Story27 裏の奴? です。
「くっ……どうしてこうなった」
夜の暗い路地裏を歩き、一人そう呟く。
ルナールは俺の女だったんだ。順調に俺に好意を寄せている筈だったんだ。
それなのにあの男が!
「くそったれがッ!!」
壁を思い切り殴る。
Aランクの力で殴ったからか、壁が窪みひびが入る。
その時前方から人の気配を感じた。
そこには何時の間にか、深くフードを被った性別が分からない、人が立っていた。
……いや、これは《人》なのか?
人ともとれるが、人ならざる者も感じる。
それが更に一層、不気味さを引き立てている。
「君の欲しい物を手に入れる、手助けをしようか? ガルド」
その声音は若い女性のものだったが、何故か背中に冷や汗が流れる。
それに俺の名を知っている?
まぁ、俺もAランクだから不思議じゃねえか。
「それは、どういう事だ?」
「なに、ただ君が哀れに思えてね。せっかくもう少しで手に入れられる物が、ある男によって崩れ去った。だから君の欲しい物を手に入れる手助けをという事さ」
「……それをしてお前に何のメリットがある」
「だから言っているだろう? ただ、手助けをしたいと」
コイツ……まぁ、良い。
利用できるなら利用するまでだ。
「ふふ、作戦は私が受け持とう。私の作戦通りにいけば、君の望み通りになるよ」
「あぁ、つっかれたぁー」
「私としてはぁ、嬉しいけどねぇ?」
「姉さんはそうだろうね」
姉さんが料理人の子の前で、俺の方がおいしいと言った後何故か料理対決になったのだ。
審査員はイレイラ、ルナそして姉さんだ。
しかも姉さん俺が負けたら、この王都の一番高い宿に泊まると言ってきたのだ。
だから負ける訳にもいかず、少しこった『コンソメスープモドキ』を作った。イレイラがこんな旦那さんがいたらなぁとか言いながら、こっちをチラチラ見てきたが無視。
まぁ、とりあえず満場一致で勝ったんだけど、そこからが大変で、料理人の子が泣き出ながらもう一回と言って来たのだ。
泣き止んで欲しいのも合わせて、もう一回料理対決した。負けられるように『おにぎり』を作った。負けたら高い宿だが、疲れていたのでどうでも良いと思った。
だけどまた勝ってしまって、料理人の子がまた泣いてで、もう途中からどうやって負けるかを考えてた。
で、今やっと負けて、姉さんとの約束通り王都で一番高い宿に泊まりに来た。
ルナは奴隷だが宿が違うとの事で、別々だ。
「……さて、姉さん窓側の右のベットと壁側のベットどっちが良い?」
「右側だよぉ」
「奇遇だな、姉さん」
「「勝負だ!」」




