Story19 お引越し。
現在、真夜中なのに庭に出ています。
家を背にして、俺とミッシェル、お母さんとお父さんがいる。
そして、目の前には村の人達が土下座でいる。
どうしてこうなったかと言うと……。
玄関の扉を閉めて、親父に話した。
するとその話を聞いていたのか、お母さん……いや般若が奥から出てきて、庭に全員来るように言いにいき今の状態になっている。
「それで? 皆様方は私達、呪われている家族に何か御用でも?」
お母さん怖いマジ怖い。
土下座してる、村長が震えている。
ついでに、親父も震えている。
「そ、そのですね。私達がしてきた事はとても許される事ではないのですが。そのこの村に留まって貰う訳にはいきません……か?」
何て言った? このジジイは、俺達にミッシェルに酷い事をしておいてこの村に残れと?
俺が焼き払うぞ? ちょうどここに全員いることだし。
俺が、こいつ等に『ふざけるな』と言おうとしたら、お母さんが俺の腕を取ってそれを止めた。
何故だろう、腕がミシミシ言ってるんだけど。これ、お母さんの握力?
「何故このような、腐った村に残らなきゃいけないんですか?」
お母さん、マジハンパねぇっす。
「そちらのサムさん……いえ、サム様が神様という事を知りました。なのでこの村を出て行ってもらうと、畑の収穫率やら村の豊かさが無くなるのでは、と思い」
「……どうやって、俺が神様って知った」
親父がジジイの言葉に、反応する。
「私の家にいきなり黒いマントを羽織った者来て、サム様が『医術神』という事を言って去って行きました」
「そいつが誰だか分かるか?」
「いえ、フードを深く被っており、顔は……」
黒いマントを羽織った、人ねぇ。
……何者なんだ?
「と、いう事は。あなた達は夫が神と分かった途端に態度を変えた、と?」
「そ、それは……」
「本当に呆れました。もし夫が神で無かったら、今ここにはいないでミッシェルを虐め、ジンを黒髪と言っていたのですか?」
「…………」
ついにジジイが何も言えなくなった。
……それより、いい加減俺の腕、放してくんないかな。
血が止まって、紫色なんですけど。
「その様な者達にからの祝福があるとでも? 逆にこの村は、貧しくなっていきます」
「ど、どうかそれだけは……!」
「何が『どうかそれだけは」ですか。そこの子供達に聞きなさい、ミッシェルがやめてと言っても虐めを暴力をやめましたか?」
「やめました、やめました!」
「私はそこの子供達に聞いているのです!!」
「ひッ……!」
……お母さんの方が、神様に向いていると思うんですけど。
後、腕の感覚が無くなったんですけど?
大丈夫だよね、これ。治るよね?
「や、やややめ、ました……」
ジジイの横にいるえっと……キント? が答える。
「本当ですか?」
「どうなんだ、キント! 答えろ!!」
ジジイがキントに叫ぶ。
「本当です、やめました!!」
拳に力が入る。何故なら、コイツは嘘を付いているからだ。
本当にやめていたのなら、ミッシェルはあんな風にならない。
「本人に聞きましょうか? ……ミッシェル辛いかも知れないけど、本当の事を言って?」
「……やめてくれなかった……です」
「てめぇ! ミッシェル!!」
「ひッ……!!」
前に出てきて、勇気を出して言ったミッシェルに、キントが土下座から立ち上がり咆える
それに耐え切れなくなった俺は、お母さんの手を振り解き火魔法でキント……糞餓鬼『くそがき』の前を発火させ目の前を燃やす。
「てめぇよぉ、ああ? 親父とお母さんが、お前らを焼き払うって言ってたけどよぉ。それを俺は止めてやったけど……俺が焼き尽くしてやろうか?」
「ひぃぃぃ!!!」
糞餓鬼が白目を向いて気絶する。
気絶で逃がすかつぅの!
水魔法を使って、糞餓鬼にかける。
「起きろ」
「ぶひゃぁあ!」
顔面に水をかけられて、目を覚ます。
ついでに、火も消してある。
「馬鹿野郎、キント! すいません、すいません!! コイツを生贄に捧げるので、どうかどうか」
「いや、そんなクズいらない」
「ジン」
お母さんに呼ばれる。
仕方が無いので、元の場所に戻る。
「あなたは実の孫を生贄に捧げると?」
「はい。なので、どうかこの村に……」
「そのような村長が仕切っている村になど、住みたくありません」
「そ、そんなぁ……」
ジジイが絶望したような、顔をする。
「……決めました。違う村に移ります」
「あ、あなたはこの村がどうなっても良いと!?」
「ええ、どうなっても構いません」
お母さんが、ジジイをスッパリと斬る。
完全に希望を失ったジジイは、月明かりの無い夜空を見上げる。
そして親父は、違う村に移るのに必要な金を計算し暗い目でジジイと同じく夜空を見上げている。
……ジジイざまぁ。
親父はご愁傷様です。俺が大人になったらちゃんと養うからな、安心しなさい。
「それでは」
お母さんがミッシェルを連れて、家に帰る。
すると親父は俺に近づき、耳元で囁いてくる。
「ここの奴等とちょっと『神界』に行って来る」
「何で?」
「俺が神って事の記憶を消してくる」
「ああ、成程。分かった。俺は行きたくないから、先に帰ってお母さんにに言っておく」
「ありがとう。じゃあ行って来る」
「気をつけて」
俺がそう言うと、親父とここにいた村の人達全員が一瞬光って次の瞬間にはその場から消えていた。
うっし、帰るか。
家に帰ると、お母さんとミッシェルが荷物をまとめ終わった所だった。
……早くない? 荷物をまとめ終わるのも早いし、まとめるの明日でよくない?
「早くして、ジン。後はあなた達だけよ? ……あの人は?」
「親父が神って事の記憶を消してくるってさ」
「ただいまー。って何これ」
親父がお母さんとミッシェルの荷物を見て驚いている。
帰ってくるの早かったな。
「おかえりあなた。今から引っ越すわよ」
「え? 今から!? でも夜だから明日でも……」
「良いから早くして、私は早くこの村から出たいの」
「ば、馬車が出てないんじゃないかな?」
「そんなの、あなたの力を使えば良いじゃない」
「じ、ジン助けて!」
何で俺に助けを求めるんだ?
俺は別に今から行ってもいいんだけどな。
「別に良いじゃん親父。今、行こうよ」
「分かっていないな、我が息子よ」
「何?」
「力を使うという事は『神界』に行くんだぞ? 良いのか?」
「お母さん。いえ、母上! お願いします!! 『神界』には行きたくないんです! お願いします!!」
あそこには絶対に行きたくない。
お願いしますお母さん。我が偉大なる母よ!
「お、お母さん。私も明日で良いよ? もう今日は疲れたよぉ」
「……はぁ。分かりました。じゃあ今日は寝て、明日すぐに馬車に乗って出発しましょう」
という訳で朝です。
「それで? 何処に行くの?」
「隣村の隣村に行くのよ。そこなら、ここの人達も来ないでしょう」
そうしてまとめた荷物を馬車に載せて、今度は自分達が乗り込む。
「出発!!」
親父が叫ぶと、馬車が出発した。
思ったけどさ。荷物、俺の能力の『無限倉庫』に入れれば良くね?




