Story28 戦闘開始です。
「さて、最初の依頼は何にするか」
「簡単なのにしてねぇー」
現在、冒険者ギルドのボードの前で依頼を何にするか話している。
俺はSランクなのだが、姉さんはまだEランクなのでEランクのものの依頼を受ける。
「うん。これで良いか」
俺はそう言って、ボードから一つの依頼書をとる。
内容は『ゴブリン五匹の討伐』だ。
姉さんぼランクはEだが、実力はそれ以上なので恐らく大丈夫だろう。
……ヘマしなきゃ。
「良し、じゃあルナの所に行こう」
「早く帰ろうねぇー」
依頼書を手にルナのいる受付まで行くが、そこにはルナの姿はなかった。
変わりにいたのはギルドで珍しい、おばさんだった。
「あれ? ルナはどうしたんですか?」
「ああ、ルナちゃんかい? あの子は昨日、辞めちまったよ。獣人で他の子に嫌われてはいたが、良い子だったんだけどね。何で辞めちまったんだろうねぇ」
辞めたのか?
んー、どういうことだろう。
……まぁ、帰ってきてからで良っか。
そんな暢気な事を考えていると、受付から聞こえる筈の声が後ろから聞こえた。
「主 、すまない遅れた」
振り返るとそこにはやはりルナが立っていた。
「る、ルナ!? 受付辞めたんじゃないのか?」
「ああ、私は、その、あれだからな……ジンの、その……」
あ、うん奴隷ね。
それで、それがどうかしたのだろうか。
「イレイラがジンについて行けと言ってな。例え討伐依頼だったとしても、ギルドより主の傍の方が安全だろうという事だ」
どんだけ信頼してるのあの人。
昨日会ったばかりでしょうが。
「という事でよろしく主。そして……あ、義姉上」
「よろしくねぇ」
「ニュアンスが気になったが、よろしく。それよりその格好は……」
「ん? に、似合ってないだろうか、一応私服を動き易い様にアレンジしたんだが」
ルナの格好は異世界には無いと思っていた黒色の着物だった。
袖が肘あたりまでで、下の裾の部分も短くなっており学校のミニスカートみたいだ。
そして所々に甲冑の様なものが付いている。
着物と甲冑って、この世界意外と日本風?
「い、いや。本当に似合ってるよ? お世辞抜きで」
「そ、そうか。ありがとう」
「すまないけど私の前でいちゃいちゃしないでくれるかな?」
俺とルナが話していると、受付のおばちゃんに注意された。
何故か姉さんもジト目で見てくる。
別にいちゃいちゃした気は無いんだけど。
「すみません。それでルナのランクはE?」
「ああ。あ、義姉上と一緒に強くなって来いだそうだ」
「一緒に頑張ろうねぇ? あと、義姉上はやめてねぇ?」
何か姉さん若干怒ってる?
「そうだよ。姉上って呼び辛いんだったら、ミッシェルで良いのに」
「違うぞ? 姉上ではなく義姉上だぞ?」
「どっちも同じだわ!!」
「なっ……! 全然違うぞ! 姉上と義姉上じゃあ、全然違うぞ!!」
「そうだよぉ、ジン君。全然違うんだよぉ?」
俺には殆ど同じに聞こえるんだけどな。
言葉って不思議だな。
「……依頼は無しで良いのかい?」
「あ、ああ、今出します!」
姉さんとルナに気圧されつつ、若干額に青筋を立てているおばちゃんに依頼書を渡す。
「Eランクのゴブリン討伐だね。倒した魔物とモンスターは、倒した人のランクカードに自動で記録されるから
ね。数はパーティーの合計で良いからね」
へー、意外と文明的だな。
……いや、ランクカード以外進んでないのか?
「因みにパーティーというのは?」
「ステータスを開いてパーティーを組みたい人を頭で念ずれば、相手のステータスにパーティー交渉が出てくるよ。後はそれを受けた側が承諾すれば良いだけ」
ふむ、試してみよう。
えっとステータスを開いて、頭の中で念ずる。
「あ、頭の中に何か出てきたよぉ。これを承諾すれば良いの?」
「おう、してくれ姉さん」
すると俺の頭の中に『相手が承諾しました』という文字が出てきた。
これでパーティーになったのかな?
どうやって確認すれば良いんだろう。
パーティー確認の方法を考えていると、俺の袖が引っ張られる。
「あ、主、私は?」
引っ張っていたのはルナだった。
しかも目をうるうるとさせてこちらを見ている。
あれ? ルナさんってこんなキャラでしたっけ?
「い、今するよ」
そう言って、ルナもパーティー交渉をし、パーティーに入れる。
パーティー交渉をしてから承諾するまでの時間が物凄く早かったな。
「良し、パーティーは組めたようだね。じゃあ行ってらっしゃい」
「行ってきます!」
パーティーを組んだ後、おばちゃんに見送られギルドを出て行った。
ギルドを出て、王都から出発すると早速モンスターが出てきた。
モンスターはお決まりのスライムさんだ。
「おお、リアルスライム! ……って思ったけど、何か思った以上に、その……グロイな」
スライムの見た目は思っていたものとは違く、ブヨブヨの青色の体にブクブクと体の奥から出てくる気泡。
スライムの通ってきた後には、ねばねばとした液体が線上になってスライムに繋がっていた。
「そういえば、ルナの得物って何だ?」
「私は弓だな。後魔法を大体で、近接は殆どできないな」
弓か意外だな……って事は姉さんと同じで後衛について貰おうかな。
因みに姉さんは回復魔法が一番得意だが、親父に余計な虫払いって事で近接系の攻撃もできる。
魔法も回復魔法が使える光魔法をLV8まで上げていて、その他の魔法はLV4まで上がっている。
何故そんなに他人のステータスを知っているかって?
俺の固有スキル『完全鑑定』でちょくちょく見ているからさ!!
……まぁ、何か犯罪を犯してる気がして後ろめたいんだけどね?
「という事で、ルナは姉さんと一緒に後衛に回ってくれる?」
「私は主の奴隷だ。決める権限は主にある」
「分かった。姉さんは俺とルナを上手くフォローしてくれる?」
「分かった。お姉さんに任せてっ!」
まぁ、相手はスライムなんだけどね。