキルを持っているんだ!?」
ルナが驚いた様に声を上げる。
……何か若干わくわくしてないか? 狐耳が可愛く動いてるし。
「この他にも幾つかある。……ルナには後で教えるよ。奴隷だから裏切らないでしょ?」
「当たり前だ! 奴隷でなくとも他人には教えん!!」
「あれ、私は!? 私には教えてくれないのか!?」
今度はイレイラが声を上げる。
「いや、イレイラは信じてるけど、俺の秘密は凄いからね。確かに信頼できる人が良いんだ」
「……くっ! ……だったら、私も奴隷になれば良いんじゃないか? 妻というポジションも良いが、奴隷というのも……いや、奴隷で妻になっても……」
イレイらが危ない事を口走っているので、ため息をして無視をする。
この人本当に『峰山龍』を倒す気あるのかな。
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