Story29 倒せなかったです。
青いブヨブヨのスライムを前に、作戦? を立てた後『無限倉庫』から『黒蝶』を取り出す。
だが! 『光聖龍』を倒した時の『黒蝶』とは一味違うぜ!!
あの後『武器創造』で武器を創れるなら、強化も出切るんじゃね? と思って『光聖龍』を『素材完全回収』で回収した素材を使って『黒蝶』を強化した。
まぁ、したんだけど……『光聖龍』の素材って全部白かった筈なんだけど強化したら、黒くなるどころか黒い部分はより深い黒になって、刃の部分が少しだけ紅くなった気がする。
しかも、今の年齢は十五歳。三メートル近い刀もまぁまぁ良い感じに……なった気がする。
そんなことよりも俺がいきなり虚空から、三メートル近い黒い刀を出した事にルナが驚いている。
「主は二つも固有スキルを持っているのか!? あと、その武器は!?」
「ん? 何で固有スキルって分かったんだ?」
「スキルに武器を生み出すものは無いからな。それに魔法や固有魔法だったら、魔力を感じる筈だし。だから、固有スキルだと推測したんだが、違うか?」
おお、すごいな。
大体あってるな。
「大体正解。この固有スキルは武器を生み出すんじゃ無く、何て言うのかな……何時でも何処でも取り出せるし収納できる、容量無限の倉庫みたいなものだ。そしてこれは俺の愛刀の『黒蝶』っていう刀だ。これに目をつけるとは良い目をしてる!」
「ほ、本当か主!」
「ああ、ルナは良い目をしている。うんうん」
「あ、いやそっちの方ではなくてだな。固有スキルの方なんだが……」
あ、さいですか。
何だろう、姉さんもそうだけどこの『黒蝶』の良さを分かってくれないよな。
「そんな便利な固有スキルなら、旅に出ても食事や水など殆ど困らないじゃないか!!」
「え、あ、はい。そうですね」
「……旅に出ても困らないな」
何でそんなキラキラした目で俺を見るの?
「ルナは旅に出たいのか?」
「ああ、何時か私の故郷『獣人国』に行きたいんだ。だが私は今主の奴隷で、それに……夫婦……だからな。だから非常に我侭だが、その時は私と一緒に来て欲しいんだ」
途中一部聞こえなかったが、それなら行くしか無いよな。
誰でも自分の故郷には帰りたいものだしな。
「わかった。その時は任せておけ」
「勿論、私も一緒に行くよぉ?」
「う、うん。姉さんも一緒に行こうな」
何か血気迫る感じで姉さんがそう言って来る。
ちょっと黒い物体が出てるんですけど……これって親父と同じやつじゃね?
大丈夫なの? これ。
「まぁ、いいや。それよりスライムさんが結構な時間待っててくれたから、早速倒そうか」
「ちょっと、可哀想だがな」
「可愛いのにねぇ」
姉さんそれは無い。
絶対に無い。
心の中で姉さんにツッコミながら、『黒蝶』を構えスライムに突っ込む。
「はっ!」
スパッとスライムを縦二つに切る。
うん、やっぱり弱いな。
「じゃあ、次の奴を探しに行こう」
「ジン君倒せてないよぉ?」
はい?
いやいや、そんな筈はない。
だって、真っ二つにしたんだよ? 絶命だよ?
そう思いながらも切ったスライムの方を見る。
そこには、二つの塊がまた一つに戻ろうとしているスライムの姿があった。
そして復活したスライムはくるりと向きを変えると、一目散に逃げていった。
……あれ? 俺スライム倒せなかったの? ステータス、メッチャ強いのに?
「主。スライムに物理攻撃は効かないぞ? 効くのは魔法攻撃だけだ」
「ジン君、色んな魔物と戦ったのに知らなかったの?」
……。
スライム強くね?